漢方の入院治療 | 飯塚病院 漢方診療科のブログ

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 Hです。

 飯塚病院漢方診療科の診療の大きな特徴の一つに入院治療があります。今回は漢方治療での入院がどのようなものかご紹介します。

 漢方薬はゆっくり効果が出るものというイメージが強いので、入院と聞くと違和感を感じる、驚かれる方もいらっしゃると思います。当院を受診される方のなかには、症状が強くて日常生活に困難をきたす方、月単位での診察では薬の調整が難しい方などがおられ、入院治療を受けていただいています。西洋医学的治療が効果なく、あるいは治療は上手く行っているが病状が深刻で生活がままならない患者さんにとっては漢方治療が最後の砦ということもあり大いに意義があります。

 入院中は院内薬局の漢方薬専門の部署で毎日煎じ薬をつくり病室へお届けして内服いただいています。先に書いたように漢方薬の効果は長く飲まなければわからないというイメージをお持ちの方もおありだと思いますが、症状や薬によっては数時間、数日で効果が現れることも多くありますので、症状の重い方にとって、入院して毎日変化を確認することは効果の高い治療を行う上では重要です。煎じ薬は、生薬(材料となる植物等を刻み乾燥させたもの)を煮だして有効成分を抽出するため、出来上がるまで40分〜60分かかります。手間はかかりますが、配合する生薬の量を自在に調整できますので、患者さんそれぞれの体質、そのときの体調に合わせてカスタマイズできます。
 日々の診療では、主治医が毎日診察をおこなって病状変化を確認するとともに、週に2回漢方診療科の医師全員と、薬剤部スタッフ、看護スタッフで入院患者さんを回診しています。大人数で病室を訪問しますのでかつての白い巨塔のような、大名行列のような印象があります。しかし、漢方治療には検査が少なく、患者さんの病状を皆で把握するためにはとても重要です。回診前には主治医より投薬状況や病状変化を提示して情報の共有と治療効果の確認、処方変更の是非の検討を綿密に行います。その後、病室を訪問して患者さんから症状を詳しく伺い、漢方診察を行って、投薬による改善があるか、またはもっと適した薬や配合の変更がないかを確認します。回診の後にも、議論の場を持ってその後の治療方針についての検討を行います。このようにして治療の効果が上がり、症状が改善し日常生活を安心して送れると判断できれば、退院して外来へ通院いただくようになります。入院中、患者さんの中には長年患った症状で体力が低下している方もありますから、体調をみながら運動指導なども積極的に行っています。小児の患者さんには院内学級の先生に勉強のサポートもしていただいています。
 長年の症状でお困りの方、病院の検査では異常がないと言われたけれども症状がつらくてお困りの方がありましたら是非一度受診してみてください。また、漢方治療を学びたい医療関係者の方には、このような入院治療を有する漢方診療施設は大変珍しく、漢方を学ぶ環境として大変に優れていると思います。短期研修の受け入れもありますのでお気軽にご連絡ください。