どんよりと曇り続ける、『愛を読むひと』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『愛を読むひと

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】スティーブン・ダルドリー

【主演】ケイト・ウィンスレット

【製作年】2008年


【あらすじ】

 1958年ドイツ、15歳のマイケルは年上の美しい女性ハンナに恋をする。ひと夏の間、二人は逢瀬を繰り返すが、その際ハンナはマイケルに本を朗読するよう求める。マイケルは求めに応じて様々な本を朗読するが、そんな幸せな日々は長くは続かなかった。


【感想】

 重りを括りつけたようなラブストーリー。悲恋にナチス時代の出来事が絡み、そして本を読むことの素晴らしさをさりげなく示してもいる。軽妙なテンポのラブコメが流行る現代では、異色の恋愛映画と言えそう。大人好みの手厚さと、歴史の重み、そして正義の持つ残忍さをチラリと見せている。


 この映画で、アカデミー賞の主演女優賞を獲得したのがケイト・ウィンスレット。前評判に違わない演技を見せ付けていた。無骨さと繊細さを合わせ持つキャラクターを、これぞお手本というべき演技で表現していた。美しさを抑え、庶民の空気をしっかりと纏う。もちろん、色気を出すときには惜しみなく披露する。ケイト・ウィンスレットは、女優の王道を歩んでいるようにも見えた。


 ただ一方、相手役として登場してくるレイフ・ファインズはイマイチだった。モサッとし雰囲気や着こなしはどこか野暮ったく、この映画の流れから外れているようだった。若手俳優の方が頑張っていただけに、ちょっと残念な気がした。抑えとして登場してくる役者には、瞬発力と切れ味を期待したくなる。最後に軟投派が出てきても、映画は締まらない。


 ただ本格的な恋愛映画でもあり、女性客にはウケがいいような気がした。肩が凝る内容ではあるので、体調を整えてから行くほうがよさそう。それと舞台はドイツであるにも関わらず、言葉は英語で通されていた。興行的なことを考えれば当然の判断なのだろうが、ドイツ語で観てみたい気もした。この映画にある重厚さは、ドイツ語との相性が良さそうに思えた。