煩悩を燃やし視界良好、『おっぱいバレー』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『おっぱいバレー

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】羽住英一郎

【主演】綾瀬はるか

【製作年】2008年


【あらすじ】

 国語教師の美香子は、中学校に着任早々男子バレー部の顧問になってしまう。男子バレー部のメンバーは、技術もなければヤル気もないという面々。そんな部員に喝を入れた美香子だったが、どういう訳か大会で一勝したらおっぱいを見せるという約束をさせられてしまう。その日以降、バレー部員は目の色を変えて練習に励むようになる。


【感想】

 バレーボールは、経験のあるなしがはっきりと表れるスポーツだと思う。運動神経が良くても、そう簡単にパスはできない。あのボールを弾く感覚を身に付けるには、多少なりとも時間が掛かる。テレビで見ると簡単に思えるオーバーハンドパスも、いざ実際にやってみるとこれがなかなか難しい。ボールを持ってはいけないし、単純に弾き返してもコントロールできない。よくこんなスポーツが生まれたものだと時々不思議に思う。


 この映画では、珍しくバレーボールが取り上げたれていた。青春スポ根ドラマでは、やはり野球が定番となる場合が多い。それだけ身近に野球があるということなのだろう。野球を経験したことのある役者を集めることも、それなりに可能だとは思う。それに対して、バレーボールを青春映画のアイテムに取り入れるにはリスクもある。


 見せ場となる試合のシーンで、リアリティーを出すのは至難の業となる。試合のシーンが長ければ長いほど、ボロが出て作り物めいた空気が強調されてしまう。この映画でもバレーボールのシーンは、見所とは成りえなかった。弱小バレー部という設定ながらも、大会に出場するというレベルにはどうしても見えてこない。致し方のない部分ではあるけど。


 しかし、バレーボールシーンで映画が失速していたかといえば、そうでもなかった。おっぱいに憑り付かれた中学生の姿は、妙にリアルで清々しくもある。虚仮の一念という言葉があるが、おっぱいの一念で突き進む弱小バレー部員の団結力と頑張りは、青春映画の王道を堂々と歩んでいるように見えた。煩悩恐るべし。


 教訓めいた御託が前に出てくることもなく、変に友情の厚さを美化したりもしない。ただひたすらにおっぱいのため、バレーボールに打ち込む姿は健全な中学生に思え、これぞ青春映画というバカバカしさが大きな魅力になっていた。一瞬の時を楽しめる映画であり、過去の一瞬を思い起こさせてくれる映画でもあった。


それにしても綾瀬はるかは不思議な女優だと思う。何も考えていないようで、しっかり周りと調和している。プライベートな部分の顔が見えにくい。素の部分を売っている役者や芸人が多い中で、素の部分をボンヤリとつかみどころなく見せるキャラクターは貴重だと思う。役柄によって常に姿が違って見える。きっと懐が深いのかな。何種類もの普通を演じられる。