荒唐無稽も何のその、『レッドクリフ PartⅡ 未来への最終決戦』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『レッドクリフ PartⅡ 未来への最終決戦

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】ジョン・ウー

【主演】トニー・レオン、金城武

【製作年】2009年


【あらすじ】

 天下統一の野望に燃える曹操は80万の軍勢を率いて南下し、赤壁に布陣した孫権・劉備連合軍5万と対峙する。圧倒的な戦力を保持する曹操軍に対して、孫権・劉備連合軍は智略で応戦する。だが連合軍の間に不和が生じ、戦力が分散してしまった。それでも覚悟を決めた孫権は、火を用いて曹操軍本陣に襲い掛かる。


【感想】

 「三国志」を読んだのは高校生の頃だったと思う。その後「三国志」に触れる機会がなかったので記憶は曖昧になっているが、赤壁の戦いといえば“連環の計”と“苦肉の策”を思い浮かぶ。細かい話しの流れは忘れていたが、この二つのエピソードは映画の中で必ず出てくると予想していた。


 しかし映画には大胆なアレンジが加えられていたようで、“連環の計”や“苦肉の策”がちょっとしたスパイス程度の役割しか果たしていなかった。ストーリーの中でスポットライトを浴びるのは、そんな話しがあったかなというものばかり。孫権の妹が敵陣に忍び込み、敵方の兵士に恋心を抱く展開や、周瑜の妻である小喬が単身曹操の下に赴きお茶を飲んだりする。


 はっきり言えば、荒唐無稽のオンパレードのようでもあった。最終盤の周瑜と曹操の会話もツッコミ所満載。「オイオイそれはないだろ」と声を上げそうになった。「三国志」を忠実に愛する人にとっては、少々腹立たしい映画に成っているのかもしれない。映画用に俗な演出が並びたてられていた。


 しかし、それでも十分楽しめる映画になっているから凄い。繰り返されるワイヤーアクションや、エキストラの数にたのんだ戦闘シーンなどド派手に盛った活劇シーンにはつい圧倒されてしまう。細部に拘らず、数と勢いで押しに押す。楽しければそれでいい、というエンターテイメント至上主義も何となく新鮮に感じられた。


 また、主要キャストを演じる俳優陣の力量が映画を引締めてもいた。浮つくストーリーに喝を入れていた感じ。中でも、リン・チーリンは美しかった。思わずウットリしてしまうほど。ヴィッキー・チャオとは対照的だった。それから、製作に名を連ねるエイベックスが捻じ込んだと思われる中村獅童は必要なかったかな。仕方なしにという言葉が浮かんでうる。中村獅童の顔が映るたびに、大人の事情が透けて見えてくるようだった。