「007」に憧れて、『ザ・バンク 堕ちた巨像』 | 平平凡凡映画評

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映画を観ての感想です。

【タイトル】『ザ・バンク 堕ちた巨像

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】トム・ティクヴァ

【主演】クライブ・オーウェン

【製作年】2009年


【あらすじ】

 ヨーロッパを代表する巨大銀行IBBC。しかしニューヨーク検事局のホイットマンは、IBBCが違法取引に手を染めていると確信していた。インターポールのサリンジャーと協力し、重要な証拠を握る証人に接触を図るが、証人や捜査官が次々と殺されていく。更に国家の上層部からも捜査中止の圧力がかかってきた。二人は窮地に追い込まれる。


【感想】

 お金を崇め奉る社会において、銀行は教会の役割を果たしている。お金を多く蓄える人に祝福と利息を与え、お金の重要性を説いて回る。資本主義社会の中で銀行の重要性を否定することはできない。銀行の地位を貶めることは、お金の価値を損ねることであり、また多くの人がお金に触れる機会を奪ってしまう。つまり銀行は簡単に潰れない、というか潰せない。


 けど多くの人は銀行の重要性を理解しながらも、案外胸の内では蔑んでいたりする。そう、昔から金貸しは嫌われていた。そして嫌われることで、ある種のバランスが働いているような気がする。お金の流れを握り、人や企業に多大な影響力を行使できる銀行は、警戒され嫌悪されて丁度よさそう。お金を持ち、パワーを秘め、その上尊敬までされたら気色悪い。銀行が崇められる社会は、どこかで狂いが生じているのかもしれない。


 この映画の敵役は巨大銀行。裏で不正取引に手を染め、武器の密輸にも関与していたりする。そして邪魔な人間をためらうことなく排除していく。日本でもバブル時代、銀行とヤクザが密接に関わりあったりしていた。銀行が調子に乗ると、裏社会から悪が湧き出してくるのだろう。ただ映画は、ヨーロッパの巨大銀行が悪ノリしているという設定でスケールが大きかった。


 ストーリーは手堅い感じのサスペンス。配役もクライブ・オーウェンにナオミ・ワッツとこれまた手堅い。美術館での銃撃シーンなど見所もあり、それなりに観てしまう映画だった。ただ悪役の銀行が薄っぺらく、銀行らしさにはやや乏しかった。銀行の代わりにテロ組織でも、石油企業でも代用できそう。全体的にも、薄味の「007」といった感じがしなくもなく、印象も弱含みだった。1年後、おそらく内容は忘れていると思う。