デビル
1997年 アメリカ映画
監督 アラン・J・パクラ
脚本 ケヴィン・ジャール
出演 ハリソン・フォード
ブラッド・ピット
⚫︎あらすじ
アイルランドで幼い頃に父を目の前で射殺されたフランシスは、成長してIRAの戦闘員として武力闘争に身を投じていた
厄介な英軍ヘリを撃ち落とすため、携帯地対空ミサイルを買う資金を持って、偽名「ローリー」としてニューヨークに潜入する
IRAシンパの判事の手配で、ローリーはアイルランド系の警官トムの家に下宿することになり、トムの妻や娘たちとも打ち解け、穏やかな共同生活が始まる
一方トムは、相棒ディアスが逃走中の犯人を背後から射殺した件で嘘の証言をしてしまい、良心の呵責に苦しみつつ警官を辞めようと考えていた
やがてローリーは、武器売人との取引がこじれ、銃撃が起こり始めたことで、トムは彼の部屋を調べ、大金と拳銃を発見して疑念を抱くようになる
英国当局からローリーがIRAテロリストだと知らされたトムは激しく動揺し、彼を逮捕しようとするも、護送中のもみ合いで相棒ディアスが撃たれて死亡、ローリーは逃亡してしまう
武器取引の現場で、ローリーは仲間ショーンを殺したバーク一味を爆破と銃撃で倒し、ミサイルを奪ってアイルランドへ運ぶため船での脱出を図る
トムは、当局がローリーを“消そう”としていることを察し、彼を殺すのではなく自分の手で止めようと決意して、ローリーの船に単身乗り込む
⚫︎感想
アイルランドで父親を目の前で殺害された息子は、大人になってアイルランドの戦士となり戦います。
見方を変えれば、昔の日本でも行われていた、「父のかたき！」という正当な仇討ちと同じことです。
自分たちの居住地に、武力を使って入り込んできた侵入者を、こちらも武力を使って追い出そうとしているだけなんです。
でも強い方は、弱い方をテロリストとして、処罰しようとするんですよね…
ブラッド・ピットとハリソン・フォードというダブル主演のような映画です。
ブラピはカッコよくて、ハリソン・フォードの幼い娘（4歳ぐらいかなぁ）からも「お嫁さんにしてくれる」と聞かれます。
そしてIRAシンパの判事の娘（こっちは大人）からも「あなたにキスして欲しい」と言われています。
でも、そんなことには目もふれずアイルランドのためにミサイルを持ち帰ろうと船に乗るんです。
ハリソン・フォードは、ブラピがイギリス当局に殺害されてしまわないように、アメリカで逮捕してしまおうとしたんです。
なんだか悲しい話でしたねぇ…
⚫︎アイルランドとイギリス
アイルランドとイギリスは隣り合う島ですが、歴史も文化も違う別の民族が暮らしています。
もともとイングランド島とアイルランド島にケルト人が住んでいましたが、後から来たアングロサクソン人がイングランド王国を作りウェールズ、スコットランド、アイルランドに影響力を広めていきました。
England＝アングル人の土地という意味です。
一時はアイルランド全域がイギリスになりましたが、抵抗も厳しく1921年にアイルランドは独立しました。ですが北の1/6にはイギリス人も多く暮らしているためイギリスに残留しました。
⚫︎アイルランド紛争
北アイルランドの2/3がイギリス人で、1/3がアイルランド人です。そこでは土地を巡って紛争が絶えず起こっていました。
アイルランド側の武装組織 IRA （アイルランド共和軍）は、武器を使って戦うようになりました。映画の中でブラピが所属する組織です。ですが1998年の「ベルファスト合意」で、みんなで協力して平和に暮らすための約束ができました。現在ではそこそこ平和を保っているようです。
⚫︎アイルランドからアメリカへ
イギリスに支配され、宗教も差別され、土地も奪われたアイルランド人。しかもそこに大飢饉が発生し、生きていけなくなったアイルランド人たちは新大陸を目指しました。
しかしアメリカでも、アイルランド人というだけで差別されました。最初は差別されますが、のちにアメリカ社会を大きく支える存在になっていきました。
映画の中のハリソン・フォードは同じアイルランド人として、ブラピを英国当局から守ろうとしたんですね。ケネディ大統領はアイルランド移民だそうです。
⚫︎宗教の違い
イギリスはプロテスタント、アイルランドはカトリックです。どちらもキリスト教なんですが、イギリス王ヘンリー8世はローマカトリック教会と意見が合わなくなり、自分に都合の良いイギリス国教会を作ります。
これはドイツの修道士ルターや、スイスのカルヴァンの宗教改革とは少し違う、イギリス王ヘンリー8世が作ったイギリス独自のプロテスタントでした。
ヘンリー8世は離婚したかったため、カトリック教会を抜けてイギリス独自の宗教に変えたのです。
そしてアイルランド人に、そのイギリス国教会を強要したんですねぇ…