第3部 理想の愛  第1章 悲しいほど雨の中で | ブログ小説 第10部 ブルー・スウェアー

千広があてもなく歩いていると見慣れたいつもの渋谷の街並みが広がっている。広島にいたころあれほど恋焦がれていた渋谷の街並みも今では何でもない変わり映えのない街並みでしかない。

歩道橋を歩いていると夕陽が視界を霞める。

歩道橋の上から街並みを頬づえをつきながら千広は見つめた。

疎らに流れてく車の流れを千広は無心に眺めている。

上京して3年の時が変えたものはすさんだみじめな自分の姿だった。

ありのままの自分は虚しさにあふれている、今となっては。

<私の夢は死んだ>

家を飛び出してきたときの母親の由利江の寂しそうな顔がフラッシュバックする。何か言いたげな顔だった。そんな母親をつっけんどんに突き放すように家を離れ東京へ来た。

何でもないあの日を思い出し訳もなく後悔がよぎる。

千広の後ろを女子高生二人が笑いながら通りすぎていく。

<お母さん・・・・・ごめんね>千広は心の中で呟いた。

「ごめんなさい」夕闇に千広は呟いた。


                                  つづく、、