会計制度には「のれん」という勘定科目があります。企業買収や合併の場合などの際に発生するもので、「買収された企業の時価評価額」と「買収価額」との差額を「のれん勘定」で処理するものです。プレミアムの上乗せ価格みたいなイメージですね。

 

 『ウィキペディア(Wikipedia)』から引用すると、

☞暖簾は元々店先にかかる布であり、それ自体の物質的な価値はないが、顧客への知名度や品質などブランド価値を示す象徴である。こうした無形のものに対して投資することから、実際の金銭的価値に上乗せして評価するプレミアムの分を指すようになった。☞

 

 上記引用部分に「無形なものに対して投資」とある通り、企業価値には無形の価値というものが存在するのです。それが「のれん」という概念なのです。

 

 それでは、この「のれん」がなぜ存在するのかということについても、同じく『ウィキペディア(Wikipedia)』から引用すると、

☞継続企業は企業活動が長く継続することそれ自体により、単なる資産の寄せ集めよりも大きな、無形の価値(超過収益力。信用、ブランドイメージなど)を育てている場合が多いからである。☞

 

と、明解に説明しています。

 

 今回はこの「無形の価値」、言い換えれば『見えざる資産』についてのお話です。

 

 では、簡単な算式からご紹介しましょう。

 

 ここに、同じ店構えの2軒のラーメン店があります。片方は毎営業日には行列ができるほどの繁盛店です。そしてもう一方は、毎日閑古鳥が鳴くラーメン店だとします。

 では、この「流行っているラーメン店」から「流行っていないラーメン店」を差引くと、一体何が残るでしょうか?

 

 この算式で求められる解が「収益力の差」として現れるものです。例えてあげると、以下のようなものが考えられます。これらは、わが国経産省において「知的資産」と称されるものです。

 

もう少し具体的には、

 

・仕入先や協力会社などのつながりの違いや共同研究先の有無

・顧客とのつながりや信頼度の差

・駅からの距離などの顧客の利便性に関するものの差

・社長(店長)の知名度や人脈、カリスマ性などの差

・熟練社員のノウハウや技術力の差

・アフターフォロー体制の差

・商品開発力(研究開発体制)の差

・ビジネスモデルの差

 

などが、上げられます。

 

 見方を変えれば、同じ店舗や調理器具を使っていたとしても、実際に収益を生み出しているものの正体は、もしかすると有形資産ではなく、無形資産だということかもしれません。

 

 どれ程優れた有形の資産が会社の貸借対照表に計上されていたとしても、ビジネスの価値や収益力は、その貸借対照表の下に隠れた無形の資産が右まだしている可能性が高いのです。

 

 企業経営とは、単なる資産の寄せ集めを図ることではなく、財務諸表には表れない資産、「見えざる資産」を育てはぐくむことも重要なのではないでしょうか。

 

 今回は「貢献利益」というちょっと聞きなれない会計用語を使った話です。

 

 このブログでは過去「限界利益」について書いたものがありますが、管理会計では、「限界利益」と「貢献利益」とは同じもの、として扱う場合と、別なものとして取り扱う場合とがあります。

 今回は、後者の別なものとして取り扱う説に倣って話を進めたいと思います。

 

 ここにひとつの損益計算書を紹介します。このような形式の損益計算書を「貢献利益方式」と呼びます。

 一般的な財務諸表しての損益計算書との大きな違いは、経費を変動費と固定費とに大きく分け、さらに固定費を個別固定費と共通固定費に分けて計算している点です。このような構造の損益計算書を作ると何に役立つのかを考えていきたいと思います。

 

 ※変動費とは、売上高の変化に応じて変化する経費(例えば仕入高)であり、固定費とは売上高の変化に関係なく固定的に必要となる経費を言います。また、個別固定費はその製品や商品に直接に関係する固定費であり、共通固定費とは例えば本社費など、全ての製品や商品に共通して要する固定費です。

 

 まず、売上高からそれぞれ変動費を控除したものを「限界利益」と言います。

     「限界利益」=売上高-変動費

 「限界利益」からその商品に直接かかわる固定費(=個別固定費)を差引いたものを「貢献利益」と言います。

    「貢献利益」=限界利益-個別固定費

 

 ※「貢献利益」がマイナスとなる場合は、何の改善もなくその商品を販売(もしくは製造)し続けると赤字が膨らむという結果になることを表します。「貢献利益」>0がその商品を取り扱うことの絶対的な条件となります。

 

さらに、「限界利益」をそれぞれの売上高で割って得られたものが「限界利益率」と言います。

     「限界利益率」=限界利益÷売上高

 

 商品A..Cそれぞれの「限界利益率」を求めたものを以下に示します。

 「限界利益率」とは、売上高1単位が変化した場合に変化する利益の率であるということですので、限界利益率の一番高い商品Cの取扱い量を増やすことで合計利益額が最大になると言えます。

 

 試しに、合計売上高が同じと仮定して、商品Aと商品Cの売上高を入れ替えて見ると、得られる利益額は以下のように大きく変化します。

 ※固定費は変化しないものとして取り扱っています。

 ただ単に売上高が増えれば、利益は獲得できるとする考え方(=売上至上主義)にだけ陥っている経営者を多く見かけます。取り扱う商品(製品)の構成を変えるだけで、利益額を合理的に変化させることができるということで、利益の最大化を実現することもできるのです。

 

 別の言い方をすると『売れる商品』ではなくて『売らなければならない商品』を見つけ出すことが大切なわけでして、どの商品が一番利益に貢献しているのかを見つけ出すことがこの分析のミソとなるのです。

 

 会社で生産や販売されている諸製品の構成や組み合わせのことを『プロダクトミックス』と呼びます。利益の最大化を目指す企業にとってこのプロダクトミックスの効率化は最強の武器となります。

 

 このプロダクトミックスの効率化は大企業に比して、中小零細企業の方がはるかにやりやすくて、効果がはっきりと表れやすいと言われています。

 

 今回のまとめは、取り扱いの商品(製品)の中で一番利益貢献の高いものを見つけ出し、そこに集中することにより利益を最大化させることができるということ。

 

 よく、中小企業の生き残り前略は「選択と集中」だと言われますが、ここのところを少しは真剣に考えてみてもよいのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 日本を代表する実業家の一人、松下幸之助氏のエピソードから.....

 

 我が国経済が順風満帆、世界で快進撃を続けていた昭和50年代、その事実とは裏腹に日本の「国家百年の計」を憂いた松下幸之助氏は、『これからの日本には良い政治家が必要だ』と考え、有名な“松下政経塾”を開塾しました。

 

松下幸之助氏が塾生に最初に語ったとされる言葉が、「まず、自分の身のまわりをしっかり掃除しなさい、整理整頓しなさい。自分の身のまわりを美しくすることができない人間に政治という大きなことは絶対にできない。」「簡単なことの出来ない人間に決して難しいことはできない」ということだそうです。松下幸之助氏のこのような語りに、中にはがっかりした塾生もいたそうです。

 

また、松下幸之助氏はいつもこのようなことを言っていたそうです。

「伸びる会社は、訪問すればすぐ分かる」

「いらっしゃいませ、おはようございますという爽やかな挨拶が返ってくる会社」

「事務所や工場がキッチリと整理整頓されている会社」

「トイレの掃除がゆきとどいている会社」

「この三つの事が出来ている会社は間違いなく伸びる」

「逆に、これらが出来ていない会社は、今、ある程度の業績であっても、必ず駄目になる」

 

 話は変わりますが、このような言葉があるのをご存じでしょうか?

 

凡事徹底(ぼんじてってい)――――「何でもない平凡なことをしっかりとやる」という意味です。

 イエローハットの創業者、鍵山秀三郎(かぎやま ひでさぶろう)氏の言葉です。鍵山氏は同名の著書の中でこのように言っておられます。

 

『もともと仕事というのは、単純で単調です。退屈で、見栄えのしない、やりがいのないものだと思います。ところが、それに耐えられなくて、もっと派手な、やればすぐに成果につながる、すぐに儲かる、あるいは、人にすぐ認められ、すぐに評価されることをやりたくてしょうがなくて、結果的には一つもいい評価につながらないという人が多いのです。』

 

『私は単純なこと、単調なことをおろそかにしない。それを極めていくという考え方でやってきました。 やれば誰にでも簡単にできることを徹底して、その中で差をつけるという考え方です。』

 

 誰にもできないことをやれる人を「専門家」と呼びます。しかし凡人にはそのような芸当はできません。凡人が他人と差をつけることができるとすれば、それは誰もができることを徹底してやることだと鍵山氏は著書の中で言っています。

 

 たとえば、AをBに替えるとします。多くは「AをBにしたところで大差はないじゃないか」として面倒くさがります。しかし、少しでもそこに差があれば、それを徹底して行うこと、僅差(微差)を集めて絶対的大差を作るのです。

 

 ですから、私たちのような凡人がビジネスの世界で他社との差別化を考える場合には、誰にでもできるようなことだけれど、自分の強みに手間をかけ磨き上げることだと言えます。

 「そんなことやっても仕方ないよ」と思われることでも徹底することなのではないでしょうか。

 

 例を上げると、様々な仕事でも、なんとなく、だらだらと、まんべんなくやるのではなく、意図をもって、時間を区切って、(区域や商品、仕事の種類など)範囲を絞ってやると、自ずと結果が違ってくるのではないのでしょうか。その徹底こそが差別化に繋がるのだと思います。

 

 イチロー選手もこう言っています。

『小さいことを重ねることが、とんでもない所に行くただひとつの道.