こんにちは。血液内科スタッフKです。
今回はLancet Haematologyから、悪性リンパ腫に対して自家造血幹細胞移植後の患者さんにおいて二次性原発がんの発生頻度を一般集団と比較した後方視的解析をご紹介いたします。
Trab T and Baech J et al, Lancet Haematol 2023, doi: 10.1016/S2352-3026(23)00212-0
【背景】
二次性原発がん(SPM)は化学療法後の合併症として知られているが、高用量化学療法および自家造血幹細胞移植(HSCT)によって治療された悪性リンパ腫患者における危険性は充分には明らかにされていない。本研究では、この患者群におけるSPM罹患の割合を、一般集団より個々人をマッチさせたものと比較して調査することを目的とした。
【方法】
今回の後方視的な集団ベースのコホート研究において、デンマークの悪性リンパ腫レジストリから、デンマークで2001年1月1日から2017年12月31日の間に高用量化学療法および自家HSCTを受けた18歳以上のアグレッシブリンパ腫患者と、対照群としてデンマークの市民登録システムから生年と性別をマッチさせた一般集団(1:5の割合)が組み入れられた。患者は自家HSCTを行った日が登録されていれば適格とされ、原発性中枢神経系リンパ腫は除外された。患者および対照群共通の除外基準は、HIV感染、臓器移植、組み入れ前のその他の悪性疾患である。
主要評価項目は全試験参加者で評価されたSPMの頻度である。最初に悪性リンパ腫と診断されてからフォローアップされ、高用量化学療法と自家HSCTが時間依存性の曝露因子となる患者における、治療がSPMに影響した効果についても調査された。
【結果】
評価されたリンパ腫患者910人のうち、803人が組み入れられた(537人[67%]が男性、266人[33%]が女性)。マッチさせた対照群として4015人が組み入れられた(2685人[67%]が男性、1330人[33%]が女性)。人種のデータは利用できなかった。フォローアップ期間中央値は7.76年である(四分位範囲 4.77-11.73)。SPMの割合は、高用量化学療法と自家HSCTを受けた患者が、マッチさせた対照群と比較して高かった(修正ハザード比[HR] 2.35、95% CI 1.93-2.87、p<0.0001)。高用量化学療法と自家HSCTを受けた患者では対照群と比較して非メラノーマ皮膚がんの頻度が高く(2.94、2.10-4.11、p<0.0001)、骨髄異形成症候群もしくは急性骨髄性白血病(AML)も同様であった(AML;41.13、15.77-107.30、p<0.0001)。しかし、固形がんの割合には有意差はなかった(1.21、0.89-1.64、p=0.24)。10年時点でのSPM累積発生率は患者群で20%(95% CI 17-23)に対し、対照群は14%(13-15)であった。高用量化学療法と自家HSCTは、初回リンパ腫診断からの時間依存性の曝露因子として解析された場合においてSPMリスク増加と関連した(修正HR 1.58、95% CI 1.14-2.17、p=0.0054)。
【解釈】
悪性リンパ腫に対して治療された患者において、高用量化学療法と自家HSCTは非メラノーマ皮膚がんと骨髄異形成症候群もしくはAMLのリスク増加と関連したが、固形がんでは関連しなかった。このような状況で高用量化学療法・自家HSCTとCAR-T細胞療法のどちらかを選択する場合において、これらの所見は将来の個別化したリスク・ベネフィット評価に関連するものである。
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前回T先生が執筆された記事もそうですが、二次がんは分かってはいるものの、(血液内科に限りませんが)普段の定期受診採血や画像検査で全ての癌腫を網羅的に調べているというわけではなく、また治療やフォローアップが一段落した晩期に起こることも多いため、なかなか気付くのが難しいところがあります。今回の報告では特に非メラノーマ皮膚がんと骨髄異形成症候群/急性骨髄性白血病に注意が必要との結果でしたので、それらに特に注意して経過フォローしていくのは重要かと思います。しかしながら、他の癌腫にも注意が必要とする報告も多くあります(当ブログのリンクも貼ります)。定期受診も重要ですが、職場や自治体が行っているがん検診、個人での人間ドックを利用するなどして、定期的な健康チェックの意識を持っていただければと思います。
おまけ
サバの水煮缶と根菜類で味噌汁を作りました!