今回は「貢献利益」というちょっと聞きなれない会計用語を使った話です。
このブログでは過去「限界利益」について書いたものがありますが、管理会計では、「限界利益」と「貢献利益」とは同じもの、として扱う場合と、別なものとして取り扱う場合とがあります。
今回は、後者の別なものとして取り扱う説に倣って話を進めたいと思います。
ここにひとつの損益計算書を紹介します。このような形式の損益計算書を「貢献利益方式」と呼びます。
一般的な財務諸表しての損益計算書との大きな違いは、経費を変動費と固定費とに大きく分け、さらに固定費を個別固定費と共通固定費に分けて計算している点です。このような構造の損益計算書を作ると何に役立つのかを考えていきたいと思います。
※変動費とは、売上高の変化に応じて変化する経費(例えば仕入高)であり、固定費とは売上高の変化に関係なく固定的に必要となる経費を言います。また、個別固定費はその製品や商品に直接に関係する固定費であり、共通固定費とは例えば本社費など、全ての製品や商品に共通して要する固定費です。
まず、売上高からそれぞれ変動費を控除したものを「限界利益」と言います。
「限界利益」=売上高-変動費
「限界利益」からその商品に直接かかわる固定費(=個別固定費)を差引いたものを「貢献利益」と言います。
「貢献利益」=限界利益-個別固定費
※「貢献利益」がマイナスとなる場合は、何の改善もなくその商品を販売(もしくは製造)し続けると赤字が膨らむという結果になることを表します。「貢献利益」>0がその商品を取り扱うことの絶対的な条件となります。
さらに、「限界利益」をそれぞれの売上高で割って得られたものが「限界利益率」と言います。
「限界利益率」=限界利益÷売上高
商品A.B.Cそれぞれの「限界利益率」を求めたものを以下に示します。
「限界利益率」とは、売上高1単位が変化した場合に変化する利益の率であるということですので、限界利益率の一番高い商品Cの取扱い量を増やすことで合計利益額が最大になると言えます。
試しに、合計売上高が同じと仮定して、商品Aと商品Cの売上高を入れ替えて見ると、得られる利益額は以下のように大きく変化します。
※固定費は変化しないものとして取り扱っています。
ただ単に売上高が増えれば、利益は獲得できるとする考え方(=売上至上主義)にだけ陥っている経営者を多く見かけます。取り扱う商品(製品)の構成を変えるだけで、利益額を合理的に変化させることができるということで、利益の最大化を実現することもできるのです。
別の言い方をすると『売れる商品』ではなくて『売らなければならない商品』を見つけ出すことが大切なわけでして、どの商品が一番利益に貢献しているのかを見つけ出すことがこの分析のミソとなるのです。
会社で生産や販売されている諸製品の構成や組み合わせのことを『プロダクトミックス』と呼びます。利益の最大化を目指す企業にとってこのプロダクトミックスの効率化は最強の武器となります。
このプロダクトミックスの効率化は大企業に比して、中小零細企業の方がはるかにやりやすくて、効果がはっきりと表れやすいと言われています。
今回のまとめは、取り扱いの商品(製品)の中で一番利益貢献の高いものを見つけ出し、そこに集中することにより利益を最大化させることができるということ。
よく、中小企業の生き残り前略は「選択と集中」だと言われますが、ここのところを少しは真剣に考えてみてもよいのではないでしょうか。