色彩豊かにテンポよく、『スラムドッグ$ミリオネア』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『スラムドッグ$ミリオネア

【評価】☆☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】ダニー・ボイル

【主演】デーブ・パテル

【製作年】2008年


【あらすじ】

 ムンバイのスラムで育ったジャマールは、クイズ番組“ミリオネア”で最終問題にたどり着いた。だが学のない彼が正解を連続することに疑いを持たれ、警察に拘束されてしまう。そこでジャマールは、彼のたどってきた生い立ちについて語り始める。


【感想】

 アカデミー賞をはじめ様々な映画祭で賞を獲得しまくった一本。ようやく日本での公開となった。映画の舞台はインドのムンバイ。孤児となった兄弟と、同じく孤児の少女がたどる運命をテンポよく見せている。少年時代のスラムでの記憶は悲惨なものだけではなかったが、成長するに従い徐々に暗さを帯びていく。


 しかし、同じ貧困を背景にしたブラジル映画「シティ・オブ・ゴッド」に比べると、かなり観やすくなっている。映画に出てくるインドの貧しさもされなりに強烈だが、決して明るさを失うことはなかった。現実をしっかりと加工し、エンターテイメント用に調理されている。強烈なインドの香辛料を控え、よりマイルドに、万人が受け入れられる映画として目の前に出される。


 「シティ・オブ・ゴッド」のようなドギツイ映画が好きな人には物足りなく感じるかもしれないが、テンポよく繰り出される映像や音楽、エピソードの数々には間違いなく酔うことができる。映画の見せ方は非常に巧みで、手際のいいカードの切り方を見ているようだった。「クイズ・ミリオネア」の使い方も嫌らしいくらいに上手い。きっちりと盛り上げ、見せ場を用意している。エンドロールのダンスシーンもなかなか楽しい。


 そして映画では、実際に貧しい家庭で育った子供たちをキャスティングしているらしく、映画のヒットによりあれこれ問題が持ち上がっているようだ。映画は作り物ではあるけれど、現実の世界から完全に切れて存在しているわけではない。しばし映画の中の世界が、現実世界に溢れ出てきて映画以上のセンセーショナルを引き起こしたりする。映画の取り扱いにも注意が必要なのかも。