「ここまで来るまで迷ったでしょ」吉永はコーヒーに砂糖を入れながらめぐ未に聞いた。
「途中で道を聞いてわかりました」どこか空虚な視線のめぐ未。
「わざわざ足を運んでもらえるなんて光栄です」微笑む吉永。
めぐ未は言葉を探していた。言葉を噛み砕きながら暗くならないよう努めて明るく言った。
「昨日、バイクで後ろから鞄をひったくられそうになったんです」
「えっ!?」
「鞄を引っ張られて振り向き様に睨まれて手を離してしまったらバランスを崩して相手の人が転倒したの」悪夢が甦る。
「マジですか?」
「転倒したらもう凄いうめき声をあげて肘や顔から血を流していて慌てて救急車を呼ぼうとしたらタクシーを呼んでくれって。結局何処に向かったかはわからないけど、、何だか私が加害者になったようで辛い、、トウ、、、、チンテツっていう中国人だったけど。何か得体の知れない闇が襲いかかって来てるような、、何だか怖いわ」
「おそらく病院に行けない程、いっぱい悪さをしているんですよ。密入者かもしれない」
「あの人も同じようなこと言ってた」
「あの人・・・・」
「ううん」めぐ未は慌てて頭をふった。まさかテレクラなんて言えない。
「信じてくれないかもしれないけどあのバイクの男、ただの物取りではない気がするの。何となく。。だって振り向いた時のあの視線が・・・・・・とっても怖かったの。何かを憎んでいるような・・」
僕の人生なんてトライアングルなんだ。。。。顔を知らないあいつの言葉が胸の中で木霊した。
つづく、、