お笑い芸人に頼るだけでは、『守護天使』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『守護天使

【評価】☆☆(☆5つが最高)

【監督】佐藤祐市

【主演】カンニング竹山

【製作年】2009年


【あらすじ】

 40歳を過ぎた冴えないサラリーマンの須賀は、通勤途中の電車で見かけた心優しい女子高生に心を奪われる。意味もなく彼女を守りたいと思う須賀だが、実際に彼女が裏サイトのターゲットとなっていることを知り俄然ヤル気を見せる。しかし金もなく、体力もない須賀には荷が重かった。そこで須賀は、幼馴染のチンピラと引きこもりの青年に助けを求める。


【感想】

 「キサラギ」はまさかまさかの波状攻撃で、思いもしなかった地点まで連れて行ってくれた映画だった。単なるアイドルオタクの会話劇だと思っていたら、最終的には感動にも似た清々しさを味わうことができた。特に“いちご娘”の変貌ぶりには意表を突かれ、気持ちいいくらいに振り回された。抜群に面白い日本映画だった。


 そしてこの「守護天使」は、「キサラギ」と同じ監督による映画だった。予告編を観ただけではそれ程刺激されることもなかったが、「キサラギ」の印象がまだ鮮明に残っているので、取りこぼしをしないために観に行った。しかし結果は、正直イマイチといったところ。比べてはいけないのだろうけど、あの驚きを味わうことはできなかった。二匹目のドジョウはいなかったみたい。「キサラギ」は脚本が良かったのかな。


 「守護天使」のストーリーは、いたって普通といった感じの流れで、意外性や斬新さとは無縁のものだった。主演は、お笑い芸人のカンニング竹山。うだつの上がらないサラリーマンを好演していたとは思うが、予想通りの展開に拍子抜けすることも多かった。監督にもプレッシャーがあったのかもしれない。芸人である竹山のキャラクターを唯一の武器に、それ一本で押し通していた。


 途中、バナナマンの日村との絡みもあり、コント風の作りになったりしていた。それなりに笑えたりはするが、無理矢理ネタをはめ込んでいるようでもあり、違和感を消し去ることはできなかった。映画の流れの中に組み込まれていれば、もっと自然な形で笑えたような気もする。


 終盤の興奮気味な舞台調の演出も今ひとつだったし、どこかおっかなびっくり作った映画のような気がした。コメディー映画にするなら、逆にお笑い芸人を排除して作った方がよかったのかも。「サラリーマンNEO」のような作りこんだネタには適すると思う。芸人を前に置いて、安全運転するコメディー映画は爆発力に乏しい。冒険とは無縁の映画になっていて、ちょっと残念だった。