Sat 230805 「くじけそう」と言ってみる/祇園祭 宵山/日和神楽を追いかける 4419回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 230805 「くじけそう」と言ってみる/祇園祭 宵山/日和神楽を追いかける 4419回

「先生、くじけそうになったら、どうしたらいいですか?」と、マジメな顔で質問されたことがあった。ワタクシの答えは

「くじけそうになったら、ニヤニヤしながら『くじけそう♡』と呟いてみるといいよ」

だったのだから恐れ入る。

 

 しかし実際にそうなんじゃないか。くじけそうになったら、くじけそうな自分をちょっと戯画化して、ニヤニヤないしニタニタ、自分で自分を嗤うのである。「嗤う」と書いて「わらう」と読む。「嗤う」と「笑う」のニュアンスの違いぐらいは、自分で調べてくれたまえ。

     (祇園祭・日和神楽「岩戸山」の勇姿)

 

 高校1年の時、クラスに「白川君」というスポーツ万能の長身の男がいた。ワタクシの母校・秋田高校は、ほとんどの生徒が秋田市内の自宅から通学するのであるが、白川君は何と下宿生。自宅は山の向こうの「上小阿仁村」。「マタギのふるさと」を名乗る村から、わざわざ遠く離れた秋田高校に入学してきた。

 

 ということは、おそらく故郷の村では大いに将来を嘱望された男子だったのである。勉強もよく出来た(気がする)。しかし何と言ってもスポーツ万能で、サッカーでもラグビーでも、野球でも柔道でも、何をやっても上手にこなした。

    (祇園祭・日和神楽「函谷鉾」の勇姿 1)

 

 その彼が、真夏の炎天下のグラウンドを駆け回りながら、しきりに「くじけそう」「くじけそう」とニヤニヤ笑うのである。

 

 別に、だからどうだというのではない。ただ、その彼が結局ちっともくじけない。「くじけそう」と口に出して自らを嗤うことで、くじけそうな弱い部分だけを巧みに排出しているように見えた。

 

 そこで今井君も、盛んに「くじけそう」をマネすることにした。すると実際、なかなかくじけないのである。何しろ子供の頃から今井君はマコトにダラシないくじけ虫を続けてきたのだが、「くじけそう」を取り入れてからはグッとくじけの頻度が低下した。

     (祇園祭・日和神楽「船鉾」の勇姿)

 

 諸君もやってみないかね、「くじけそう」。7月上旬から8月初めにかけて、連日あまりの暑さに茹であがりそうになりながら、またまた今井君は「くじけそう」を連発した。1日に3度は「くじけそう」とニタニタ、よだれが糸を引きそうなダラシない笑顔を鏡に映してみた。そしてやっぱり、くじけなかった。

 

 くじけずにとうとう8月5日まできて、諸君、まもなく立秋だ。今年の立秋は8月8日だから、8月6日と8月7日、あと2日だけガマンすれば、暦の上だけでも秋になってくれる。

     (祇園祭・日和神楽「放下鉾」の勇姿)

 

「秋きぬと 目にはさやかに見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる」でござるよ。今の夏はずいぶんセミが激しく鳴いた。ミンミンゼミもアブラゼミもみんなずいぶん頑張った。しかしそろそろ、ヒグラシが優勢になる。

 

 ヒグラシは、秋の季語。その後にはコオロギの天下が来る。外に出た途端、サウナか赤外線コタツの中に頭を突っ込んだような猛暑の日々だったが、「くじけそう」「くじけそう」をあと5回も繰り返せば、やっぱりくじけずに爽快な季節を迎えられる。

    (祇園祭・日和神楽「函谷鉾」の勇姿 2)

 

 本日の写真は、すべて京都の祇園祭2023のもの。今年は4年ぶりに祇園祭もフルで実施され、「祇園祭♡命」を豪語する今井君は7月16日の昼頃から京都に乗り込んだ。

 

 もちろん諸君、コロナ真っただ中の昨年も一昨年も、ワタクシはめげることなく山鉾巡行を眺めに京都を訪問したが、やっぱり一抹の寂しさがあった。

      (祇園祭・日和神楽「月鉾」の勇姿)

 

 というか、正確には「うしろめたさ」。「世の中がコロナで苦しんでいる時に、京都でお祭り見物ですか?」と、昨年は人に冷笑されそうな思いを引きずっていた。

 

 しかしそんなことを言っていたら、「生徒が受験勉強で苦しんでいる時に、暢気に外国旅行ですか?」「受験生がくじけそうになっている時に、居酒屋で祝勝会ですか?」みたいなうしろめたさも抱え込まなきゃいかん。いくらKuso-Majimeなワタクシでも、その辺はスパッと見切りをつけた。

      (祇園祭・日和神楽「雞鉾」の勇姿)

 

 そして今年はいよいよ、うしろめたさナシの祇園祭だ。1%とか2%とか、「いやまだコロナは終わっていませんよ」のうしろめたさはまだ残っているが、7月16日と17日だけは、まあ許してもらうことにした。というか自分で自分に甘い顔をすることにした。

 

 7月16日は、宵山である。しかしワタクシは、宵山の町の賑わいを楽しみにいくのではない。宵山の四条烏丸あたりは、何しろ人出が尋常ではない。立ち並ぶ露店の飲食物のニオイも強烈。生ゴミもそこいら中にうず高く積み上げられて、このニオイも強烈。まさに「くじけそう」の世界である。

    (祇園祭・日和神楽「長刀鉾」の勇姿 1)

 

 ワタクシが毎年7月16日に見たいのは、日和神楽である。日和神楽と書いて「ひよりかぐら」。山鉾町の囃子方の人々が、鉦を吊るした大きな屋台とともに、八坂神社の御旅所まで練り歩く。四条の「御旅所」と八坂神社で祇園囃子を奉納、翌日の晴天と山鉾巡行の無事を祈願する。

 

 とりあえず「練り歩く」と書いておくが、その速度は驚くほど速い。夜ではあっても、真夏の京都の熱気の中で、あれほどのスピードで山鉾の人々を追いかけていけば、いやはややっぱり「くじけそう」の一言が口をついて出る。

    (祇園祭・日和神楽「長刀鉾」の勇姿 2)

 

 主なところで、長刀鉾・函谷鉾・月鉾・船鉾・鶏鉾・放下鉾・菊水鉾・岩戸山。ワタクシはこういう屋台や山車について町内を練り歩くのが大好きで、数年前の佐賀県唐津では、一晩中ずっと唐津くんちの山車にくっついて唐津の町を駆け回った。

Wed 181107 なぜか福岡へ/なぜか唐津へ/唐津くんちで縦横無尽 3749回

Thu 181108 ハンバーグ談義/夜の祭・昼の祭/明らかに太った 3750回

 

 もちろん「いい年をして」もいいところなのであるが、だって楽しいんだから仕方がない。唐津くんちの時には「鯛」の山車が特に気に入って、全力で走ってくっついて行くうちに、何だか自分こそ祭の主役であるような錯覚に陥った。そういう錯覚こそ、祭の醍醐味だと信じる。

    (祇園祭・日和神楽「長刀鉾」の勇姿 3)

 

 日和神楽はたいてい予定の時間よりずっと遅くなり、屋台と囃子方の人々が八坂神社から引き上げるのは、日付が変わる頃になる。もう15年も昔、初めて日和神楽を目撃したのは、「長刀鉾」の屋台が祇園南の名店の前でお接待を受けているところだった。

 

 有名店の名は「てる子」。もちろん一見さんお断りの名店で、ワタクシなんかは一生お店の中に入ることはないだろうが、お接待はビールに麦茶にその他もろもろ、お接待の人々の中には舞妓さんの姿もチラホラ、今年はずいぶん観光客の姿も多かった。

        (日和神楽 四条御旅所)

 

 ワタクシは、長刀鉾を待ちながら、祇園の奥の「フィンランディアバー」で静かにお酒を味わった。だって諸君、あまりの暑さに「くじけそう」、ギネスビールでも2杯ほど、どうしてもギュッとやりたかった。

 

 長刀鉾の人々を見送ると、祇園の街は急速に静まり返る。だって翌日は朝9時からいよいよ山鉾巡行の本番だ。男たちも女たちも、さっさとオウチに帰って心と身体を休めなきゃいけない。

(祇園南「てる子」前にて。長刀鉾を持ちながら、お接待の準備が整っていく)

 

 と、おそらく建前上はそういうことになっているのだろうけれど、今井君ぐらいのオトナになれば、実際のところはよーく知っている。どうせみんな、まだまだしみじみお酒を飲むのである。

 

 小学校の運動会じゃないんだから、オトナ相手に「明日は朝早いんだから、早くフトンに入りなさい」などと言ってみても、そりゃ野暮というものだ。

 

 みんなこっそり起きていて、こっそり馴染みのお店に上がり込み、朝2時、朝3時、いやまもなく夜が明けて「このままいっちゃいますか?」とオールナイト、お外に出て強烈な朝のお日さまの光にフラフラ、そこでほぼ全員「くじけそう♡」と笑顔でつぶやくに決まっている。

(長刀鉾を見送った後、このビル1階の居酒屋「小梅」に入ってみた)

 

 もちろん、そういう行動は決して推奨できない。偉いお医者様や先生方に「そんなことをして、熱中症で人に迷惑をかけたらどうするんですか?」とニラまれる。しかしまあ、お祭りは午後1時過ぎには終わるのだ。ネンネは、その後でいい。

 

 これから午前中いっぱい、恐ろしい炎天下でずっと山鉾ひっぱって汗まみれだ。終わってから、風呂に入って、ビールを好きなだけ飲んで、もう1回ぐらいみんなでハシャいで、ネンネはそのあとがいいじゃないか。お祭りというのは、そういう無礼講が許される1年に1回のチャンスなのだ。

  (祇園北の居酒屋「小梅」、エダマメその他のある風景)

 

 というわけで16日深夜、日和神楽を見送ったワタクシも「まだホテルに帰りたくない」と呟いた。日付が変わった京都、祇園四条あたりで「まだ帰りたくない」なんてのはなかなかオトナっぽい世界ではあるが、しかし諸君、野暮の骨頂の今井君が選んだお店は、写真のような庶民派のお店である。

 

 注文したのは、エダマメ1皿と、酔っ払った目には何だかよく分からない肉料理を2種類。瓶のビールを2本と、熱くもないが冷たくもない日本酒を胃袋に流し込んだ。隣のテーブルの客がほとんど食べ残して帰っていった「ぶっかけ肉うどん 大盛り」をニラミつけながら、午前1時ぐらいまでその店に座り込んでいた。

 

1E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 5/10

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5E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 9/10

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