第3部 理想の愛  第1章 悲しいほど雨の中で | ブログ小説 第10部 ブルー・スウェアー
雲一つない空の下、千広は学校のキャンパスをゆっくり歩いた、おしゃれに着飾った学生達は楽しそうに思い思い戯れている。
千広は仲間からはぐれた子供のようにそんなありふれた光景を見つめている。
浪人生活を脱却して上京し、この学校の門をくぐった頃は希望にあふれていた。東京という大都会に思い思いの夢を馳せていた。新幹線で東京駅についた時のあふれるときめきはいつしか消えてしまっていた。
<東京ー、東京ー >
新幹線の汽笛がよみがえり心をかきむしる。ここから人生が始まるって心躍っていたあの日からもう3年が経ってしまった。目の前の学生達は思い思いに学生生活をエンジョイしている。どうしてそんなにまっすぐな気持ちでいられるのだろうか?自分でどこで道を誤ったのだろうか?それともまだ引き返せるのだろうか?気がついたら学校の入り口に来ていた。吹き抜けのホールに入るとテーブルには学生達が楽しそうにランチをとっている、この学校にはさして思い出はないが今日が最後になるかもしれないと思うと何でもない一つ一つの光景が愛おしかった。
 千広は教務課の窓ガラスを軽く叩くと顔見知りの女性事務員が窓ガラスを開けた
「どうしました?」事務的に聞く女性事務員。
千広は鞄から一通の封筒を差し出した。
<退学届け>
それを見るなり女性事務員はキョトンとした顔で千広を見つめた。
「えぇーやめちゃうの?確かあなた3年生よね?」
「・・・・・・」
「もったいないわよ。高い学校なんだから。卒業まで頑張りなさいよ」諭すように励ます女性事務員。
千広はクビを横に振った。
「どうして?」
「・・・・・」
「後悔しないの?」
「・・・・・・はい」小さく千広は頷いた。
「そう・・・・あなたの自由だけど」差し出した封筒を開封する女性事務員。
「本当に後悔しないの?一生後悔はつきまとうわよ」
「・・・・・・・ありがとうございました」
軽く会釈をすると千広は外に出た。外に出ると強い直射日光が眩しく照らす。
(もう戻れない・・・)
千広は思いを断ち切るかのように小走りに学校の門を後にした。
                  つづく、、