インタビューが格闘技に、『フロスト×ニクソン』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『フロスト×ニクソン

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】ロン・ハワード

【主演】マイケル・シーン、フランク・ランジェラ

【製作年】2008年


【あらすじ】

 ウォータ-ゲート事件により大統領を辞任したリチャード・ニクソンは、その後沈黙を守っていた。しかし政界復帰を目論み、あるンタビュー番組でその足掛かりを得ようとする。そのインタビューを申し込んだのは、イギリスのテレビ番組の司会者デビッド・フロストだった。御しやすい軽薄な男と見下されたフロストだったが、ニクソンに引導を渡す役割を果たすことになる。


【感想】

 テレビのインタビュー番組というと、貴重なご意見を拝聴するという姿勢で進んでいくものだった思っていた。聞き手は終始低姿勢でいることを義務付けられ、話し手の気分を損ねないことが最大の感心事であるかのように見えた。ちょうどお得意先を訪問した営業マンの姿とダブってくる。番組がゲストを迎えるという形で成り立っているので、仕方がないといえば仕方ないのだろう。


 一方、欧米のインタビュー番組はもう少し成熟の度合いが進んでいるようだ。この映画でもそうだったが、インタビューの聞き手が一方的に受けに回ることがない。話し手に負けないくらい堂々とした態度を示したり、スキあらばパンチを繰り出そうとしたりする。インタビューが、スポーツに近い感覚で受け取られていそう。


 映画では、インタビュー番組に出演する双方がチームを作り入念な準備をしていた。漫然とインタビューに参加したりはしないようだ。インタビューや討論に重きを置く社会では、人生を賭ける勝負の場として認識されているのかもしれない。相手をおだてるだけの聞き手では評価されないのだろうし、観衆の琴線に触れる言葉を吐けない話し手は冷たい視線に晒されるのだろう。


 言葉で相手を説得し、言葉で相手の矛盾点を突く。話すことが得意な人にとっては、胸のすく映画になっていたと思う。対決するのは元アメリカ大統領とテレビ番組の司会者。それぞれに思惑を持ってインタビューに臨む。一方が政界への復帰、もう一方がアメリカのテレビ番組への進出。田中角栄と若い頃のみのもんたをイメージすると、分かりやすいかも。


 映画の結末は最初から分かっている。それでもハラハラしながら観てしまうのは、主演の二人が堂にいっていたから。二人のやり合いは迫力十分。そして、スポ根ドラマのスタイルで物語を押していた。しかしさすがに後半の盛り上げ方は強引だったかも。スポ根ドラマのような爽快感は得られなかった。政治と爽やかさはなかなか並び立たない。