第7部 私の愛まで 第16章 心の治験 | ブログ小説 第10部 ブルー・スウェアー
「・・・朱理・・・・」百合は朱理にハンカチを差し出した。朱理はハンカチを受け取ると涙を拭いた。 
「私はあの人はうちの財産を狙っている性悪な女だと思っていたわ。やっている仕事も体を売った仕事をしているってきいてろくな女じゃないって思ったわ。でも私はあの女とうちの人間が最終的にうまくいくともおもわなかった。あの女は幼稚というかうちの人はもっと野心的で幼い純愛なんかでは何も変わらないと思った。そして去っていくものだと思った。あの軽井沢の別荘で会っているって知っていたけれど見て見ぬふりをしてきたの。でもあの人があの女を治験に利用して失敗したと後から聞いたの。もう人生終わったと泣いていたわ。あの女の余命があっと幾日もないことも。いくらあの女と腹がにえくり返ったとしても法律的に禁止されている範囲を越えた治験だったから罪に問われたらもううちはひっくり返るわ。でもどうすることも出来ず、もう終わったと思ったわ。私も情けない気持ちでいっぱいだった。元気もなく病院にもいかず落ち込んで寝込んでいたあの人から本当の理由を聞いてひっくり返りそうになったわ。あの人も告発の行方に怯えていたわ。あの人からその女の話を聞いてから一週間くらい経った頃かしらね。あの女がうちの目の前に立っていたのは・・・ひっくり返りそうだった。あの女に殺されるんじゃないかって思ったわ・・・初めてあの女の顔をちゃんとみたわ」百合は俯いた。 
「・・・・・」朱理は俯く百合を見つめた。 
「あの女は私に気がついて私の顔をしげしげと見つめながら寂しそうな笑顔を浮かべていたわ・・」 
「何か話したの?」 
「・・一言ね、あの女はこう言ったわ。どんなことがあったとしても私はあの人が好きなんだと・・そう言い残して取り乱すこともなく去っていったわ。あの女をみた最初で最後だったわ・・・」 
「凄いね・・おじいちゃんの野望に命を奪われたのにそれでも好きだなんて。どうしてそんなに好きなんだろうか?何がそんなに良かったのかな?」朱理は漠然とした疑問を口にした。 
「あの人は、自殺よ!口封じに殺されただなんて嘘よ。あの女が川で遺体で見つかった時遺書があったわ。自殺に見せかけられたっていう見方もあったけれど絶対にそれはない。主人宛てのもう一つの遺書があったの。大学病院にあの人宛ての手紙を私がみたの。主人宛てに宛てに送ったものかもしれないけれど皮肉にも私がみて、あの手紙は主人は見ていないわ。封筒の中には軽井沢の別荘で桜の木の下であの人と並んで写真が入ってた。軽井沢の別荘はおじいちゃんのお父さんの別荘でもあるのよ。誰も使わない持て余した古屋敷で誰も寄り付かないことをいいことにあそこで二人は会っていて二人にとって大事な思い出が詰まった場所であることを知った。そして60年後もあの場所で待っているということもね・・」百合の表情は重苦しい顔をしていた。 
「あの別荘で女の人の泣き声を聞いた」朱理は思い出したことをつぶやいた。 
「私はあの女が財産目当てのとんでもない女だと思っていたし、あのふてぶてしい態度も全部許せなかった。あんな下劣な下品な小娘を憎んでいたけれど、あの人に命を奪われて、告発することもなくあの人をかばって死んで行った。死んでもあの人を好きだなんて頭がおかしくなりそうだった。そんな愛情がこの世にあるなんて到底、信じられなかった。自分にはない純粋さを持っていて、こんな人を初めて知ったわ。あの女に対してだんだん憎しみがこみ上げてきたわ。同情というより、あの女の気持ちが憎たらしくなってきたの。愛情を残して愛の為に身をていして死んだとなればあの人だって一生気持ちがあの女に対する罪悪感と償い、60年後ここで待っているっていく馬鹿げた約束に気持ちが縛られたまま生きてゆくなんて私だっていやよ。だんだん、あの女がキチガイに思えてきて、普通謝るわよね。謝りもしないで本当に、本当にふてぶてしく思えてきて死んだって生きたって本当に馬鹿なんじゃないかって同情から憎しみに変わった。あの女が軽井沢の別荘で過ごした日々を大事な思い出が詰まった場所ならそんな思い出は私が抹殺してやるって思ったの・・死んだって私はあの女のことを認めない。あの女の気持ちなんて死んだってろくな人間じゃないわ。死んだって好きだっていうなら死んだって認めないっていうことを示してやりたかったの」 
「おばあちゃん・・・」いつも温厚で穏やかな祖母からは想像つかない思いでもあった。壮絶な女のプライドを垣間見たような気がした。 
―死んだって好きだっていうなら死んだって認めない― 






p.s  今年は頑張りますよ!!
今年の目標は「疲れに負けない」。去年は疲れに負けてましたが、今年は人生をいい意味で変えてみたいです。積極的に頑張ります。今年はその為にも休まずに頑張ろうと思います☆仕事を休まないのではなく、それ意外のことを休みに頑張る!つまり休みがないということです!ちなみに今の恋愛小説のタイトルを英語にするか、カタカナにするか悩んでいます。