2014年10月09日(木)

Mon 140915 今井君ライデン危機 靴底の思い出 クツ君とお別れ(おらんだ先生訪問記46)

テーマ:ブログ
 4月27日、ライデンの街は昼になってもまだ静寂に包まれている。「起きているのはネコだけ」と言っても、ちっとも大袈裟ではない感じ。大学構内も「レンブラントの家」も大聖堂の周囲も、いかにダッチウェザーの日曜日とはいえ、余りに静まり返りすぎである。
 やっぱりここもまた、昨日の大狂乱が尾を引いているのである。ハイネケンの緑色の瓶の破片が路上に残り、水鳥たちが昨日の恐怖を語り合うように水辺に浮かんでいる様子を見るに、知的なライデンの人々もまた例に漏れず二日酔い、今ごろはベッドで苦しげな吐息を漏らしているに違いない。
 さすがに午後2時を過ぎて、街にも活気が戻ってきた。散歩していたネコ君たちも昼ご飯にオウチに戻った時刻、逆に人間たちは遅いランチをとりに、ようやく街に出てきたようである。
芭蕉
(オランダ・ライデンの街。至るところで日本語に出会う)

 一方の今井君は、「そろそろアムステルダムに帰るべか」と考えはじめていた。別にこのままディナーの時間帯までライデンに滞在しても構わないが、諸君、クツの裏がいよいよヤバいことになりはじめていた。
 「クツの裏が剥げる」という体験を、諸君はしたことがあるだろうか。一足歩くごとに足の裏に違和感があり、いちいち「ペリ」とか「ピリ」とか、接着剤の接続面が少しずつ剥げていく実感が、足裏に不気味に伝わってくるのだ。
 中3の夏休み直前、今井君のズックの裏に同じような違和感が走ったことがあった。昔の中学生の上履きは、「スニーカー」とかカッコよく呼ばずに、身も蓋もなく「ズック」と言ったが、そのズックの底が大きく剥けてしまいそうな前触れがあったのだ。
 中学生時代の今井君はウルトラ優等生であるから、「全校生徒の前で挨拶をする」類いの晴れ舞台が1週間に1度はあった。実はあの朝も晴れ舞台が準備されていて、市大会を勝ち進んだ運動部の諸君が県大会におもむく、その壮行会が予定されていたのであった。
 ところが諸君、災いとは、最も起こってほしくない時に襲ってくるものである。今井君が挨拶する全校集会のまさに30分前、崩壊の予感のあった右足ズックの裏が、前から3分の2ぐらいまで、奇跡のようにいきなりベロリと剥けてしまったのである。
 今のクマどんなら、すぐに先生方に非常事態を伝えて、特別にスリッパを貸してもらうとか、臨機応変の手段に出るだろう。しかし当時15歳のコグマ君は、臨機応変からは最も遠い存在である。
 というか、正確には「応急処置大好き人間」であって、悪友たちと噴き出しそうになりながら、右足ズックをセロテープでグルグル巻きにすることによって、何とか全校集会の場を乗り切ろうと考えた。
ルーベンス
(ライデン、レンブラントのオウチ)

 当時の秋田市立土崎中学校は、全校生徒1500人を超えるウルトラ大規模校である。全校集会での挨拶は、若き今井君にとってもなかなかの晴れ舞台。その大舞台のステージに上がる寸前まで、友人たちと大笑いしながらセロテープを何重にも巻き続けた。
 ところが諸君、全ては中学生の浅知恵で終わる。何重にも巻いたつもりのセロテープは、今井君の体重に耐えることができない。いよいよ生徒代表♡挨拶の場面になってステージに上がり、壇上のマイクに向かう2歩か3歩のところで、ものの見事にプツリと切れてしまった。
 あとは諸君、想像にお任せする。裏が3分の2もベロリと剥げてしまったズックで、ようやくマイクにたどり着いた頃には、本来は厳粛であるべき壮行会の会場が爆笑に包まれた。
 県大会に勝ち進んだ勇ましい選手たちも「セロテープが…」「ズックの裏が…」と顔を歪めて笑い転げ、真っ直ぐに立っていることもできない。先生方まで笑い転げて、壮行会の厳粛さなんか、とても保持できる状況ではなくなった。
 しかし、特に体育会系の先生方の中には、「厳粛さ優先」どころか「厳粛さ♡命」というタイプのコワーい人も少なくない。壮行会直後の今井君がどれほど厳しく叱られたか、まあ想像してみてくれたまえ。
留守番猫
(アムステルダムのネコ)

 そういう経験があるから、ライデンの街を散策しながら「ベリ!!」「パリ!!」「プリ!!」とクツ底が剥げつづける刺激に、かなり神経を擦り減らしていた。もうすぐ取り返しのつかないことになるに違いない、クツの裏が残らず剥げ落ちるに違いない。そういう暗い予感が、今井君をライデンからアムステルダムに呼び戻したのである。
 しかし、「時すでに遅し」。激しい雨に濡れるアムステルダム中央駅に到着し、ニコラス教会で雨宿りをしている最中に、最も恐れていた事態が訪れた。右足の爪先から、ペロリンチョと剥げていったクツ底は、一気に土踏まずのあたりまで剥げ落ちたのである。
 事態がここまで来てしまえば、もう中途半端なゴマカシはきかない。「歯がここまでグラグラしちゃったら、もう抜いちゃうしかない」というヤツである。そのあたり、クマ蔵はマコトに潔い。「もうダメ」と思った瞬間に潔く決定的な行動をとることにおいて、人後に落ちるつもりは一切ない。
 半分剥げかけたクツ底を手にとり、グッと力を入れて引っ張ると、驚くなかれ、右のクツ底は一気にカカトまでベロリととれた。おお、気持ちいいじゃないか。ダメそうなものは、一気にダメになってくれたほうがずっと気持ちいい。もちろん、取れたクツ底はホテルの部屋まで持ち帰る。
靴底
(クツの底が取れたのは、ニコラス教会前だった)

 問題は、この時点で「右足と左足の足裏の感触が違う」という点であるが、まあうるさいことはいいなさんな。右足裏が剥げたなら、左の足裏だって、そのうち剥げるに決まっている。今井君は悠然とアムステルダムの街を南下していった。
 そして「その時」は間もなくやってきた。「その時、歴史が動いた」という番組があったけれども、「その時、クツ底が動いた」である。右足のクツ底が取れてから15分後、左の靴底にも激しい違和感が走った。やっぱり足先から土踏まずにかけて一気にビリッときた。コンセルトヘボウ近くの橋の上だった。
 ならばいいじゃないか、ここで左も剥がしちゃえ。剥げた部分をつかんで一気に力をこめると、おお、潔し、左のクツ底もものの見事にその場で剥げ落ちた。これでオアイコ、右も左も平等だ。クツの底が両方とも剥げ落ちたって、まだしばらくは十分に歩き続けられる。
ゴッホ通り
(左足の底も取れた。ヴァン・ゴッホ通りのあたりだった)

 しかし諸君、まあショックは大きいのである。これを購入したのは、はるか昔の三軒茶屋「西友」である。今まだ残っているかどうか分からないが、当時は地下一階にエスカレーター付近にクツ屋があって、「旅行用」として3000円ちょいで購入した。
 あれから、このクツとともに何カ国を歩き、いくつの街を歩き回ってきただろう。実は今回の旅行の直前からこのクツの危機を感じ、スーツケースの中にはリリーフ役のクツを一足準備してきた。
 だから、とりあえずはOKであって、明日からはリリーフ君の出番。ついでに、このクツは「アムステルダムで断捨離」ということにする。
「旅に病んで、夢は枯れ野を駆けめぐる」
クツ君にも、松尾芭蕉の境地が訪れたわけだ。
 思えば15年、世界中の旅をともにしてきたクツ君を、遠いオランダの地に置き去りにするのは残酷なようだが、いや、むしろクツ君としても「これからはクマさんナシで旅を続けますかね」と、深い溜め息をつく気持ちかもしれない。
「クツ君、長い間ホントにご苦労さまでした。ホントにホントにありがとうございました」
ま、そういうことである。

1E(Rc) Collegium Aureum:HAYDN/SYMPHONY No.94 & 103 
2E(Rc) Solti & London:HAYDN/SYMPHONY No.101 & 96
3E(Rc) Collegium Aureum:VIVALDI/チェロ協奏曲集
4E(Rc) Corboz & Lausanne:VIVALDI/GLOLIA・ KYRIE・CREDO
5E(Rc) Elly Ameling & Collegium Aureum:BACH/HOCHZEITS KANTATE & KAFFEE KANTATE
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