夏のごきちゃん | ブログ小説 第10部 ブルー・スウェアー
夏のゴキちゃんへ

君はただ一生懸命に生きているだけなのに、

何も悪いことはしていないのに、

皆から疎まれ、嫌われ、いつも君は必死に逃げ回っている

それが宿命といえばそうなのかもしれないけれど、虫たちのなかでもナンバーワンに勝手に嫌われ、ホウ酸ダンゴや甘い餌で誘きよせられ、

必ず撃退される

なんて理不尽なんだろう?

それでも夏になれば、圧倒的な存在感を誇り、

撃退されても撃退されても尚も尋常でない繁殖力で繁栄を誇る

人間以上のツワモノ

ゴキちゃん。

ゴキちゃんが何も悪くないってわかっているよ。蚊のように人の血を吸うわけでもかみつく訳でもない。

人間と同じ太陽系の生命体であるのに、ただ、存在しているだけで

いやみ、嫌われる悲しみのゴキちゃん。黒く光っているそこにいるだけで、君たちより巨大な次元の高い人間たちを震撼させることができる

夏の裏番長、ゴキちゃん。

君が何も悪くないのはわかっているけれど、君が目の前に現れると、理由なんてないのに、叫びだして逃げだしてしまう。夜、寝ている時に顔を横切られたらどうしようと想像するだけで恐怖で眠れなくなる。

結果、君と戦わなくてはいけないハメになる。

だからお願い、私の前には現れず、遠くで君は元気でいて欲しい。

太陽系の同じ生命体の中で最も傲慢な人間たちから少し離れて

元気でいてほしい。