皮肉のジャブ、『それでも恋するバルセロナ』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『それでも恋するバルセロナ

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】ウディ・アレン

【主演】スカーレット・ヨハンソン、レベッカ・ホール

【製作年】2008年


【あらすじ】

 アメリカからバルセロナへ休暇を楽しむためにやって来た、ヴィッキーとクリスティーナの二人。早速、スペイン人の画家アントニオに口説かれるが、婚約者があり真面目なヴィッキーは彼に反感を覚える。一方のクリスティーナは、男性的で奔放さを醸し出すアントニオに強く惹かれる。そして二人はそれぞれの感情を胸に、アントニオの提案した旅に同行する。


【感想】

 やっぱりウディ・アレンらしい映画になっていた。ぶっきら棒に、そして簡単に映画を撮り上げている。CGを駆使したり、繊細に作り上げたり、難解な会話を挿入したりする映画を小バカにしているかのよう。まるで一筆書きのように映画を作っている。リアリティーの追求や、映像技術の進歩などクソ食らえといった感じ。どこまでも我が道を行っている。


 今回、主人公となっているのがアメリカ人の若く美しい二人の女性。バルセロナでバカンスを過ごし、恋に燃え上がるという話し。ありがちでベタなストーリーにも思えるが、カメラの作る視点はどこか冷めている。そしてアメリカ人の物の考え方を皮肉っているようにも見える。


 主人公二人の行動を通して分かってくるのが、官能的で人生を豊に彩る術を知るスペイン人の姿。頭で損得を考えるアメリカ人に対して、感情で考えるスペイン人の姿が印象に残ってくる。もちろん露骨な形で語られることはないが、主人公たちの空疎さが段々と浮き彫りになることでほんのりと感じ取ることができる。


 気持ちのいい展開が見られることはないので、一般的なラブコメとはかなり違っている。ただ、日常に飽き飽きしているときに観ると、胸のモヤモヤが少し晴れてきそうな気はする。それにしても、バルセロナは楽しげな街に見えた。石で作られる街並には悲喜こもごもの歴史が存分に載っていて、東京の曖昧さや軽さとはちょっと違って映る。バルセロナを歩いてみたくなる映画でもあった。