好みで言えば「アメリカン・ヒストリーX」かな、『THIS IS ENGLAND』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『THIS IS ENGLAND

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】シェーン・メドウズ

【主演】トーマス・ダーグース

【製作年】2006年


【あらすじ】

 フォークランド紛争で父親を亡くしたショーンは、はいていたズボンを学校でからかわれる。荒んだ気持ちで歩いている時に声を掛けてくれたのは、不良グループのリーダーだった。やがてショーンは、グループの仲間として受け入れてもらえる。しかしそこに差別主義者の男が現れたことで、グループ内に亀裂が走る。ショーンは、自分を認めてくれる差別主義者の男の言葉に惹かれていった。


【感想】

 不遇なとき、その原因を自分以外の場所に持っていきたくなるのはよくあること。最終的には自分が頑張るより他はないのだろうが、そうそう自分を励ますことはできないし、ましてや自分を責め続けることもできない。自分の内側に責任を持てくれば、遠からずはやりの鬱へと一直線に進んでいきそう。生き続けるためには、他人の所為にすべきこともあるのかも。そんな気がする。霊の仕業という手もあるけど、お金がかかって困りそう。


 この映画の主人公は、1980年代を生きるイギリスの小学生。彼の目線で、当時のイギリスの風俗や若者の姿を追っていく。サッチャー首相の民営化路線で大量の失業者が生まれ、移民の増加が社会問題になりつつあった。主人公が洗礼を受けるのが民族主義の考え方。移民排斥やイギリス人としての誇りを主張し、社会の問題を移民の所為にして片付けていく。


 そして、つい比べたくなる映画が「アメリカン・ヒストリーX」。白人至上主義に傾倒していった主人公の兄が、その考え方の甘さに気付くというストーリー。今回観た「THIS IS ENGLAND」に比べると、より過激で徹底された印象があり、ラストの衝撃度も上を行っていた。似たようなテーマの映画でありながら、イギリスとアメリカの風土の違いも反映されている気がする。観比べてみると面白いと思う。


 この映画には「アメリカン・ヒストリーX」のような、極端な激しさはなかった。どこかでバランス感覚が働き、切っ先は鈍っていたようにも感じた。反面、しっかりと救いの残る映画になっていた。ほのぼのとした牧歌的な空気が強く存在する。そして当時のファッションもいい味付けになっていた。どうやら一昔前のロンドンは相当に洒落ていたようだ。この手のファッションを好む日本人がいても何の不思議もない。