リビア東部で、大洪水でダムが決壊して少なくとも1万3千人が死亡したとリビア赤新月社は発表したが、死者は約4000人、行方不明は約9000人とWHO。内乱が続いて分裂状態のリビアでは政府はほとんど機能しておらず、正確な人数は把握できていないだろう。地中海に流された人が多数いるとされ、死者と行方不明者の合計が1万人以上になる大災害であったことだけは確かだ。
報道によると、決壊した二つのダムは貯水よりもデルナを洪水から守ることを目的に建設されたが、1998年時点で亀裂の存在が確認され、2007年になって当時のカダフィ政権はトルコ企業に補修を依頼したが、費用の支払いを巡る交渉などで工事は始まらず、その後、内戦が始まり、亀裂が入ったダムは放置されたままだった。ダムが補修されていれば大災害を防ぐことができたかどうかは不明だが、生存や生活を脅かす危険性があるのに放置されたままの状況で、人々にできることは移住することだけだ。
問題は、生存や生活を脅かす危険性の存在を人々が知らなかったとすれば、そうした危険性に人々は無力だ。知っていたとしても、現実的な脅威と認識せず、政府が適切に対応するはずだなどと傍観していると、亀裂が入ったダムの下流で生活していた人々と同様の被災者になりかねない。
最近、人々の生存や生活を脅かす危険として世界的に強調されているのは温暖化(気候変動)だ。日本ではこの夏、猛暑となり、気象庁は「夏の日本の平均地上気温はこれまで最も高かった2010年を上回り、1898年の統計開始以来、1位の高温となる見込み」とし、異常気象だとした(「30年に1回以下で発生する現象」を気象庁は異常気象としている)。連日の猛暑にうんざりした人々は「異常気象じゃ仕方がない」と納得したのかな。
「こまめに水分をとりましょう」などとメディアは呼びかけるが、全国で熱中症により救急搬送される人数は過去最多に迫る勢いだという。大半は軽症だが、重症者や死者も出ている。今年の猛暑はエルニーニョ現象が続いたことと偏西風が北に蛇行したことの影響が大きいと気象庁は説明したが、仮に温暖化が今年の猛暑の重要な一因だとすると、温暖化の進行に歯止めはかかっていないので、来年以降も猛暑となる可能性は高いだろう。
温暖化が人々の生存や生活を脅かす現実的な脅威だとしても、温暖化の進行を阻止する現実的な対応は乏しい。EVをこれから世界的に増やしてみたってCO2の削減効果が現れるまでに相当の日時を要し、温暖化の進行をどれだけ阻止できるか不明だ。つまり、温暖化論が正しいとすると、日本でも世界でも人々はこれから毎年のように猛暑に直面する。
温暖化という生存や生活を脅かす危険に各国政府とも手をこまねいているので、人々にできることは、少しでも猛暑の影響が少ないところに移住することだ。首都圏には直下地震という人々の生存や生活を脅かす別の危険も指摘され、住み続けるリスクは顕在化している。温暖化対策として首都圏などから地方への移住を大々的に促すことぐらいが政府にできることだろうが、動きは見えない。「亀裂が入ったダム」が放置されたままなのはリビアだけではなさそうだ。