Thu 201231 生類憐れみの令のこと/靴供養と財布供養/2020年を締めくくる 3989回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 201231 生類憐れみの令のこと/靴供養と財布供養/2020年を締めくくる 3989回

 マコトに唐突だが、2020年を締めくくるに当たって、ワタクシは徳川綱吉の悪名高い「生類憐れみの令」について、ホンの少しの考察を試みたいのである。最初に発布されたのが1685年。以降24年間にわたり、合計およそ100回も「生き物を憐れむように」の御触れが出た。

 

 一般には、儒学の影響が指摘される。「お世継ぎが生まれないのは、前世で生き物を殺生したからだ」と指摘され、「だから今こそ生き物を大切にしてお世継ぎに恵まれようと決意。綱吉はイヌ年生まれだったので、特にお犬様がクレイジーなほど大切にされた」。そういうストーリーである。

 

 しかし諸君、最初の御触れが1685年だったことは、注目に値する。実はその前年の1684年、日本全土は長崎発の感染症の大流行に襲われている。長崎では7000人が死亡。まもなく九州から京&大坂へ、東海から江戸へ。1684年の晩春から冬にかけてのことである。

  (12月23日、京都・東寺の「終い弘法」を訪れた 1)

 

 江戸中期の国学者・天野信景という人のエッセイに、この感染症についての記述がある。「4月&5月の頃、長崎にて疫疾おおいに流行し、軒並み病床に伏し、死に至る者7000余に及び」「九州・中国のかたも、また疫気一時に行われ、死する者、甚だ多しと聞こゆ」と続く。

 

 さらに「難波・京に及び、染疫の家々苦しみ愁う。泉南もっとも甚だしく、堺の商家、死亡数千人なりし」。泉南とは、大阪から和歌山にかけて。感染症はぐんぐん東に進んでいく。

 

 やがて「関東も同じさまにて、江戸府下、中元の前後病に伏し、医師・薬餌を差し置く時なかりし。伊勢・近江・美濃・三河の諸州、同じ疫に染ざるはなし」。「中元」とはもちろん「お中元」の季節。今回のコロナの第2波の始まった頃である。

  (12月23日、京都・東寺の「終い弘法」を訪れた 2)

 

 生類憐れみの令の発布は、「長崎で死に至る者7000余に及び」「堺の商家、死亡数千人」という悲惨な感染症の翌年だ。別に「お犬様」ばかり大切にせよというのではなく、捨て子・姥捨て・捨て馬も厳禁。猖獗を極めた感染症の凄惨な光景が、生類憐れみの令に強い影響を与えている可能性は高い。

 

 17世紀終盤の医療がどのようなものであったかは、専門家にしっかり教えてもらわないと分からないが、感染症大流行の翌年に「捨て子厳禁」「姥捨て禁止」「病者への憐れみ」が強調されたことを思えば、当時の医療崩壊のありさまを思い描かずにいられない。

(カレーにハンバーグに目玉焼き。京都「寺町ハンバーグ」にて。奥歯1本スポンな身には貴重なタンパク源だ)

 

「天下の悪法」と呼ばれ、将軍はやがて「犬公方」と揶揄&失笑されて、以後300年、この御触れの歴史的意義が見直されることはなかった。

 

 しかし生類憐れみの令の中に「鳥類・魚類の生食用の飼育は禁止」「貝類・甲殻類・昆虫類も禁止」まで含まれているとなると、儒学とか「お世継ぎ」とかなんかより、保健衛生面への配慮の方がずっと重大だったように思われる。

 

 生類憐れみの令、実は300年前の緊急事態宣言だったんじゃないか。麻疹の一種と思われる感染症大流行に際して、医療崩壊を防ごうとする懸命の努力のあとなのではないか。そんなことを考えても何にもならないが、コロナに明け暮れた2020年が残り5時間に迫った夕暮れ、風呂上がりの暢気な頭にふとそんなことが浮かんだ。

(同じく12月23日、10年付きあったお財布とサヨナラする。便利なマネークリップだった。京都えびす神社でお財布供養をしていただいた)

 

 2020年は、筒美京平が亡くなった年でもあった。年末になって中村泰士が亡くなり、その3日後にはなかにし礼も天国に旅立った。細川たかしによる1982年日本レコード大賞「北酒場」の作曲者と作詞者が、相次いで天国に旅立ったわけである。

 

 筒美京平については、必ずいつか何日もかけてその記憶を語らなければならない。1970年代後半から1980年代にかけては、「紅白歌合戦」に選出されたシンガーが極めて高い割合で筒美京平による曲を熱唱した。

 (京都からの新幹線で、こんな豪華お弁当をいただいた 1)

 

 彼によるディスコミュージック風のアレンジがどれほど昭和サトイモの心を掴んだかは、どうしてもキチンと書いておかなければならない。実を言えばワタクシはいまだに筒美京平の影響を受けている。ホンの2ページや3ページ哀悼の意を述べてオシマイにする対象ではない。

 

 なかにし礼は、菅原洋一「知りたくないの」「今日でお別れ」の人。弘田三枝子「人形の家」と由紀さおり「手紙」の人。訳詞なら、ペドロ&カプリシャス「別れの朝」と、ハイファイセット「フィーリング」の人。いやはや昭和の文化は、この人たちが作ったのである。

 (京都からの新幹線で、こんな豪華お弁当をいただいた 2)

 

 そんな思いの中で、2020年は暮れていく。要するに、YouTubeにまみれて暮れていく。幸い「YouTube Premium」というものの3ヶ月無料招待に応じたから、懐かしい昭和のお歌もテレビドラマも、30年も40年もむかしのラグビー伝説の試合も、みんなCMに中断されずに集中して満喫できる。

 

 もちろん「CMの中断なしで」というのがあんまり普及すると、困るのだ。せっかくの諸君の楽しみの真っただ中に、いきなり我々の招待講習CMが闖入して夢を台無しにすることもあったはずだ。ま、許してくれたまえ。

(7年付きあった普段用の靴ともお別れした。写真では、右と左を逆に並べてしまったが、このカカトに磨り減り具合、あまりのことに涙が出た)

 

 2021年を迎えるにあたり、ワタクシは2つの断捨離を実行した。1つは、普段用の靴。もう1つは、これも普段使い、出張時に使っていたお財布。お財布というか、正式には「マネークリップ」であるが、靴もお財布もすでに7年の長きにわたって使い尽くした。そろそろ天国に向かって旅立たせてもいいころだ。

 

 財布については、23日までの京都滞在中に「えびす神社」で財布供養をしてもらった。えびす神社は、京都建仁寺のお隣、というか、栄西による建仁寺創建の時に鎮守として建てられた。商売繁盛・家運隆昌・旅行安全。いやはや今井君にとっては最高の神社。西宮神社・今宮戎と並ぶ「日本3大恵比寿」でござるよ。

 

 靴のほうは、写真に示した通り、まさに断捨離にピッタリのお年頃。面白いほど磨り減ったカカトは、2014年から7年に及ぶ今井君の世界放浪に付き合ってくれた勲章である。

 

 2014年春、ワタクシはオランダ2週間の旅に出た。来る日も来る日も肉を食べまくったアムステルダム滞在の終盤、当時履いていた靴の底がベロリと激しく剥がれた。まず右が剥がれ、1時間ほどして左も剥がれた。詳細は次の記事を参照してくれたまえ。

Mon 140915 今井君ライデン危機 靴底の思い出 クツ君とお別れ(おらんだ先生訪問記46)

Tue 140916 断捨離からの復活 フローラホランドへ路線バスで(おらんだ先生訪問記47)

(7年付きあった普段用の靴ともお別れ。数えてみると、この靴で20か国以上をのし歩いた 1)

 

 そこでオランダからの帰国後、ワタクシは新宿の高島屋を訪れ、次に履くべき靴を物色し、底の剥がれた靴の断捨離を決意した。ただし諸君、驚くなかれ、アムステルダムの街灯に靴底に喪失した古い靴を、ワタクシはその後も数ヶ月いつくしみ、実はその次の外国旅行にも帯同したのである。

 

 そしてあれから7年、高島屋の靴もカカトが思い切り磨り減った。履くと、左の足は左に向き、右の足は右に向いて、強烈な角度で傾いているのを実感する。周囲の人間たちにも「これじゃ健康に良くないですよ」と忠告される。

 

 しかしワタクシは、こんなに懸命にワタクシを支えてきてくれた靴君を、無慈悲に「クズカゴにポイ!!」なんてのは耐えられない。「捨てちゃいな」「捨てちゃいな」「スッキリしますよ」という忠告はわかるが、そんなことしたらそのストレスに耐えられなくて、きっとサトイモ君はションボリ、寝込んじゃうかもしれない。

 

 だが今回は「えびす神社で財布供養」という道連れを作ってあげられた。靴君も、財布どんと道連れならきっと安心して天国に旅立てるはずだ。最後の最後に京都の町を2週間も闊歩できて、「靴冥利につきます♡」とニッコリ、2020年の年の暮れに、靴として幸せこの上ない生涯を無事に全うしてくれた。

 

(7年付きあった普段用の靴ともお別れ。数えてみると、この靴で20か国以上をのし歩いた  2)

 

 さて、では恒例の「今年訪問した町」を列挙して、2020年を締めくくろうと思う。例年なら「番外編」として外国旅行で訪れた町の名も列挙するのだが、今年はもちろん番外は皆無である。

 

 きっと来年の秋から冬にかけ、番外編の町が2つでも3つでも増えることを願って、つらかった今年の締めくくりにしたい(同じ町が重複するのは、何度も訪問したことを示す)。

 

 いやはや、やっぱり今年は例年とは比較にならないぐらい訪問先が少なかった。生授業で向かい合った諸君の数も、1回平均で130人ぐらいだから、キャパ1/2ルールも確かに厳しかった。

 

 合計64 × 平均130  8320人。この15年間、生で直接向かい合った生徒の数が1万人に達しなかったのは、これが初めてだ。めげずに参加してくれた生徒諸君に深く感謝するとともに、2021年には必ず元の世の中に戻って欲しいと、熱く願うばかりである。

(仕事納めの横浜で、こんなお菓子をいただいた。別れのテープが大晦日にピッタリだ)

 

北海道:帯広 小樽 札幌 札幌

福島県:郡山

新潟県:長岡

東京都:市ヶ谷 八王子 船堀 池袋 成城学園 練馬 荻窪 新宿 新宿 新宿 練馬 北千住 豊洲

千葉県:海浜幕張 市川 海浜幕張

神奈川県:横浜 新百合ヶ丘 小田原 藤沢 横浜

静岡県:静岡 沼津

富山県:富山

石川県:金沢

滋賀県:膳所 膳所

京都府:京都 京都

奈良県:大和八木 学園前 大和八木 学園前

大阪府:正雀 京橋 天王寺 なかもず 茨木 梅田 京橋 なかもず 千里中央 天王寺

兵庫県:塚口 姫路 伊丹 西宮 西宮

和歌山県:和歌山

岡山県:倉敷

広島県:三原 広島 広島

香川県:高松

徳島県:徳島

愛媛県:松山

沖縄県:沖縄 那覇

 

1E(Cd) J.S.BACHSILVIACantata Opera in 3 Acts2/2

2E(Cd) Münchinger & Stuttgart ChamberBACHMUSICAL OFFERING

3E(Cd) Jochum & ConcertgebouwBACHJOHANNES-PASSION 1/2

6D(DMv) FINAL SCORE

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