【タイトル】『永遠のこどもたち』
【評価】☆☆☆☆(☆5つが最高)
【監督】J・A・バヨナ
【主演】ベレン・ルエダ
【製作年】2007年
【あらすじ】
夫と共に屋敷を買い取り、障害者のためのホームを始めようとしていたラウラだったが、養子の一人息子シモンは空想の中の友達と頻繁に話しをするようになる。奇妙に思いつつも息子に合わせていたラウラだったが、ある日、空想の友達のことをしつこく話すシモンに厳しく接してしまう。するとその日、突如としてシモンの行方が分からなくなってしまう。ラウラは必死にシモンの行方に繋がる手掛かりを探そうとする。
【感想】
映画が始まってすぐに驚いた。スクリーンにはスペインの子供たちが楽しげに遊ぶシーンが映し出されていたが、その遊びが“だるまさんが転んだ”とまったく同じだった。もちろん鬼の発する言葉は違っていたが、決まり文句を唱えている間に動くことができ、鬼にタッチして逃げるというルールは同じ。韓国にも似たような遊びがあるというのは聞いたことがあったが、まさかスペインにも同じ遊びがあるとは思わなかった。ちょっとルーツが気になってくる。
今回観た映画のジャンルは緩めのホラー。ハリウッドで量産される類のホラーとは色合いが違っていた。どちらかといえば、日本の怪談に似た雰囲気がある。欧米産のホラーは、キリスト教を根っ子にしたオカルト色が強い。邪悪な存在が人間に害を為し、教会にあるような重厚さが恐怖を演出する。善悪の境界線がはっきりとし、邪悪な存在を懲らしめるのに何の痛痒も感じなくて済む。また物語に向いた明瞭さもある。
しかし、この映画は善悪の色分けが非常にしにくかった。目に見えないものが蠢いてはいるが、それが邪悪なものと判じることができない。名付けるならば幽霊ということになるのかもしれないが、どちらかといえば“座敷童子”に近かったような気がする。ちょっとした悪戯をするが、人間に敵対しているのではない。恐いのは、人間の方だったりもする。
映画は、行方不明になった息子を探す母親の姿を映し出す。その過程で、少しずつ謎が明らかになっていく。物語の進行はいたってゆっくりのペース。だが、徐々にそして確実に物語の世界に捉われる。ラストはハッピーエンドだったと言えそうだし、また悲劇だったとも言えそう。観る人によって結末が選べる。そして、全編を貫くはかなさが何とも印象的だった。