Fri 180720  秋田土崎・曳山祭/アラ30とアラ40のすっぽん/日和神楽 3672回 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 180720  秋田土崎・曳山祭/アラ30とアラ40のすっぽん/日和神楽 3672回

 今日7月20日と明日21日、我が故郷・秋田市土崎港では「神明社曳山祭り」が行われている。今や世界文化遺産の一角を占めるが、京都の祇園祭に比べれば、残念ながらマコトに田舎くさいお祭りであって、イザベラ・バードは名著「日本奥地紀行」の中で「こんな野蛮なお祭りは見たことがない」と書いている(はずだ)。

 

 しかし諸君、イザベラ・バードを驚かせたのは、江戸末期から明治初期の秋田市土崎港であって、21世紀の極度に高齢化した我が故郷は、例えお祭り当日であっても、おそらくたいへん大人しいのである。

 

 ワタクシの小学生時代は、お祭りのエネルギーが最高潮に達していた。国鉄の工場に3000人、日本石油や帝国石油の工場にもそれぞれ2000人ずつ、20歳代や30歳代の屈強な若者が働いていた。

 

 彼らの若い家族を合わせれば、港町に渦巻く粗野なエネルギーは、まさに昭和の熱気そのもの。港湾労働者も多かったし、近隣の農村や漁村からも若者が押し寄せた。高倉健や菅原文太が大活躍しそうな、マコトに暴力的な雰囲気が港町を満たしていた。

 

 ワタクシの母の実家は、その港町の北の端、「相染」と呼ばれる地区にあった。相染と書いて「そうぜん」と発音する。話が「そうぜん」となれば、必然的に「騒然」である。相染は20台を超える曳山の出発点。祭り当日の賑わいは、想像を絶するほどであった。

 

 今では大人しく世界文化遺産に収まっているが、朝から晩まで好きなだけ酒をあおった男たちのエネルギーの渦は、幼いコドモの入り込めるようなシロモノではない。今でもお祭りのことを考えると「おお、コワい」と身をすくめる思いがする。

      (長刀鉾の日和神楽に会いにいく)

 

 だから諸君、由緒正しい京都の祇園祭を満喫していても、ワタクシは今ひとつ物足りないのである。もっと混沌としていていいんじゃないか、もっと濃厚&濃密に男たちのエネルギーが燃え上がっていいんじゃないか。のっぴきならない危険を感じさせるほどであっていいんじゃないか。

 

 もちろん、いかにも京都らしい上品なお祭りは、これはこれで素晴らしい。世界中から集まった人々が、身も心も完全に油断して、みんな穏やかな笑顔で夜の街をそぞろ歩いている。緊迫感の「き」の字もない。

 

 しかし今井君は、やっぱり物足りないのである。「気をつけなさい」「イケナイ人もたくさん来てるんだから」「夜店は気をつけなきゃいけないよ」と親に言われ、親戚に言われ、友だちどうし緊張に汗ばんだ手を繋いで、そこいら中の薄暗闇にトグロを巻いている危険を避けながら、祭りの夜の街を歩いたのが懐かしい。

        (函谷鉾や月鉾も元気だ)

 

 そこで諸君、あえて危険なムードを求めて、祭りの京都の今井君は、すっぽん料理「大市」を訪れた。「すっぽん」と聞いただけで、一気に雰囲気は危険な昭和の世界になだれ込むじゃないか。

 

 店は下長者町/千本西入ル、ディープな京都である。保元&平治の乱、応仁の乱、それに続く戦乱の時代の亡霊が、数限りなく夏の京都をさまよっていそうな薄暗い街に、「すっぽん料理 大市」のノレンが揺れている。

 

 3週間前と比較すると、「少し味が変わりましたね」「板前さんが違うんですかね」と、シロートはシロートなりに微妙な変化に気づくのである。6月下旬よりホンの少しだけ、見た目も味も歯ざわりもワイルドなのだ。

 

 もちろん7月16日の今井君は、ワイルドな祭りの夜の緊迫感を求めてすっぽん屋を訪れたのだ。すっぽんが3週間前に比較してグッとワイルドに変化しても、それはまさに「望むところ」と言っていい。

 

「それにしても、この変化は何なんだ?」。最初に浮かんだ答えは「別の板前さんなのかな」なのであったが、次に思いついたのは、「6月のすっぽんと7月のすっぽんの違い」ということであった。

 

 6月は、まだ涼しい梅雨のさなかのすっぽん。7月は、連日38℃を超える猛暑の泥水の中を泳ぎ回ったすっぽん。言わば6月はアラサーのすっぽん、7月はアラフォーのすっぽん、そういうことなんじゃないか。

 

「何でもかんでも若けりゃいい」というのは、まだまだ人生のド♡シロート。選挙なんかで若さをウリにして「若さで勝負」とばかり、街中を爆走してみせる立候補者は多い。いやはや、分かってませんな。若い繊細なアラ30すっぽんももちろん旨いけれども、アラ40すっぽんにはアラフォーの、濃厚&濃密な極上の味があるのだ。

       (長刀鉾がやってきた 1)

 

 さて諸君、すっぽんでポンポンがいっぱいになったら、いよいよ今井君は祇園に「日和神楽」を見に行かなければならない。日和神楽との出会いは、およそ10年むかしのこと。祇園の名店「てる子」の隣の隣、「隠」という居酒屋で酒を飲んでいたら、いきなり外が騒然となった。

 

「日和神楽が来ますよ」と店の人に教えられ、テーブルはそのままにして慌てて外に出た。当時の様子は

Fri 090724 祇園「隠」で長刀鉾を待ち受ける 舞妓サンがお出迎え 「あれが『てる子』?」

Thu 090723 大阪京橋講演会 祇園祭の八坂神社 祇園「てる子」の角で「てる子」を想う

Wed 080716 祇園「隠」 長刀鉾 八日市講演会 近江鉄道

などを参照していただきたい。

 

 しかし諸君、2018年の今井君は、すっぽんに夢中になるあまり、祇園に駈けつけるのが遅くなってしまった。すっぽんの余韻を楽しみながらホテルの部屋でのんびりしているうちに、いつの間にか夜10時を過ぎてしまっていた。

 

 二条城前のホテルを出たのが10時半、地下鉄で一気に祇園に向かえばいいものを、「せっかくだから三条から四条へ、宵山の〆を眺めながら歩いて行こう」と、余計なことを考えた。

 

 どの夜店も、もうみんな店じまいにかかっている。祭りの後はいつでも寂しいものであるが、にっちもさっちもいかないほどの大混雑がウソのように引いた新町通りや四条通りを歩きながら、敏感な今井君はすっかりションボリしてしまった。

       (長刀鉾がやってきた 2)

 

 四条烏丸23時、四条河原町2315分。四条大橋をわたった段階で2320分。もう歩行者天国は終わって交通規制は解除され、いつも通りにクルマがビュンビュン走り始めた四条通りを急ぎながら、ションボリ里芋の目から熱い涙が溢れ始めたのである。

 

 一力茶屋の角を曲がって祇園の南側に入っても、もう人通りはすっかり途絶えて、裏通りの暗闇からボソボソ低い人声が漏れてくるだけである。宵山は終わり、おそらく長刀鉾の日和神楽も通り過ぎて、おそらく人々は明日の山鉾巡行に備え、とっくの昔に寝床に入っちゃったのだ。

 

 ようやく名店「てる子」の前に着いたのは、そう考えて諦めかけた頃である。店の前に佇んでいた人々に「日和神楽は?」と尋ねてみると、「まだです」「これからです」の答えが帰ってきた。

 

 おお、よかった。おお、間に合った。汗まみれで歩いてきた甲斐があった。全てはすっぽん様のおかげだ。狂喜乱舞して耳を済ますと、すぐ近くにお囃子の音。まさにいま日和神楽が、八坂神社の方向からグイグイ接近しつつあるのであった。

       (提灯を掲げて先導する人々)

 

 日和神楽の人々は、祇園に入ったあたりで一休み、お茶やお寿司やビールの接待を受け、集まった祇園の人々と軽く挨拶を交わす。そのすぐ後、「てる子」の角で神楽はもう一度立ち止まり、またまたお茶にビールにお酒にお寿司、豪華な接待を受けつつ、馴染みの人々どうしの挨拶が続く。

 

 神楽の前にも後ろにも、たくさんの人々が付き従って、ディープな京都の暗闇を進む。10年前と比べると、集まった人々の数は数倍に膨れ上がったようである。

 

 ワタクシは10年前の少し寂しげな日和神楽が好きだった。付き添って京の街を西に向かう人々は、もっとマバラだったように思う。今ではそこいら中からスマホの腕が伸びて、写真を撮るのもままならないアリサマ。人の熱気が激しくて、濃密な人口密度のせいか、またまた熱中症の危険を感じる。

        (長刀鉾と夜の祇園を進む)

 

 日和神楽は、まだまだ深夜の祇園を練り歩くのである。しかし諸君、こんなにたくさんの人が付き従っているなら、何も今井君なんかがしょんぼりついていかなくてもよさそうだ。

 

 途中で人々の群れから離れ、暗い路地を右に曲がり、左に曲がり、右に曲り、もう一度左に曲がって、しょんぼり今井は馴染みのバー「フィンランディア」に入った。

 

 生意気に「馴染み」と言っても、馴染みなのはこっちの立場から言うのであって、店の人々はちっとも記憶してくれていない。1年に1回だけ、祇園祭の夜に2時間弱、ウォッカとブラントンをストレートで数杯、黙って続けざまにあおって帰るのである。

 

 それだけのそっけない客を、覚えていてくれるはずもない。というか、覚えられてお馴染みさん扱いされ始めたら、かえって恥ずかしくて気詰まりで、足が向かなくなるような、マコトに内気なお客なのである。

 

1E(Cd) Solti & ChicagoMAHLERSYMPHONY No.4

2E(Cd) Solti & ChicagoMAHLERSYMPHONY No.5

3E(Cd) LeinsdorfMAHLERSYMPHONY No.6

4E(Cd) Solti & ChicagoMAHLERSYMPHONY No.8 1/2

5E(Cd) Solti & ChicagoMAHLERSYMPHONY No.8 2/2

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