簡単に真っ白にはなれない、『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】サム・メンデス

【主演】レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンスレット

【製作年】2008年


【あらすじ】

 1950年代のアメリカ、郊外の住宅で暮らすフランクとエイプリルは子供にも恵まれ理想的な夫婦と思われていた。しかしフランクは退屈な会社勤めにウンザリし、そして妻のエイプリルも自分が無意味な人生を歩んでいるのではないかという不安を感じていた。二人は、ちょっとした感情の行き違いで怒りを爆発させてしまう危うさの中にあった。そんなある日、エイプリルはフランクに大胆な提案を持ちかける。


【感想】

 この映画を天気に例えると、どんよりとした曇り空に時々激しい雷鳴が響き渡るといった感じ。幸せを象徴するような郊外の家に、美男美女のカップル、そして可愛らしい子供たちが揃うが、物語が晴れ晴れとする瞬間はほとんどなかった。甘いラブストーリーを期待していくと、思わぬ肘鉄を食らうかもしれないので注意が必要。


 主演の二人は、レオナルド・ディカプリオにケイト・ウィンスレットという「タイタニック」のコンビ。あれから十数年が経ち、すっかり大人の貫禄を身に付けた二人が見せるドラマは、辛く希望の乏しいものだった。「タイタニック」が持っていたような甘さは微塵も感じられない。救いのない現実を一本道で走っていく。


 主人公は、それぞれに強い渇きを感じている夫婦。お互いの傷を舐めあっている時は上手くいが、一度冷めれば、お互いが交わることのない線の上を歩いていることに気付いてしまう。そして、相手が不誠実で傲慢に見えてくるから始末が悪い。二人で暮らしていても、一人で居るとき以上に一人ぼっちになってしまう。結婚の恐怖の一面を見ているようでもあった。


 監督は、「アメリカン・ビューティー」でアカデミー賞を獲得したサム・メンデス。「アメリカン・ビューティー」には笑いにまぶした皮肉がタップリとあったが、今回の映画には冷笑的な響きすらなかった。直接的に、理想の生活像を叩き壊してしまう。万人が満ち足りる理想郷はなく、欲望を燃料にする生き方も曲がり角にきているということなのかもしれない。しかし煩悩のない生き方は、筋っぽくて不味そうにも思えてしまう。