悪い奴ほど姿が見えない、『誰も守ってくれない』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『誰も守ってくれない

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】君塚良一

【主演】佐藤浩市、志田未来

【製作年】2008年


【あらすじ】

 幼女二人を殺害した少年が逮捕される。そして刑事の勝浦は少年の妹・沙織を保護するよう命じられ、彼女を連れてホテルへと向かう。だがそこにマスコミが現れ、ネットの掲示板に沙織の情報が載ってしまう。マスコミの追求をかわすため、勝浦は沙織を連れて逃避行を続けることになる。


【感想】

 タイトルだけを見ると、野手に足を引っ張られながらも孤軍奮闘する投手のボヤキに聞こえてくるが、映画の内容はいたって現代的で硬派なもの。「踊る大走査線」の脚本家・君塚良一が手掛けているが、笑いの要素は非常に少ない。観る者の感情を軽く逆なでし、挑発するような映画になっている。


 主人公は殺人を犯した加害者の妹と、彼女を保護する刑事。どこまで真実なのか分からないが、マスコミの執拗な取材と無責任と興味本位を煽るインターネットの掲示板が二人に襲い掛かる。特に加害者の妹は無防備のままで、ひたすらに打たれるのみ。演じる志田未来が健気に、そして足腰の強いディフェンスを見せる。


 現代的なテーマを取り上げ、問題意識の高さを示す映画になっていた。この時期に公開する意義もあったと思う。ただ娯楽作品への未練があるのか、10分に一度は盛り上げなければいけないというヘンな使命感が気になった。結果、分かりやすい類型的な刑事やマスコミ、オタクが登場することになる。


 遥か先のゴールを目指しつつも、道端に落ちている小銭を懸命に拾おうとする。本来ならもっと遠くに行け、そして奥深い映画になったのかもしれないが、下世話で薄っぺらいシーンが重なるため失速していた。もっと観客を信じてもよかったと思う。無理な撒き餌は子供っぽさに通じる。去年観たイギリス映画「BOY A」と比べると、幼さが目に付いた。志が立派だっただけに、ちょっと残念な気もした。