【タイトル】『禅 ZEN』
【評価】☆☆(☆5つが最高)
【監督】高橋伴明
【主演】仲村勘太郎
【製作年】2008年
【あらすじ】
鎌倉時代、混乱する世の中を目にした僧侶・道元は、民を救う方法を求めて海を渡り宋へと向かう。そこで“只管打坐”という悟りを得るための修行方法を知る。帰国した道元は苦しむ民衆に教えを広めるが、既存の仏教勢力は道元に迫害を加えようとする。
【感想】
宗教家を主人公にした映画。日本ではあまりないような気がする。海外では、やはりキリストを主人公にしたものが多いのだろう。キリストを宗教家というと怒られてしまうのかもしれないが、ミュージカル映画「ジーザス・クライスト・スーパースター」やメル・ギブソン監督の「パッション」などが浮かんでくる。大胆な解釈が話題となったり、批判されたりもするが、そのことが映画に箔を与えている。
しかし、この映画はさほど批判を浴びるような内容にはなっていなかった。いたって普通といいたくなるような映画。ただあまりに陳腐だったため、禅宗の入門ビデオや曹洞宗の勧誘ビデオの域を出ていなかった気もする。特に、道元が悟りを得るシーンは気恥ずかしくなるような見せ方だった。CG映像で蓮の花が開く映像は、ほとんどオウム真理教の作成したビデオと見間違いそうになる。想像力の乏しさが寂しかった。
ストーリーも禅の深さを掘り下げるというものではなく、道元にまつわるエピソードをちょっとずつタッチしていく感じ。考えさせられる言葉はあるものの、映画として公開するにはやや物足りなくもあった。唯一の救いは、主演の中村勘太郎の立居振る舞いが堂に入っていて美しかったこと。さすが歌舞伎役者といったところなのだろう。
映画にはちょっと満足できなかったが、観客の入りはかなりのものだった。上映館が少ないこともあるのだろうが、時代のニーズを汲み取った映画であるのは確かなよう。客層は50歳以上の方が中心。仏教に感心が向いてくる年齢なのかもしれない。映画で悟りが得られれば楽でいいが、この映画をきっかけに参禅する人もいるのだろう。そういう意味では意義のある映画だった気もする。座禅がいいことだとすれば。