第4部 遥かなる日々 第2章 幸せのフィルム | ブログ小説 第10部 ブルー・スウェアー

1678年 場所はストックホルム


三人姉妹は仲良く牧場を手をつないで歩いている。愛くるしい瞳の姉妹は駆けっこをしている。一番上のお姉ちゃんを追いかけるジュリーは3歳。ジュリーはお姉ちゃんを追いかけながらも転んでしまう。
「お姉ちゃん!!痛いよう~」ジュリーは泣きながら一番上の姉に助けを求めた時長女、マリーナは泣いて助けを求めるジュリーに駆け寄りジュリーの手を握り起こした。
「泣いちゃ駄目よ、ほら、ほら」そういうとマリーナはジュリーの服についた草を払いのけてあげている。そんな姉妹のやりとりを父親のトーマスは微笑ましく見つめていた。
トーマスの近くに次女のミリーが駆け寄ってくる。
「パパ、ジュリーがまた甘えているよ。あの子はなんであんなにドジなの?」
トーマスはミリーを抱き上げると
「ジュリーは一番下でミリーはお姉ちゃんなんだからかわいがってあげなきゃ駄目だよ」「ミリー、ジュリーはぶりっこだと思うの。誰かの気を引きたくて気にかけてもらいたくてわざとあんな真似をしているのかって思うのよ」しっかり者のミリーが面白くなさそうにトーマスに訴えた。
「マリーナとミリーはお姉ちゃんなんだ。可愛いじゃないか。ドジでも愛嬌があるじゃないか」トーマスはすました目をしたミリーを優しく諭した。
「ミリーとマリーちゃんはしっかりしているけど、、あのコは頭が悪すぎて時々いらいらするよ。マリーちゃんは優しいけどさ、、ジュリーはいつもパパを独占するの。ずるいよ」「パパはみんなが可愛いよ。ミリーはお姉ちゃんだからもう少しジュリーの優しくしてあげてね」そういうとトーマスはミリーの頬にキスをした後、ジュリーとマリーナを見つめた。その中でもトーマスはドジな末っ子・ジュリーをただ愛しそうに見つめていた。マリーナではなくジュリーをただ見つめていた。

トーマスはスウェーデンの港町・ストックホルムの建築士で裕福な家庭だった。妻のアンジェリーは10年前にアンジェリーの美貌と優しさに惹かれて熱烈な恋愛を経て結婚した。当時アンジェリーには婚約者がいた。アンジェリーに運命を感じ半ば半分略奪する形で結婚をした。理知的で知性にあふれていたアンジュリーは申し分のない妻だった。そうアンジェリーは賢母だった。ほんのわずかでも計画や計算が狂うことを嫌う完璧主義なトーマスに尽くし子育てもよく抜かりない愛情と優しさと厳しさで接するアンジュリーをトーマスは誇りに思っていた。またアンジュリーは婚約者がいたにも関わらずトーマスを選んだ理由は将来有望な設計士だったからだと思うとアンジュリーは自分は打算的な人間だと時々思う時があったがそれでも3人の子供に恵まれ幸せだった。美人で知性にあふれた妻に地元でも有名は建築士の旦那に、、英才教育をほどこししっかりものの娘、、上流階級に何の不自由がなかったが完璧な家庭なはずなのにアンジュリーにはどうしても理解できないことがあった。末っ子・ミリーがあまりに頭の回転が遅いのである。どんなに怒ってもわかってないことが多く、上のお姉ちゃんは1話すと10のことを理解するのに、、3番目のジュリーだけが何度言ってもわかってくれない。時々、一人ごとを話したりしていたり虫を手でつかんではみんなをびっくりさせたり、いろんな物に足をひっかけては転んでいろんな物を壊していたり、怒っても反省の色がないし、いつもぼっーとしているし、いつも何か別のところをみているし、完璧なアンジュリーは苛立ちを隠せなかった。そんなアンジュリーや娘たちをなだめながらこの上なく愛情を注いでいたのがトーマスだった。時々アンジュリーはトーマスがわからなくなる時があった。完璧を求めて娘にもちゃんとした完璧な上の二人の娘に育てるよう厳しいパパなのにこの末っ子には完璧を求めない、どんなことも笑って許し、目に入れても痛くないと言った位にこの上なく可愛がるのはどうしてなのか。相性がいいからなのだ、と割り切ってきたが、、、アンジュリーは末っ子のジュリーが今一つ好きになれなかった。その理由が口に出しては他人には言えないがトーマスのジュリーに対する目が愛情なのか愛なのかわからないほど愛おしさに満ちていた。3歳の娘に嫉妬するなんて情けないと思いながらどう考えても私より他の娘よりひょっとしたら私への愛より深い愛を持っているような気がした。時々、いいようもない胸のざわめきに襲われる時があった。この広がってくいびつな感情は何なのか。 その言いしれぬ思いがアンジュリーが不安に陥れた。
アンジュリーは夕飯の支度をしながら夕日を頬にあびながら子供達と牧場に遊びに行ったトーマスの帰りを待っていた。
トン、トン、トン  ネギを刻みながらふと思う。
(あなたは繊細で完璧な人間でそんな完璧さを愛する人一倍プライドが高くて計算が狂うことを嫌うあなたがあのジュリーを依怙贔屓するように愛するのかしら。他の娘より愛するの?あのジュリーを戸棚が落ちてきた時あなたは命がけで守ったわね。 私が馬車にひかれそうになった時は助けてくれなかったクセに・・・・)


                                                     つづく、、