第8部 悲しみの雨 第12章 どこかで出会ってた? | ブログ小説 第10部 ブルー・スウェアー

「誰かは知らないよ。僕がもし知っていたらただじゃおかない。僕が嫌疑をかけられたからじゃない。誹謗中傷されたからではない。彼女を殺しておいて償わなかったからでもない。そんな事をして貰ったとしても彼女は帰ってこないんだから」誠一の目はとても鋭かった。

「じゃあ・・・何なのですか?」

「彼女の夢が閉ざされたことが腹が立つんですよ。あの人はたくさんの希望があったんですよ。何も完結していなかったんですよ。志半ばでこの世をさったのはどんな理由であれ、悔しいと思うんですよ。世の中はおかしなものだよ。生きていたくない人や何にもしたいくなく、体たらくな人でさえ生きていられるのに、生きていたいと強く思っている人はいきいられないなんて」誠一は淡々といいながらも、その言葉にどこか測りしれず、深さがこもっていた。

「・・何の夢なんですか?あなたと一緒になることですか?」

「それもあるけれど、彼女はこれから小説とかそういったもので、たくさんの人に夢を与えたいと願っていたよ。あとはまぁ、この会社を大きくしたかったんじゃなかったのかな?あとは・・あの人の夢は・・」誠一は机の中から茶封筒を取り出した。愛歩は差し出された茶封筒を受け取ると中身を取り出した。

「この小説は未完なんだ。これは愛する人を奪われ、主人公が復讐に燃え尽きていく<悲しみの雨>という大賞をとった続きの小説なんだけれど、この続きを完成させたいという希望があってね、どういうものを作りたい希望があって。悲しいまま死んじゃった・・」誠一は遠い目をしたように言った。

「真広さんはどんなものが書きたかったんですかね?復讐の後には何が待っているんですか?」愛歩も話していくうちに深遠な感性に引き込まれるように呟いた。

「雨が降り続いた後は、晴れ渡るから、雨が止んだあとの空とか書きたかったんじゃないかな?わからないけれど、まだ書き始めたばかりだったのに」誠一はボーゼンとしながらいった。

「あなたはいつまで真広さんのことを引きずっているんですか?別に犯人じゃない、何も悪いことをした訳じゃないなら、新しい人を探したりしないんですか?」愛歩は聞き出して余計なことを聞いてしまったといわんばかりにはっとしたように我に返った。

「探す訳ないでしょう。僕がこの会社を引き継いだ理由はわかりますか?彼女の会社を引き継いで他の女と一緒になる訳がないでしょう。本当は彼女の妹や両親がいたわけだから当然、継ぐ権利は向こうにあるわけでしょ。それでも僕がここを継いだのは僕が彼女の意志を継承したいからだったしまぁ、あまり家族と仲がよくなかったというのもありますがね。麻里がそんなことを言っていたんでしょうね。僕にそんな気持ちがないことをわかっていて付き合っていたはずなのに最近、女のステータスに執着がすごくて困っているんですよ」誠一は面倒くさそうにいった。

「・・・それは好きだからではないですか?」愛歩はポツリと反撃をした。


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