今日のタイトルについてお話をする前に、EMMA検査、ALICE検査について簡単におさらいしたいと思います。
※もう知ってるよ~という方は飛ばして頂いて大丈夫です!
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EMMA/ALICE検査とは?
EMMA検査は、子宮内の細菌を網羅的に見て、その割合を調べる検査です。
特に、ラクトバチルスという乳酸菌が多いと妊娠・出産率が上がることから、ラクトバチルスが少ない場合は、増やすために適切な抗菌薬やプロバイオティクスを推奨します。
ALICE検査は、慢性子宮内膜炎に関連する主な病原菌10種類が検出されたかどうかを調べる検査です。病原菌が検出された場合、菌の種類に応じて適切な抗菌薬を推奨します。
検査結果の見方
① EMMA検査の結果には、ABNORMAL(ラクトバチルス90%以下)、NORMAL(ラクトバチルス90%以上)、MILD(子宮内の細菌の数が少ない)、ULTRALOW(子宮内がほぼ無菌に近い)の4種類、
ALICE検査の結果には、POSITIVE(病原菌検出あり)、NEGATIVE(病原菌検出なし)の2種類があります。
② EMMA、ALICE検査で検出された細菌のバランスによって、適切な抗菌薬を推奨します。
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ここからは、タイトルの内容について
お話したいと思います。
ALICE検査でNEGATIVE(病原菌検出なし)でも、抗菌薬が推奨されるのでしょうか?
はい、推奨されることがあります。では、なぜ病原菌がいないという結果だったにもかかわらず、抗菌薬が推奨されるケースがあるのでしょうか?
さきほどのおさらいでもお話しましたが、
ALICE検査では、慢性子宮内膜炎に関連する主な細菌10種類をリストアップし、その細菌があるかどうかということのみを見ています。
つまり、子宮内にある全ての細菌について調べているわけではありません
ALICE検査で調べている10種類の細菌のリストです。
対して EMMA検査では、子宮内の細菌を網羅的に調べています。その結果、善玉菌や悪玉菌、その他良いとも悪いとも言えない菌(日和見菌)など
様々な菌が検出されます
こちらがEMMA検査で検出される主な菌になります。
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たとえALICE検査でNEGATIVE(病原菌検出なし)という結果が出たとしても
EMMA検査でABNORMAL(ラクトバチルス90%以下)という結果が出れば
ラクトバチルスの他に検出された細菌が悪玉菌だった場合には
もちろんその菌を倒すための抗菌薬が推奨されます。
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しかし、これが日和見菌や善玉菌であった場合にも、同様に抗菌薬が推奨されることがあります。これはいったいなぜでしょうか?
例として、EMMA検査でビフィズス菌(ビフィドバクテリウム)が検出された場合にも、抗菌薬が推奨されることがあります。ビフィズス菌といえば、ヨーグルトなどに含まれる乳酸菌で、お腹にも優しい善玉菌として有名な菌ですね。
ビフィズス菌自体は決して悪さをする菌ではありませんが、ビフィズス菌が子宮内に増えると子宮内の環境は中性に傾きます。
子宮内膜炎などを引き起こす多くの病原菌は、アルカリ性~中性の環境を好むため、病原菌の増殖を防ぐためには、子宮内は酸性であるほうが望ましいと言えます。ここでラクトバチルスの出番です。
ラクトバチルスは子宮内環境を酸性にする作用があります。
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ラクトバチルスを増やすためには、ラクトバチルスを含む膣剤を使用するのが効果的ですが、その他の菌がたくさんいる環境では、なかなか増えない可能性があります。
そこで、まずはその他の菌を抗菌薬で減らしたのちに、ラクトバチルス膣剤を使用する治療法を行います。その結果、ラクトバチルスを効果的に増やすことができます。
これが、ビフィズス菌のような善玉菌の割合が多い場合でも、抗菌薬が必要になる理由です。
ちなみに、現在ラクトバチルスが多いと妊娠、出産率が上がるということはわかっていますが、その理由がなぜなのかはわかっていません。
もしかしたら、ラクトバチルスの子宮内環境を酸性へと傾ける性質が、妊娠率の向上に一役買っているのかもしれません。
子宮内を酸性にすることで病原菌の増殖を妨げ、慢性子宮内膜炎を予防するためにも、ラクトバチルス膣剤の使用をお勧めしています。