Tue 201013 新宿で生授業5時間/これはオアシスだ/強烈な満足感と肉体疲労 3970回
久しぶりに本格的な授業を5時間もぶっ続けでやってみて、「講師も普段から怠けてちゃダメなんだな」とつくづく思い知った。昨日12日、13時半から新宿の校舎で英文精読の授業を行い、18時半にようやく12問を終了してみると、すでに肉体はボロボロ、「立って歩くのがやっと」というありさまだった。
集まった生徒諸君は、首都圏の浪人生80名。放任しておいてもらえるPretty塾(仮名)や「どうすんだい?」(仮名)ではなく、「厳しいことを承知の上であえて東進を選んだ」というタフで誠実な諸君である。
特別授業の担当講師である今井も、5時間かけて終われるか終われないか、難易度の高い精読教材をあえて選択した。京都大レベルがズラリと並んだ12問は壮観であるが、こんなのを5時間、10分の休憩時間を3回はさんだとは言っても、1人の脱落者もなしに最後までしっかり受講するんだから恐れ入る。
(10月12日、西新宿での5時間ナマ授業。精読教材12問をカンペキに解説した。200名収容の大教室に80名。コロナの状況ではやむを得ないが、久しぶりだと結構なパンパンに見える)
「え? この時期の受験生を相手に精読の教材?」「速読の間違いじゃないの?」と驚く向きもあると思うが、いやいやこの時期だからこそ、せっかくの特別授業ならしっかり&みっちり、ゴマカシのない精読をやってあげたいのである。
10月、受験生は精神的に疲れ果てている。毎週毎週「模試」「模試」「模試」のオンパレード。模試のない日は過去問に取り組んで、またまた痛めつけられる。「どうしても時間内に解き終われない」と嘆き、模試ならまだいいが「過去問」「赤本」と来た日には、時間内に半分ちょいがやっと。採点してみると正答率は4割か5割しかない。
何よりも諸君、あの混みいった設問の煩わしさはハンパではない。むかしむかし昭和の昔の早稲田や慶応の比ではない。今や国公立大だって、昔の早慶並みの煩雑な選択肢問題が目白押しだ。設問に煩わされて、肝腎の英語長文読解に集中できない。いやはや何とも暑苦しく不快な入試になったものだ。
だから21世紀の受験生は、ひたすら「時間が足りない」「時間が足りない」と愚痴を繰り返し、得体の知れないマホーのような「速読術」にでもオカネを注ぎ込まなきゃダメなのかと、深くツラい溜め息をついている。心は傷つき、精神は萎え、英文に集中して取り組む気にはとてもなれない。
(秋になってウォーキングを再開。スタートは明治神宮だ)
そういう時期に絶好のクスリになるのは、「ホンの半日でいい。濃厚で優れた内容の英文にじっくり&みっちり取り組もうじゃないか」という教材である。新共通テストで予想されるサッパリ中身も深みもない英文じゃ、18歳世代の読解力は一向に鍛えられない。
というわけで、事前にワタクシがじっくりと精選した12問の名文集は、はっきり京都大学レベルに仕上がった。「今日の5時間は、煩わしい設問の砂漠の中のオアシスのようなもの」と冒頭で生徒諸君に宣言する。英文それ自体の中身に集中できるなら、それほど楽しい豊かなオアシスは考えられないじゃないか。
では、「それだけですか?」「読むだけですか?」「訳すだけで終わりなんですか?」であるが、もちろんそんなことなら、わざわざ新宿の特別授業に忙しい浪人生諸君をお呼びする必要はない。
(明治神宮には、最近こんなトラが出没している)
新宿のオアシスで、英文の中身に徹底してこだわり、取れる限りのノートとメモを取りまくって豊かな5時間を過ごした後は、その合計150行が最上の音読材料に変わる。テキスト教材に直接メモをバリバリ書きまくっても構わない。この日の付録として「日々の音読のための白文」をくっつけた。
何しろ「白文」だから、完全な白文にしてある。もともとあった「下線部和訳」の下線さえ、残らず消してある。音読する時は、
① 授業中にメモを取りまくった紙面を見ながら音読してもいいし
② 自信がついてきたら「何も書き込みのない完全な白文」を見ながら音読してもいい。
まだ入試本番まで約4ヶ月半が残っている。140日である。この日の5時間、合計150行もの徹底した精読の授業を受けた後で、その英文を毎日欠かさず音読すれば、140日 × 150行 = のべ21000行の音読に励むことになる。
(明治神宮からの2時間ウォーキングのゴールは銀座。皇居付近から丸の内の夕景が美しい)
その種の愚直な努力を、頰を醜く歪め、鼻を鳴らして、エゲツない態度で否定ないし嘲笑する御仁も多いだろう。「そんなのは無駄な努力だ、それよりボクの教えるマホーの速読法を身につけるべきだ」。そう言って苦笑ないし失笑/憫笑の様子でニヤニヤすれば、とりあえず目先だけはゴマかせると思っていらっしゃる。
しかしナンボ失笑されようと、全て無視して毎朝の音読150行、気がついたら140日で2万1千行を音読、1ページ25行と仮定して、京大レベルの英文をのべ840ページ分を音読した受験生に、果たして勝利できる自信のあるマホー使いはいらっしゃるのか?
予備校の世界ならおそらく最高のベテラン、経験も実績も抜群のベテランとして、サトイモ今井は目の前の受験生諸君に自信を持ってオススメしたいのだ。5時間のオアシスを満喫したら、これから受験本番まで毎日、150行の音読を欠かさず続けたまえ。
10月12日に参加できなかった全国の受験生も、何らかの教材を使って同じような努力はできるはずだ。入試本番までというより、大学の入学式まで同じ努力を続けてみたまえ。たとえ入学した大学が東京大学のようなドエリャーところであっても、そういう質実剛健な諸君は「東大王」などというチャラチャラした世界に決して負けはしない。
(ウォーキングの締めくくりは「銀座デリー」のカレー。下から、カシミール・カラヒ・チャムマサラ)
そういう意気込みで13時半、ワタクシは懐かしの大教室に姿を現した。ホンの15年前まで、「90分授業 × 1日5コマ × 週6日」という試練を何とも思わなかった今井だ。どうすんだい?(仮名)では「50分授業 × 1日9コマ × 週6日」だってラクラクこなしてビクともしなかった。
しかしこの15年、東進の今井君はずいぶんラクをさせてもらって、それで心も肉体も精神もすっかり衰えていたらしい。たった5時間の授業で、冒頭で書いた通りに「立って歩くのも厳しい」という状況に追い込まれた。
まず、精神的に厳しかった。今日の「自称オアシス」は「意地でも120%理解させなきゃ」という世界。何しろ受験まで140回も音読を繰り返してもらう教材だ。訳すだけではない「精読」「味読」のレベルに至らなければいかん。かつてワタクシの大先輩たちが見せてくれた精読&味読の域に達していなきゃいかん。
そのレベルを5時間にわたって維持しなきゃいけないとなると、ホントに久しぶりの本格的な生授業になる今井君は、肉体と心の準備がなかなか出来なかった。そもそも、「黒板にチョークで書きまくる」という経験も、あまりに久しぶりだった。
「黒板にチョーク」の世界は、「ホワイトボードにマーカー」「電子黒板にタッチペン」と比較して、必要とされる握力の強さがハンパではないのである。書いては消し、書いては消しするうちに、握力がうまくチョークに伝わらなくなってきた。
(銀座デリーのカリフラワー炒め。これも心のオアシスになる)
声もうまく出ない。何しろマスクをしたままで5時間、よどみなく説明を続けなければならない。英語の発音にマスクはマコトに大きな障害になる。トランプ大統領のマスク嫌悪については、長くなりすぎるからまた別の機会に述べるけれども、大きな声でハッキリと意思を伝えたい時、マスクほど邪魔な存在は考えられない。
欧米人がマスクをつけたがらない大きな理由は、「マスクで欧米語の発音は困難」ということかもしれない。だって諸君、日本語の場合より、マスクを内側から噛んだり舐めたりする頻度が圧倒的に高くなる。それが5時間続いてみたまえ。イライラが急激に募って、今すぐにでもマスクを投げ捨てたくなる。
そういう状況でも、今井の熱意は決して冷めることはないから、5時間後の18時30分、用意した12問の精読教材はカンペキに終了。「教材のやり残しは絶対にしません」、しかも「初見の教材を予習ナシで120%わからせます」というコンセプトも、久しぶりだろうと何だろうと、見事に貫き通した。
ただし、ホントに肉体はボロボロだ。授業終了後、おなじみ「単独懇親会」を西新宿の中華料理店で開催。「自分自身と仲良くなる」という単独懇親会の開催直後、右手の震えが止まらなくなった。ぶるぶる震えて自分で自分にビールが注げない。フカヒレスープのレンゲを口に運べない。
(新宿の単独懇親会は「天津飯店」で。久しぶりの生授業に大満足しながら、超大型の北京ダックを貪った)
もちろんこの状況、「アル中ですか?」と言われかねないことは分かっている。しかし、違うのだ。断じて、違うのだ。だって、こんなことはホントに初めてだ。そもそも、普段はそんなにお酒なんか飲んでいない♡
これは全て肉体の激しい疲労のせいである。5時間にわたって黒板にチョークで文字を書きまくっていた疲労のせいで、もう右手に握力が残っていない。力が入らないのだ。「ウソだ♨︎」という諸君は、じゃあ諸君自身が5時間、延々と黒板に文字を書き続けてみたまえ。
ビール2本をカラッポにし、紹興酒のビンを1/3ほど空けたところで、おお、やっと落ち着いた。店の従業員の皆様にも、ナンボでも冗談をぶつけられるようになってきた。中国系の優しい中年男女であるが、あまりに頻繁に今井が冗談を言うので、もう楽しくてたまらない様子だ。
しかし今度は、左右の両手が順番にツリ始めた。右手がツッて激痛が走り、それが治ると今度は左手がツッて激痛が走る。ミネラル分の消費が激烈だったらしい。そういえば5時間、ワタクシは延々と激しく汗をかき続けた。
右手のツリ方の方が厳しくて、いやはや、どんどん痛みが激しくなる。ラグビー選手が試合の終盤に次々と脚がツッてリザーブと交代するが、まさにあれと同じ状況。ワタクシの肉体にとって、5時間の授業が「試合前半から後半にかけて」、単独懇親会が「後半から試合終了間際」、そういう配分だったようだ。
もちろん、だからと言って心配していただく必要なんか全くない。いけなかったのは、「久しぶりの本格的授業」という事実のうちの「久しぶり」という部分。久しぶりにも限度があって、考えてみれば最後の本格的ナマ授業は2018年7月の夏期河口湖合宿。間に約2年半、27ヶ月が空いてしまった。
27ヶ月も間が空けば、野球選手だってラグビー選手だって、そりゃ手や脚がツッても当たり前だ。「間が開きすぎたから調整登板」みたいなことをさせてもらえないと、そりゃベテラン講師の手も足もつる。「よーし、来年夏は久々の河口湖夏期合宿、何が何でも必ず大活躍しに行くぞ」と決意する今井なのであった。
なお、今回の記事に関連して人気のある過去記事を紹介しておく。「問題のスピーディーな解き方」に関心のある方、「赤本のやり方」や「赤本の解答解説に間違い」について関心のある方は、ぜひ以下の3本を読んでくんろ。
「Sat 200704 新講座完成/パラグラフリーディング解禁/パンドラの封印を解く 3953回
Fri 081010 赤本には間違いが多いという噂で悩むな 過去問の正解で右往左往するな
Tue 100824 「赤本をやって愕然としている諸君へ」を語る カフカの生家を見に行く」
1E(Cd) Sarah Vaughan:SARAH VAUGHAN
2E(Cd) José James:BLACKMAGIC
3E(Cd) Radka Toneff/Steve Dobrogosz:FAIRYTALES
4E(Cd) Billy Wooten:THE WOODEN GLASS Recorded live
5E(Cd) Kenny Wheeler:GNU HIGH
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