本当に体を張っている、『その男ヴァン・ダム』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『その男ヴァン・ダム

【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】マブルク・エル・メクリ

【主演】ジャン=クロード・ヴァン・ダム

【製作年】2008年


【あらすじ】

 出演作に恵まれず、離婚調停では娘を奪われそうになっているかつてのアクション・スター、ジャン=クロード・ヴァン・ダムは故郷のブリュッセルへ帰る途中だった。タクシーを止め、お金を引き下ろすために郵便局に立ち寄るが、その姿を目撃されたことが悪夢の始まりだった。


【感想】

 ジャン=クロード・ヴァン・ダムの主演映画で覚えているのは「ユニーバーサル・ソルジャー」くらい。どんな内容だったかはかなり怪しくなっている。名前は知っていても印象は薄く、どうしてもシルベスター・スタローンやシュワちゃんの後追いに見えてしまう。アクション俳優といっても作品に恵まれなければ、単なるマッチョにすぎない。


 この映画では、本人役で登場しセルフパロディーを披露している。たまたま入った郵便局で強盗グループと遭遇、運悪く警察にヴァン・ダムが単独で犯行に及んでいると勘違いされてしまう。強盗グループもヴァン・ダムを利用し、身代金を得て逃亡しようと画策する。コメディーとサスペンスがいい塩梅で調合され、笑いながら物語の行方にハラハラすることができる。


 強盗グループの一人がヴァン・ダムのファンだったため、その男との会話が上手い具合に面白味を膨らませる。ヴァン・ダムを見捨てたジョン・ウーをヒドイ奴だと言ってみたり、スティーブン・セガールを話題にしてみたりと奥深い。まぁどちらかといえば皮肉よりも愚痴に近く、嫌味はそれほど感じなかった。凄いのは、自分自身を笑いのネタにしてしまっていること。嘘か本当か、役も金もない状況を悲哀タップリに演じていた。


 それと強盗劇が思いのほかシャープに作られていたので、映画が単なる遊びにはなっていなかった。ジャン=クロード・ヴァン・ダムを知らなくても、相応に楽しむことができると思う。また肉体派のスターとはいえ、演技力はなかなか。最後は思わずしんみりしてしまった。自虐ネタで笑いをとれる人間はやはり強い。