【お知らせ】
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こんにちは。血液内科スタッフKです。

 

今回はLancet Haematologyから、有名なGRIFFIN試験の最終解析結果をお伝えいたします。移植適応新規診断多発性骨髄腫患者に対し、レナリドミド、ボルテゾミブ、デキサメサゾン併用のRVd療法にダラツムマブを上乗せしたD-RVd療法の有効性と安全性を検討した第Ⅱ相試験になります。

 

Addition of daratumumab to lenalidomide, bortezomib, and dexamethasone for transplantation-eligible patients with newly diagnosed multiple myeloma (GRIFFIN): final analysis of an open-label, randomised, phase 2 trial

Voorhees PM and Sborov DW et al, Lancet Haematol 2023, doi: 10.1016/S2352-3026(23)00217-X

 

【背景】

GRIFFIN試験において、レナリドミド、ボルテゾミブ、デキサメサゾンにダラツムマブを追加したD-RVd療法は移植適応新規診断多発性骨髄腫患者において、地固め療法終了時までの厳格な完全寛解率を改善させた。今回は事前に設定された最終解析結果を報告する。

 

【方法】

GRIFFIN試験は第Ⅱ相の非盲検ランダム化実対照試験で、米国の35ヶ所の研究センターで実施された。患者はM蛋白もしくは遊離軽鎖による測定可能病変を持つ新規診断多発性骨髄腫で、年齢18~70歳、ECOG PS 0~2、自家造血幹細胞移植(HSCT)の適応であった。患者は1:1にランダム化割り付けされ、4サイクルのD-RVd療法もしくはRVd療法による寛解導入、自家HSCT、2サイクルのD-RVd療法もしくはRVd療法の地固め、そしてレナリドミドにダラツムマブ併用ありもしくはなしの維持療法を2年間受けた。患者は21日サイクルの経口レナリドミド(25mgをday 1~14)、皮下投与ボルテゾミブ(1.3mg/m2 day 1、4、8、11)、経口デキサメサゾン(週40mg)を投与され、ランダム化によってそれに経静脈的投与のダラツムマブ(サイクル1~4は週16mg/kg;サイクル5~6はday 1)が併用された。維持療法(28日サイクル)は、経口レナリドミド(10mgをday 1~21)にランダム化によってダラツムマブ(経静脈的に16mg/kgを4週または8週ごと、もしくは1800mgの皮下投与を1カ月ごと)が併用された。患者は臨床試験治療終了後もレナリドミド維持療法を継続することが出来た。主要評価項目は治療反応評価可能な患者群における地固め療法終了時の厳格な完全寛解率であり、既に報告されている。今回は厳格な完全寛解率のアップデートと、無増悪生存や全生存を含む副次評価項目を報告する。

 

【結果】

2016年12月20日から2018年4月10日の間に、104人がD-RVd群、103人がRVd群にランダム化割り付けされた。多くの患者は白人(D-RVd群で85人[82%]、RVd群で76人[74%])で男性であった(D-RVd群で58人[56%]、RVd群で60人[58%])。フォローアップ期間中央値49.6カ月の時点で(四分位範囲 47.4-52.1)、D-RVd群は厳格な完全寛解率を改善させた(100人中67人[67%] vs 98人中47人[48%];オッズ比 2.18[95% CI 1.22-3.89]、p=0.0079)。4年間の無増悪生存率はD-RVd群で87.2%(95% CI 77.9-92.8)、RVd群で70.0%(95% CI 55.9-80.3)であり、D-RVd群の疾患進行もしくは死亡リスクに関するハザード比(HR)は0.45(95% CI 0.21-0.95、p=0.032)であった。どちらの群も全生存期間の中央値は未到達であった(HR 0.90[95% CI 0.31-2.56]、p=0.84)。最も頻度の高いグレード 3~4の治療関連有害事象は、D-RVd群 vs RVd群において、好中球減少症(99人中46人[46%] vs 102人中23人[23%])、リンパ球減少症(23人[23%] vs 23人[23%])、白血球減少症(17人[17%] vs 8人[8%])、血小板減少症(16人[16%] vs 9人[9%])、肺炎(12人[12%] vs 14人[14%])、低リン血症(10人[10%] vs 11人[11%])であった。重篤な治療関連有害事象は、D-RVd群で99人中46人(46%)、RVd群で102人中53人(52%)で起こった。それぞれの治療群において、1人で死亡に至る治療関連有害事象が報告された(D-RVd群は気管支肺炎、RVd群は原因不明)。どちらも試験薬との関連はなかった。維持療法において、新たな安全性の懸念はみられなかった。

 

【解釈】

RVd療法にダラツムマブを追加することにより、新規診断で移植適応の多発性骨髄腫患者において、治療反応が深くなり無増悪生存率が改善した。これらの結果から、第Ⅲ相試験での評価が正当化される。

 

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GRIFFIN試験は2020年にブログでも紹介しています。もう3年前なんですね。

 

 

今回はフォローアップ期間中央値を約4年まで延ばした最終解析の結果になります。Kaplan-Meier曲線を見ていると治療早期は両群であまり大きな差がないのですが、維持療法に入っていくとだんだんと無増悪生存期間に差が付いていくのが印象的です。また、D-RVd群はダラツムマブ投与が進むごとに経時的に奏効が深くなっており、ダラツムマブを含めた維持療法レジメンは今後魅力的な選択肢になるのだろうなと思われました。第Ⅲ相試験での確認が待たれますね!

 

おまけ

 

 

塩麹につけ込んだ鶏胸肉をオーブン焼きにしました!胸肉で大丈夫かな?と思いましたが、塩麹パワーのおかげなのか、しっとり仕上がって大変美味でした。