裏切りは物語にとって最高のスパイス、『アンダーカヴァー』 | 平平凡凡映画評

平平凡凡映画評

映画を観ての感想です。

【タイトル】『アンダーカヴァー

【評価】☆☆☆(☆5つが最高)

【監督】ジェームズ・グレイ

【主演】ホアキン・フェニックス、マーク・ウォールバーグ

【製作年】2007年


【あらすじ】

 警察官の父親を持つジョセフとボビー。ジョセフは警察官となり、エリートコースをひたすらに走る。一方のボビーは父親に反発し、ロシアンマフィアに関わりのあるクラブでマネージャーの仕事をしていた。二人はお互いに反発しあい、兄弟としての行き来は途絶えていた。そんなある日、ジョセフはボビーにマフィアの内情を探るために潜入捜査に協力するよう求めてくる。


【感想】

 職業選択の自由というのは、確か憲法で認められている権利だったと記憶している。至って当然のことのように思えてしまうが、歴史的に考えてみれば職業は親から子へと受け継がれていくのが普通だったはす。百姓の子は百姓であり、武士の子は武士であり、芸人の子は芸人であった。もちろん少なからず流動的な部分はあったと思うが、親の職業を継ぐのは当然という意識は強かったにちがいない。


 時代は移り変わり、世の中が昭和から平成になると、子供が親と違った職業に就くのはありふれた出来事になってきた。難しいとはいえ、大工の倅が医者にもなれれば、パイロットにもなれる。自由様様の世の中ではある。ただ、自分の就くべき職業を決めるのは、なかなか大変な作業でもある。興味の持てる職に出会えれば何よりだが、やりたいことに行き着けない人もいる。そんな時は、つい決められた道が羨ましく思えたりもするのだろう。


 最近、よく耳にするのが二世議員に二世タレント。中には三世、四世という剛の者もいたりする。やはり親の仕事ぶりを間近で見ることで職業意識が早くから芽生えてくるのか、それとも考えるのが面倒でそうなってしまったのかはよく分からない。ただ、これだけ親の後を継ぐ議員やタレントが出てくると、その安易にちょっとツッコミを入れたくなる。ある意味、親の名前を金にしているわけであり、生前贈与のようでもある。そのうち相続税の対象になるかもしれない。


 この映画の主人公は二人の兄弟。警察官の父親を尊敬する兄と、不快に思う弟。兄弟はあるときは対立し、またあるときは協力関係を築く。兄弟の背後には警察とロシアンマフィアの攻防があり、かなり男っぽい内容になっている。夜のシーンも多く、どこか香港映画を観ている気分になれた。ただ、このあいだ観た「ゴッドファーザー」に比べると厚みは感じられなかった。緩むことのない硬質の作りも、やや単調になりがちだったし。