「会社は6月決算だ。5月、6月は少しでも売り上げを伸ばす為に営業が頑張るだろうから、君たちもくれぐれも間違えないようになっ!!あと自主的な残業も求めることもあるかもしれないから、一時的でもあるから積極的に残業をもとめるかもしれないから、頼む!」朝礼で大塚紀明は統括部署に喝を入れるようにいった。
朝礼が終わると各々が席に戻った。
「ねぇ、ゴールデンウィーク何処かいくの?」奈緒が斜め向かいの席から声をかけた。
「ええっ、まぁ、一応・・・」
「どこにいくの?旅行?」
「まぁ、そんな所ですかね!」
「まぁ、いいわね。私なんてなんの予定もイベントもないわ。でもね、こないだようやくペーパードライバーを抜け出せて、免許をとったの!!」
「よかったですね!!」
「淡路島なんて車がないとホントに不便だからね!」
「ホントですよね?自然は限りなく豊かなんですがね」
「舞子にいこうものならタコぶねかバスかだもんね。何にも出来ないよ」
「ホントにそうですよね?」愛那は深く納得したようにいった。
「ねぇ、今度、ドライブしない?」
「えっ?」
「私の運転じゃ不安?」
「あっ、そういう訳じゃないんですが、いきなりだったのでびっくりでして・・・」愛那は誤魔化すようにいった。
「でもあれよね、うちって、免許27で取ったけれど、あれなのよ。うちの兄も免許取り立てで事故を起こすし、少し不安もあるのよね!!」奈緒は心の内の心情を吐露するようにいった。
「・・・」
「でも今度ゴールデンウィーク明けにでもいかない?あっ?もしくはゴールデンウィークの最終日にしない?」
「えっ・・・」愛那はとまどうようにいった。
「そこ、仕事が始まっているんだ。私語は慎みなさい」大塚は昭和ながらの丸ぶたのメガネを手であげながらいっうと奈緒は愛那から視線を逸らして黙々と仕事を始めた。愛那も慌てて我に帰ると仕事を始めた。
愛那は昼休憩に小さな休憩室でお弁当を食べていると、スマホがぶるぶると鳴っていた。愛那がスマホをみると、LINEに直美からのメッセージだった。淡路島のカレー屋で話して以来だった。愛那の脳裏にあの日のつっけんどんだった日の出来事が浮かんできていた。
(・・・忘れてた。あの子という存在)学生の頃はあんなに四六時中、一緒にいたのに、社会人になってみて、こんなにもあっけなく忘れてしまうなんて、意外と自分は冷たい人間なのかも?と愛那はつくづく思ってしまった。こんなにも呆気ないものだったのか?と直美という存在がとても遠い存在のように感じてしまい、思わず苦笑いをこぼした。愛那は半ば半分、自分の非情さを感じながらも、メールをみると、またしても今日はヒマ?という内容のものだった。
(また?いつも急なのね)
愛那がカレンダーを眺めていると、4/29になっていた。
愛那の会社のゴールデンウィークは5/1からになっていた。
(明日は旅行の準備だし、今日の夜くらいは付き合ってあげるか?この間のこともあるしな・・)
愛那はこないだのこともあるから無下に断る訳にもいかないような気がしてしぶしぶ了解のメールを送った。
(いつからあんなにめんどくさいヤツになったんだろう?)