素人短編小説
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ネコの島

 最近、物置として使っている自宅車庫の二階を掃除していたところ、なにやら稚拙な童話のような短編を見つけました。B5版の厚手の紙に縦書きで綴られていたのですが、どうやら若い頃(推定三十歳前半)の私の字に間違いないようです。太めのHB鉛筆に懐かしささえ感じます。

 

 と、いうことで、このブログの更新もままならないまま迎えようとしている2024年の年末…手にした雑文を手に、ざっと目を通して一人にやりと口元を歪めたのは当然のことでした。そうです。私、これ幸いとばかりに急いで自宅へ戻り、気がつくと古い紙を見ながら一生懸命キーボードをたたいていたわけでありまして…。

 

 …にしても、私は、なぜこのとき、このような童話みたいな創作を試みてみたのでしょう。さっぱり心あたりがありません。書かれてあるこの古い紙の裏を見ると、幼い時分の娘が拙い漫画じみた女性の絵を途中まで描いています。どうやらこの絵は未完成のまま放置されていて、父親たる私がその紙を数葉つかみ、自宅で書いてみたように推測されます。

 

 ん?もしかして、私はこの創り話を初めて授かった我が子に読ませようとしたか、あるいは読んで聞かせたのでしょうか。

 今の時刻、午後四時二十分であります。今日は仕事も休みで、もうじき買い物から帰ってくるはずの娘に尋ねてみようかとも思います。そう、夕食時、毎日一缶だけ口にするハイボールの栓を空け、うっすらと頬を染め、機嫌の良さげな頃合いを見計らって。

 

 では、以下原文のまま。

 

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 大きな海のまん中ほどに、ネコの島がありました。ネコの島というくらいですから、そこにはネコしかすんでいませんでした。でも、学校も、交番も、病院も、デパートも、レストランもなんだってありました。

 

 ここの島で一番エライ人、いやネコは、ネコ大臣(だいじん)で、まっ白な毛に、首のまわりには金色のネックレスのような毛がはえていました。

 

 そんなある日、ネコの島のニャンニャン海岸にどこから流されてきたのか、おもちゃのラッパがすな浜にうち上げられていました。

 

 ラッパは、銀色で、まだピカピカです。でもネコの島のネコたちは、こんなもの見たこともさわったこともありません。ですからネコの島のネコたちは大さわぎです。

 

 「いったいこれはなんだろう」

 「水をのむ道具(どうぐ)じゃないか?」

 「いや、中に宝ものでも入っているんだろう」

 「このあなからのぞいてみるんだよ」

 

 「なにを言ってるんだ!これはきっと神さまがこの島で一番エライネコ、そ う、ネコ大臣さまにプレゼントしたくんしょうにちがいない!」こんなにピカピカ光っているんだもの。さあ、これをみんなでネコ大臣さまにとどけよう!」

 

 ネコたちはみんなで銀色に光るおもちゃのラッパを、ネコ大臣にもっていき、これを頭にのせるよう言いました。

 

 ネコ大臣は大よろこびでおもちゃのラッパを頭にのせました。

 でも、すぐに落ちてしまいます。何回頭にのせてもコロリ!コロリ!と落ちてしまいます。何十回、いいえ、何百回やってもおもちゃのラッパは、ネコ大臣の頭にのってくれません。

 

 とうとうネコ大臣はおこりだしてしまいました。

 

 そして…「なんだ、こんなもの!」と、おもちゃのラッパを床(ゆか)にたたきつけると、おもちゃのラッパは、はねかえってネコ大臣の口にスポッ!と入ってしまいました。

 

 息ができず、おどろいたネコ大臣は、ゲホ、ゲホ!

 すると「プップックプー」。

 

 ネコの島のネコたちはこの音にビックリ!もちろんネコ大臣もビックリ!でも、まだおもちゃのラッパは、ネコ大臣の口の中。

 

 「プップックプー、プップックプー」。

 

 やっとの思いでラッパが口からとれました。

 

 そして、ネコ大臣は言いました。

 

 「いやいや、おどろいた。どうやらこれは、くんしょうなどではないようだ。きっとこれは,この島のネコたちみんなに、いつまでもなかよくくらしていくよう、神さまがお話ししているにちがいない。このプップックプーという音こそ神さまの言葉なのだ!」

 

 これを聞いていたネコの島のネコたちも感心したようにうなずいています。

 

 それからというもの、この、どこからか流れついた銀色のおもちゃのラッパは、ネコの島のネコたちの大切な、大切な宝ものとなり、年に一度のネコの島のおまつりのとき、ネコ大臣がおもちゃのラッパを口に、プップックプーとならすようになりました。

 

                      おしまい。

 

 

 

 

酷暑の風景・・「占拠闘争前夜」のあとがきから

 私、連載小説を完結させた際に、僭越ながらあとがき(テーマは「ひとこと」です)を書いており、中盤の作品あたりからその前文としてショートショートを載せております。

 昨年、そのショートショートを遡って読んでみましたら、私的にそこそこ興味深いモノもありましたので、切り抜いて再掲載してみようと思い立ち、すでに何編か独立のテーマで再掲載しております…アップ数も増えますし(笑)

クックックッ…よろしければどうぞ。(前作から複写)

 

追記:このたびは、なんと言いましても、私的な事情でだいぶアップを怠けて おりましたので、その後ろめたさも手伝い、またなんか駄作を書いたりしております。というわけで、これは時間稼ぎの意味での掲載でございます(苦笑)

 

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 酷暑の毎日が続いていた。常軌を逸しているとしか表現しようがないギラギラした太陽が今日も真っ青な空に居座り、街全体を炙り出している。こんな日が一ヶ月も連続している夏真っ盛りの白昼。

 

 どこでどんな非常識があってもなんらの不思議もないし、果たしてそれは、誰に責任があるとかどうとかなどといった問題ではないと思う。

 

 現に、僕が歩いているこの細いでこぼこした継ぎ接ぎだらけのアスファルト道。道の中央には雪国にしか見られない消雪パイプの古く寂れた路面の盛り上がりが続いている。

 

 ここを通るたびになんと醜い道路かと常々湧き上がる嫌悪の気持ちを何とか抑えながら正面の遠くに視線を送り歩いているのだが、この日の凶器にも似た太陽の情け容赦ない照りつけに、良識によって制御されるはずの辛抱が機能不全を起こしている。

 

 耐えきれず、僕は小汚い板塀に右手をかけて我が身を支え、できるだけゆっくりとしゃがみ込み、細く乾いた側溝にゲホゲホと嗚咽しながら嘔吐した。

 

 肩を揺さぶりながら吐き終わり、その吐しゃ物を見ると黄色く泡立った少量の液体で固形物はない。胃液らしかった。

 

 そういえば、昨夜は食欲がなく十数本の素麺を口にしただけで布団に横たわったものの暑苦しさに熟睡できず、今朝も寝不足のまま水すら腹に入れず出社したのだった。

 

 今は朝一番に訪問を約束していた取引先での短いプレゼンを終えて会社に戻る途中の帰り道だ。

 

 あともう四、五百メートルも歩けば駅に着くだろう。早く電車に乗り込みたかった。近頃の電車内は比較的エアコンの冷気が低めに設定されているのかもしれない。時には口では表現できないほどの快適さを感じる。

 

 もうすぐだ。

 乗車する直前、キンキンに冷えたお気に入りの果物ジュースを買い、車内の冷房に包まれながらそれを一気に飲み干すことにしよう。そうすれば失われていた英気も少しは戻るだろう。午後からもスケジュールが詰まっている。

 

 改札を抜け、ホームに降り、いつも利用している清涼飲料水の自販機に向かったが、あいにく三、四人が並んでいる。

 

 どうやら先頭の爺さんが、紙幣口にお札が入らず戸惑っているらしい。誰も助けようとしない。僕は近づいて手伝いを申し出、爺さんの千円札を借り、望みの炭酸飲料を買ってあげた。

もちろん、釣銭と一緒に。

 

 そしてその後、自販機に並んでいる列の後ろに戻ろうとしたそのときだった・・僕は、何人かの暴漢に後ろから羽交い絞めされ、プラットホームに組み伏せられた。

 

「うわっ、痛てえ、このクソ野郎なにしやがんだ!離しやがれ!」

 

「抵抗しないでください!ほかの利用者さんの迷惑になります!大人しくしてください!さあ、冷静になって!」

 

「うわあっ!痛い!大変です、気をつけてください!この人、なんか凶器のようなモノを持っています!さ、刺されました・・」

 

「ぐるる・・ざまあ見やがれ!護身用の〇〇よ。俺に何かしやがるヤツは滅多刺しにしてやる!とにかく俺の上から早くどきやがれ!ぐるるる・・」

 

「警察が到着しました!!みんな、こいつが身動きできないよう強く抑えて!」

 

「警察だとう!一体おれが何したってんだ!クソじじいがもたもたしてやがるから、二、三発ぶちかました後、言うことを聞かねえくされ自販機を消火器でぶち壊して中からジュースを買っただけじゃねえか。金もちょうど百三十円思いっきり投げつけて払ってやったろうが!」

 

「なに、二人を傷つけたああ?あたりめえだろう、おれがジュースを買うのを邪魔しようとしやがったんだから!とにかく、おれを放せ!放しやがれ!ぶっ殺すぞ!」

 

「はい、立って!ほら立つんだ!器物破損、人身傷害の現行犯で逮捕する。ほら、一緒に来るんだ!」

 

「ぐるるる・・なんだ、なんだ?断りもなく人に手錠なんかかけやがって!おれは、ただ一刻も早く冷たいジュースをクーラーの効いた電車の中で飲もうとしただけじゃねえか!それのどこが・・一体どこが・・」

相互協力協定・・「軽トラ(・)りあがらす」のあとがきから

 私、連載小説を完結させた際に、僭越ながらあとがき(テーマは「ひとこと」です)を書いているわけですが、45作目あたりからその前文としてショートショートを載せております。

 昨年、そのショートショートを遡って読んでみましたら、私的にそこそこ興味深いモノもありましたので、切り抜いて再掲載してみようと思い立ち、すでに何編か独立のテーマで再掲載しております…アップ数も増えますし(笑)

クックックッ…よろしければどうぞ。(前作から複写)

 

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 新聞の地元話題欄にちょくちょく目を通す。

 

 これがなかなか面白い。ひやかし半分で編集している週刊誌もそこそこ興味を惹くが、やはり新聞の方が、洒落っ気がない分だけ面白さでは優っているように思う。


 数ある新聞記事のなかでも、おれのお気に入りの一つは、自治体と何処かとの協力協定を結ぶってヤツだ。

 

 地域のまちおこしや商店街活性化、観光施策の推進といった協定なら少しは納得するが、介護福祉施設を経営している社福法人なんかを相手に指名し、緊急時に要援護者を収容するてな協定ぐらいは軽い方で、こと災害時の相互協力を約束する協定を地元警察署と結んだというのを読んだ折にはさすがに失笑を禁じ得なかったし感心もした。

 

 きっとごく近いうちに、火災時の鎮火出動に関する協定を地元の消防署と結ぶとか、公立総合病院と治療・入院に関する協定を結ぶんじゃあないかと心待ちしているところだ。


 さて、不真面目に茶化してしまった後で、こんなことを切り出すのもなんだが・・・なんでもアリなら、我々だって人間界と協定を結んでもいいんじゃないかと真剣に考えている。

 

 国とか自治体とか、そんな大それた単位を考えているんじゃない。

 

 まあ、個人、個人とはあんまりだし、効果も少ないように思えるから、小さな規模の地域住民とか、ある程度の人数を揃えた有志諸君とか・・・そういった方々を想定しているところだ。


 時代が進めば、我々も人間界と永く界を接してきたわけだから、大歓迎というわけでもないだろうが、理由を話せばそこそこわかってもらえるんじゃないだろうか。


 協定の趣旨は、たった一つだ。互いの環境に関して少々の配慮を持ち、四六時中、のべつ幕なしに干渉し合うことをやめていきましょうということだ。

 

 これは決して、人間界からの一方的な行為を批判しているのではない。我々の近年における行動についても反省し、執拗で疎ましく嫌われるような演出とならぬよう深く自戒し、平成初期までのような“共存”をめざすことを約するというものなのだが・・・どうだろう。


 あ、いや・・・まだ機が熟していないと言われればそれまでだが・・・。

 う~ん、もう少し慎重になるべきだろうか?

 

                                      -了-

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