第10部 ブルー・スウェアー 第2章 夢の入り口 | ブログ小説 第10部 ブルー・スウェアー

「でも、これから一緒にやるんだから、仲良くやりましょうね!!」結衣は無理やり話をまとめるようにいった。

「・・・あっ、はい」愛那もその場を適当に取り繕うようにいった。

「じゃあ、今日はお付き合いいただきありがとうございます!」結衣はあきらかに乗りと性質(たち)が合わないと判断されたのか不機嫌そうに伝票を持つと会計に向かおうとしたが結衣は急に戻ってきて、ムッとした顔で戻ってきて、愛那を見下ろすように無表情でいった。

「今日は私が誘ったから私が払うわ!」そうぶっきらぼうに言い放つと結衣はお会計にむかった。

愛那はどうすることもなく、ただ黙って結衣をみていた。

(・・・確かに合わない気がする・・)

愛那は1人で不機嫌になって店を去っていった結衣を冷めた目でみていた。

(・・・変わった人・・・)


愛那は家で健三が帰ってくるまでの間に料理をしていた。決して広いとは言い難い家の年季が入っている家はこじんまりとしていた。リビングには亡き母親の遺影が仏壇に祀られていた。写真の愛那の母親の写真は30代後半の頃だった。愛那がまだ小学生の頃に病に倒れ、亡くなった。それからは父と2人で二人三脚で暮らしてきた。父は彫刻家でもあった。地元の彫刻家として細々と工芸家として地味に名を馳せていた。彫刻家として時は仕事が厳しい時もあったりしたが、それでも苦しいときは単発でアルバイトをしたり、町興しに積極的に参加したりしながら、元々無口で人づき合いなどない人だったけれど、頑張って、自分を押し殺しながら残された娘の成長のために必死に頑張ってきた。そんな父親の背中をみてきたせいか、母親がいないことで父親に迷惑をかけるようなことはしないと心に決めて愛那はそんなに優秀な子ではなかったけれど、真面目に生きてきた。父親の健三は母親がおらず、いつも仕事ばかりであったことに負い目を感じながらも、決してグレることもなく、素直で人を思いやる子に育ってくれたことが何よりも誇りでもあった。決して口に出していったりしたことはなかったけれども。

健三は娘が大きくなったら今まで、何もしてあげられなかったからもっと娘と旅をしたり、もっと話をしたいと思っていたけれど、大きくなった途端に嫁いでいくのかと思うと、何もしてやれなかった事で少し落ち込んでいたりした。健三はそんな気持ちを隠すように家の扉をガラッと開けた。

「ただいまー!」健三は靴を脱ぎ、家の中に入ると台所で娘が調理をしていた。

「お父さん、お帰りなさい」

「あぁ、今日は寒かったな。いつもより」健三は本当は寒くなかったのに、落ち込んでいる気持ちを押し隠すように適当に会話を取り繕うようにいった。

「・・・寒かった?風邪でもひいたの?お茶でもだす?」

「いい大丈夫だ」

「今、ごはんだすね」

愛那と健三はいつものようにご飯を食べていた。

「おまえとこうやって食卓を囲むこともなくなるんだな」健三はしんみりとした顔でいった。

「いやだ、そんなことない。彼はすごくいい人でお父さんのこともちゃんと考えてくれて、ゆくゆくは同居することも考えているの。すごく優しいのよ」

「知っとるとも。娘としてこうやって過ごすことがなくなるんだということだ。何にもしてやれなかった。不自由な思いばかりさせて・・・」

「そんなことないわ。お父さんからたくさん愛情をうけて育ててもらってきたわ」愛那はしんみりとしている健三を励ますようにいった。

「もう少し、娘のままでいて欲しかった」健三は普段は滅多に口にしない本音を口にした。

「やだ!私はいつだって娘のままだよ。ずっと娘のままなのよ。またすぐに一緒に暮らすと思うから、そんな顔をしないで。お父さんを悲しませないように俊也さんも考えてくれているのよ。お父さんが思うより、ずっと優しいのよ」愛那は晴れない顔をしている健三を諭すようにいった。

「そうだな。おまえが幸せになってくれるならそれでいいに決まっているよ。俺もなんで年甲斐もなく素直に祝福できないんだろうな。あんなにいい人はいないんだし、何歳であろうと幸せになってくれたらそれでいいんだし、俺もバカだな」健三はまるで自分に言い聞かせるようにいった。愛那は父の本当の気持ちが痛いほどよくわかっていた。

「私はずっとお父さんの娘であることは変わらないのよ」愛那はしっかり父親の目をみていた。



p.s

今日はとても天気が良いですね〜!!

最近、人生いろいろある中で生まれて初めて「トカゲの尻尾切り」というものを現実に目の当たりにして衝撃を受けているこの頃です!実際にあるんだなぁって、人生いろいろある中でも初めての出来事でした。冷静に分析すると、この言葉がぴったりでした。ずっと自分の人生でいろいろあってもこんな経験初めてで、いろいろある中でも本当は恵まれていたんだ、と今回の件で実感しました。

いろんな世界をみた中でも初めての出来ごとでした。でもこれも小説の1つのエッセンスというものなのでしょう。でもある意味でよいことだったことにも気がついていて、すべてはうまく出来ていたんだって気がついていて、その歯車がある意味完璧で、びっくりしています。