外から見る地球は美しい、『ザ・ムーン』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『ザ・ムーン

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】デビッド・シントン

【主演】マイク・コリンズ

【製作年】2007年


【あらすじ】

 1960年代、アメリカは宇宙開発競争でソ連に遅れをとっていた。そこでアメリカは、人類を月に到達させるアポロ計画を立てる。そして1969年7月、遂に人類は月面にその一歩をしるした。以来40年、月面に立った人間は12名。アポロ計画に携わった宇宙飛行士やスタッフが、映像と共に当時を振り返る。


【感想】

 月面着陸への原動力が米ソ対立にあったのかもしれないが、月へ人間が行くという事実は人類にとって大きなインパクトを与えたような気がする。何となくではあるが、アポロ11号の動向に気を配り、その活動に興奮した人たちの息遣いを感じることもできる。人類が一体感を持つという経験はそうそうできるものではない。当時を知る人たちを少し羨ましく思えたりもする。


 映画は、アポロ計画に携わった宇宙飛行士やスタッフのインタビューで構成されたドキュメンタリー。まず驚かされるのが、インタビューに答える元宇宙飛行士たちの若々しい姿。アポロ11号の飛行士をはじめ彼らの年齢は80歳に近いはずなのに、言葉や記憶が明瞭で時にユーモラスでもある。ここまで明るいおじいちゃんたちを目にすると、宇宙空間は人間を若返らせる何かがあるのではないかと思えてくる。


 インタビューでは、当時のちょっとしたエピソードや裏話を聞かせてくれる。改めて月へ行くということが大事業であり、常に死と隣りあわせだったことがわかる。そして月へ行くには巨額な予算はもちろんのこと、それ以上に人間を突き動かす情熱や渇望が必要だとも思えてくる。おそらく当時は宇宙への憧れが強い時代であり、更に宇宙が超大国の国威発動の場となったのだろう。


 21世紀になり、宇宙に思いを馳せる時間は少なくなってきた気もする。漠然と憧れる時代は過ぎ、よりシビアにお金の勘定をするようになったともいえそう。現代は、がむしゃらに危険を冒し宇宙に飛び立つ時代ではないのだろう。とはいえ、宇宙への思いが途切れたわけではなく、見えない場所で着々と宇宙への夢を現実に変えている人たちもいるはず。忘れた頃に火星への有人飛行が実現されるかもしれない。