「受けいれたら、私の夢も砕けてしまう!」あずさは悲観的な顔でいった。
「どうして砕けてしまうのですか?関係ないですよ!」
「あの人は自分が不倫してるクセに束縛が強いのよ!矛盾しているのよ!」あずさは吐き捨てるようにいった。
「束縛が全くないのも、寂しいものですよ!まぁ、私は束縛する人もいませんが!束縛されたい!!」直美は両手を組みながらウルウルとした目であずさをみていると、あずさは呆れたような目でいった。
「ホント、あなたって何もわかってない!!」
「わからないですよ。この方20年、彼氏がいないんですから!!でも先輩、私、ここにいますから、あのイケメン貴公子の所にいってあげて下さい。あそこに居座られて待っていますよ!」直美はあずさが奥の席にいくように促した。奥から彼氏が遠慮がちにこちらをみていた。あずさと直美のやりとりを不思議そうな面持ちでみていた。
直美はあずさに奥の席にいくように視線でうながした。
あずさはぎこちないながらも奥の席にゆっくりとした足取りでいき、憮然とした表情(かお)で男の前に立ちはだかっていた。
直美は遠巻きにあずさとその彼氏が思いの他、不覚にも似合っているように思えた。直美は直感的にこの2人は出会うべくして出会った運命だとつくづく思った。
お世辞抜きにお似合いだと思った。醸しだす空気感が一緒なことに気がついていた。
「・・・あれは運命だ・・・」直美はそう呟くとガールズバーをあとにした。
直美は新大久保の駅に着くと強烈な孤独な気持ちになっていた。
愛那にもちゃんとした相手がいて、あずさはどんな事情があったとしても、あんな貴公子みたいな人がいて、援助してくれる上に、不条理であってもちゃんと愛が存在している。それに引き換え、自分は何なんだ?直美は駅のホームで自問自答してみた。
(・・・私の存在って一体、何なの?なんの為に生きているの?)
直美は重たいあしどりで、駅の改札を出ると人並みが途絶えた街並みには冷たい風が吹いていた。
直美はシェアハウスの机に向かっていると机の上にあるデジタル時計🕰をみていた。深夜の2:00をさしていた。
後ろで中国人や家出少女は大きなイビキを相変わらずかきながら寝ていた。
直美はその寝顔を振り返ってみると、無防備な寝顔で、何の品性も感じたりしなかった。家出少女は不潔な様相で寝ていた。直美はこのシェアハウスにきて、数えきれないほどのため息をついていた。もう何かが限界だった。
(・・・なんか地獄・・)
直美は思わず顔を伏せた。直美は顔をふせると、気がつき、顔をあげると、明け方の6時を回っていた。
誰もいない共同のシャワールームでシャワーを浴びていると、排水溝には多くの髪の抜け毛が落ちていた。
それをみていたら直美には気持ち悪さが襲いかかってきた。
(・・・無理、もう無理・・・)
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