山本は救急車に一緒に乗ってついていった。救急車に乗せられていく姿を愛歩は呆然と眺めていた。
また、誰かの最期の後見人になってしまったような複雑な気持ちに愛歩は責め立てられた。
愛歩は警察を後にしたあと、仕事をする気になれず、時間も大分すぎていて効率が悪いことを理由に仕事を休んでいた。久しぶりに原宿の街を歩いていた。あてどなく歩いていた。せつなくてやるせない思い出がたくさん凝縮されている夜を歩いて通り沿いが終わると、あの人の店が見えてきた。「オード・アド・ミラブル」の点灯を愛歩は立ち止まって見つめていた。あの時にいたお店と何ら変わらない光景なのに、何故なのかすごく寂しい光景に愛歩にはみえてしまう。
あの女(ひと)が恋人と一緒に作ろうとしたあの店を見ているととても寂しくてせつない気持ちになってしまう。とっても寂しい気持ちになってしまう。あそこで働いている麻里は今も誠一のことを変わらず思いを寄せているのだろうか?それにしてもあの沢村誠一という男も最初こそ恋心を抱いていたこともあったけれど、だんだんどこか得体の知れない企みを感じるようになっていた。それは言葉ではうまく説明出来ないけれど、自分は誠一の何か目的の為に利用されているのではないか、あの人の目的の一つの駒として使われているだけに過ぎないのではないか?そんな風にさえ思えてきた。今は何も詳しいことはわからないけれど・・。ただ、一つ言えることはきっと藤本真広という女性に纏わることなのだろうと第六感がうずいていた。
(あの人がやり残した夢は何なのだろうか?人は死んでも諦めきれないものなどあるのだろうか?そんなのわかるわけがない)愛歩は灯りが灯っているお店をじっーとみていた。彼女がやり遂げたかった本当の願いとは何なのだろうか?復讐だったのだろうか?それとも未完の夢だったのか?それとも愛する人と結ばれることができなかったことなのだろうか?
彼女が人生でやり残したこと、それは愛歩が知る術もなく、深遠すぎてわかるわけもなかった。
p.s