第10部 ブルー・スウェアー 第11章 巧妙な罠 | ブログ小説 第10部 ブルー・スウェアー

「今、ですか?!」愛那は不意打ちの交渉条件に驚きを隠せなかった。

「そりゃそうですよ。一応やるときめたら融資をする訳だし、あなたの住んでいるところまでとりたてにいく訳にいかないんだから帰られたら困るでしょう・・・」

「でもいきなり、それは・・・」

「でもあなたは絶対に今、田舎に戻ったらきっとまたいつものあなたに戻ってしまう。時は大胆な決断をしなくてはいけないことだってあるんだ。ましてや近くに住んでいる訳じゃない!思い出して戻ってくるエネルギーなどある訳がない。チャンスなんて一瞬なんだ!」愛那はだんだんと真一に洗脳されていくような感覚になっていった。

チャンスなのか?罠なのか?愛那はそのことを推し量った。

「もし・・・もし、明日帰る切符をやぶったら🎫どうなるのですか?」愛那はドキドキしながら聞いた。

「・・間違えなく君の運命は変わる!でもずっと家に帰るなっていってる訳じゃないんだ!!君が約束を破らないと確信を持てたらそんなことはいわないんだ!」

「・・・」

「もし帰らなかったら、明日から私はどうなるのでしょうか!?」

「寝止まる所は私は保証してあげる。決して怪しい所じゃないんだ。ちゃんとしたホテルにとりあえず1週間滞在するよ。もし、気が変わったらすぐに帰りの切符代出してあげるよ。私の提案に乗ってみないか!?」真一の提案に愛那は黙り込むと真一も黙りこんだ。そして2人の間に沈黙が流れていた。愛那は不覚にも真剣に考え始めていた。

(どーしよ・・・)愛那は何故、即答で断れないのかわからずにいた。金縛りにあったように凍りついていた。

愛那の頭の中にはふいに扉を開けて入ってきた時、衝撃を覚えた時のことを思い出していた。それがスローモーションのように思い出していた。

こうやって繋がっているのはとても奇遇なのだと愛那は自分に言い聞かせた。

(これはきっと何かの縁なのだ!!)愛那はふと強く思った。

今はこのつながった縁を大切にするべきだと強く思った。

「わかりました!明日、帰りません!」愛那は真一の目を真っ直ぐに見据えていった。まるで呪縛にあったかのように動けずにいた。

「・・・そうか。ありがとう!」

「どうしたらよいのですか!?」

「そうか!?俺の言葉を信じてくれるのか!?俺のいうことをさ信じてくれるんだな?必ず、信じてついてきてくれてよかったと思える日が必ずくるよ!そうさせるよ。出会えたことが意味のあるものだったと言える日が来るようにするさ!」

「・・・はい!」

「何かを掴みたい。私には夢も希望もないけれど、何かを掴みたいです!」愛那も真摯に言い返した。

「欲しいものは何でも与える。その代わり1つだけお願いがある!」真一は愛那の目を見据えていった。

「なんですか!?」

「・・・俺を・・・裏切らないでくれ!」真一は真っ向から訴えた。愛那は任侠の世界の人に思えたりしたけれど、義理人情にとても厚い人ゆえにそう見えているだけなんだと思えたりした。血の気の濃い大阪人特有に思えたりした。

「いろんなものを与えてあげるから、1つ君に求めるものがあるとしたら、裏切らないで欲しい。ただそれだけだ」真一の言葉に愛那はどう返してよいのかわからないでいた。いろんなものを与えてあげるから裏切らないで欲しいという言葉にただならぬものが隠されているような気がしたけれど、愛那はそれが大人の罠であることは未だ知るよしもなかった。