2015' マレーシアの蝶 その3 | 蝶に魅せられた旅人

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東南アジア蝶紀行Ⅳ 番外編

  その3・タテハチョウ科2

    Adoliadini イナズマチョウ族1


(Lexias オオイナズマチョウ属)

Lexias dirtia
ディルティアオオイナズマ♀


  別名ヤマオオイナズマとも呼ばれる。
今まで見てきたディルティアに比べて地色が黒かったので、最初は待望のバンカナオオイナズマ(Lexias bangkana )かと思った。
  でも斑紋が青くないし、触角の先が黒いのでディルティアだと解ってガックシらくたん

  コチラが♂ですな。


  オオイナズマは森の蝶だ。林道にも出てくるが、森の中にいる事の方が多い。
他のタテハが好きな森の中の日溜まりにもあまり寄ってこない。結構、お暗い所がお好きなのだ。お陰で、いつもメッチャ蚊に刺される。

  ディルティアは『東南アジア蝶紀行Ⅳ』本文の第7話と32話に出てきます。


Lexias parudalis
パルダリスオオイナズマ


  コチラの♀も黒っぽかったので、飛んでいる時は一瞬バンカナに見えた。

 別名サトオオイナズマ。
ディルティアは山地性で、パルダリスは標高の低い所(里山)にいるからという事だそうだが、経験ではあんま関係ないような気がする。

  見た目はディルティアとほとんど同じなので、慣れないと区別がつかない。ゆえに昔は分けられておらず、纏めてオオイナズマとされていたようだ。
  両種の見分け方は、ディルティアの触角は先まで黒いのに対して、パルダリスは先っちょが黄色っぽいことで区別できる。
  あとは、私見だが♂なんかはディルティアの方がコントラストが強いような気がする。美しいと思った個体は大抵ディルティアだった。これはあくまで自分のフィーリングなので、あまり参考にして貰っても困るんだけどね…。

  ♂はこんなの。


  オオイナズマは憧れの蝶の一つだったから、初めて採れた時はとても感動した憶えがある。忘れもしない2011年、キャメロンハイランド・12マイルでの事だ。
  しかも、神技並の空中キヤッチだった。
一応、名前の由来通りイナズマチョウと云うだけあって、本気飛びは稲妻の如く速いのだ。それを飛ぶであろう軌道を目測より先に読んで💥バチコーンかましてやった。

  でも、その後は中々採れなかった。
モノ凄く敏感で、見ても全然近づけずで採るのに苦労した。トラップに来てても、すんでのところで逃げられる事が多々あった。
  それにコイツら、苦労して採っても大抵は翅が欠けていたり、縁が擦れてギザギザになってて、ほとんど完品が採れないんだよねえ。それだけ激しく飛ぶ蝶なのだろう。結構忌々しい蝶です。

  そのうち心頭滅却の必殺技を編み出して、わりかし採れるようになったが、そうなると現金なもので、やがて飽きてくる。それに結構どこにでもいて、案外普通種だとゆう事も次第にわかってきた。
  今や、海外でのウォーミングアップに調度いい相手みたいになっている。どうしても欲しい蝶ではなくなっているから、過度な緊張感も無く、スポーツ感覚で採っているようなところさえある。そう云う風に思えば、ゲーム感覚で面白いのだ。
  つまり、オオイナズマ如きが採れないようでは不調って事だ。

  一応、言わずもがなだが、今回の旅では珍品バンカナは採れなかった。
  真剣に狙いにいった蝶で、採れなかった蝶はあんまり無いので、結構やさグレそうになった。
  でも、見もしないのに、んなモン採れるワケがないのである。バーロー(#`皿´)

  コチラは主に第9話と10話に登場します。


Lexias canescens
カネシケンスオオイナズマ♂


  お次が♀。翅が尖っている。
普通の蝶は♂の翅が尖っていて、♀は丸みを帯びるのだが、オオイナズマの類は反対なのだと云う事に初めて気づいたのであった。



  カネシケンスは中、大型の種類が多いLexias属の中では小さい種類である。
  今回の旅で初めて採れた蝶なんだけど、オオイナズマの仲間にこんなのがいるなんて知らなかったから首を傾げた。
  小さいゆえに最初はディルティアの矮小個体かと思った。でも、見掛けるのはどれも小さいから、矮小系の亜種なのではないかと思ったりもした。
  しかも、いわゆるオオイナズマの♂みたいな青いのを全然見掛けないから、益々ワケがわからなくなった。その時はまさか♂♀同じ柄だとは思いもよらなかったのだ。Lexias属のオオイナズマたちのほとんどの蝶は♂と♀が異型で全然見た目が違うのである。

  結局、パルダリスの♀が同じ場所で採れた事により、こりゃ別種だと気づいたのである。

(これくらい大きさの差がある。因みに下はディルティアオオイナズマ。)

  よく見ると、♂はボックス型の四角い形をしており、全然違う形だとその時ようやく気づいたのだった。

  カネシケンスは第43話に登場します。
また、その後の経緯は『外国の蝶の名前を調べにいく・その2』に詳しく書いてあります。


  (Dophla カギバイナズマ属)

Dophla evelina
カギバイナズマ♀



  ♂は♀に比べて一回り以上小さくて、先端部の湾曲も弱い。

(♂の画像)


  トビイロイナズマとゆう別名も悪くないけど、やはり鉤爪や鉤針からとったカギバイナズマの方が、らしくていい。フック船長なのら。
  プロの方々はエベリナと呼んでいるようだ。コチラも響きが良くてカッコイイ。

  中大型の蝶で、コイツも矢鱈と敏感で中々近づけない。トラップに来てもすぐ逃げるくらいだから採集は困難。おまけに激しく飛ぶせいか、翅がたいがい破れている。オオイナズマと一緒だ。ムカつく野郎だ。
  湾曲した翅の形がカッコイイし、♀は大きくて迫力があって、好きな部類の蝶かな。
  だが如何せん全面黄土色で地味。裏は白くてカッコイイのに勿体ないなあと思う。もし裏が表の面だったら、相当人気があっただろうに…。

(カギバイナズマ裏面)
(出典画像 http;//insecta.pro/images)

  でも亜種が多いし、集めている人は意外と多いのかもしれない。
  あっ( ̄□ ̄;)❗、それで思い出した。
真っ白とはいかないまでも、♀の表が白い亜種がどっか辺境の島にいた筈だわ。

  ネットで調べてみたら、見つかった。
スールー諸島(註1)のサンガサンガ島とボンガオ島に棲む固有亜種 albusequusだ。

(出典 『蝶の楽園…展翅の小部屋』より)

  うわっちゃ(◎-◎;)!!
スッゲェー( ☆∀☆)キラキラ、カッチョいい。
でも、こんなに白かったっけ❔
そっか、あれはビリトン島亜種だっけか…。まあまあ白いヤツだ。

  こんなにカッケーなら採りに行ったろかと思ったが、解説を読んで即断念した。
  プロの採集家が訪れた時は、治安が悪くて装甲車に護衛されての採集だったらしい。
  でも、それでもまだマシな方で、今はもっと危険で超ヤバいらしい。何せ、すぐ近くにあるTawi Tawi 島にアルカイダの最大級の基地があるらしいのだ。そういう場所だから、外国人はもとより一般のフィリピン人でさえも入域が難しいようだ。

  この蝶、モノ凄く高価らしい。
まあ、そんな場所の蝶なら高いのも納得だ。命の値段も乗っかってんだからね。
  ところで、高価っていくらぐらいの値段なんだろう❔ 気になるところではある。
  カギバイナズマは主に第19話と38話に出てきます。

  とここまで書いて、疲れた。
書いているうちにどんどん文章が長くなり、予定外の分量になってしまったのである。
  まだまだイナズマチョウの仲間はあるのだが、次回に回します。



追伸

(註1)スールー諸島
  フィリピン領。同国南西部に細長く連なる島々の総称。南端はインドネシア・スラウェシ島と国境を接する。
  太平洋戦争の激戦地でもあった。



  因みにサンガサンガ島やボンガオ島はその南端のインドネシアの国境近くにある。

  ここいらは、ダーウィンの盟友ウォレス先生言うところの生物相の境界区(ウォレス線)近辺の筈だから、とても面白そうな地域だ。東洋区の生物とオーストラリア区の生物が入り交じっているのである。こういう所の生物は独自の進化を遂げやすい。だから、変わったのが一杯いるのだ。

  気になったので、ネットで調べてみた。
外務省の渡航延期勧告の指示が出ているようだが、信頼のおける旅行会社に頼めば行けるらしい。飛行機も一日、二便もあるようだ。
  だいたい渡航自粛勧告なんてのは、インドやラオスにだって出ている筈だ。でも、現地に行ってみれば、拍子抜けするくらい全然大丈夫だったりする事は多い。
  ようするに日本の外務省は、おまえら海外でメンドーを起こさないでくれるなと言っているのだ。だいたい大使館や領事館の奴なんて、ろくに同朋を守る気が無く、冷たい奴ばかりだ。例外は、自分の経験ではトルコのアンカラでお世話になった大使(当時)だけである。


  写真を見ると、めちゃ海キレーラブ


(出典 『ネモトトラベル&ツアーズ』のホームページ。以下、全部同じです。)



  桟橋だね。
ええとこやんか。



  山もそんな高くなさそう。
ごっそり蝶も採れまんでニヒヒ



  何かエキゾチックじゃよ。
こういうトゥクトゥク的乗り物は好きなんだよね~。



  市場だね。活気が有りそう。
市場はウロウロするだけで楽しい。



   おっびっくり、出ましたねソルジャー。
M16とランチャーのフル装備❗
  やっぱ、それなりにドクロ危険なとこみたいだすなあ。

  でも、なあ~んか長閑(のどか)な雰囲気なんだよなあ…。兵士も緊張感無さそうだしさ。

  ここ、行きたいよなあ…。
誰か一緒に行ってくんないかなあ…。
普段なら付けないけど、ここならガイドもちゃんと雇ってもいい。だから、誰か一緒に行ってくんないかなあ…。