「直すところはありません,
このまま本部長に出します」
部長のメールには
そう書かれていた.
先月,グループの30代女性,
エルサ(仮名)の昇進のために
推薦文を書くように言われた.
テストも基準点をクリアし,
後はこの推薦文が
人事にどう評価されるかで
彼女が管理職になれるかが決まる.
手前味噌になるが,
自分は推薦文のような
事実ベースギリギリの
盛った文章を書くのは
割と得意だ.
前職でも実績がある.
部長のメールから数日後,
3人いた昇進候補者の中で
本部からはエルサを推薦する
と言う連絡が,本部長からきた.
エルサはテスト結果受領後,
昇進がどのように進むのかを
かなり気にしていたため,
この事を伝えた.ただ過度の期待は
まずいため,人事の判断で
ひっくり返る事はあるという
ことも付け加えた.
この推薦文を書く前,
部長と面談を行った.
「エイト(仮名:自分)さんね,
彼女はスペシャリストの
管理職として推薦しますから
ライン管理職ではありません」
「彼女には部下を付けたいんですけど」
「アナ(グループ40代2児の母親)さんですか?」
「はい」
「そうですか,エイトさんは,
別の部署に行っても
かまわないのですか」
「ええ」
そのために自分は,
上層部に強力なアピールを
この1年してきたのだ.
実際,彼女の能力が高い事は
間違いない.
「でもグループから抜けてしまうと
来年度(4月から)は
厳しくないですか」
確かに来年度は行政対応が
立て続けにあるため,
エルサの能力がいくら高くても
アナと2人では乗り切れないだろう.
「そうですね」
「再来年度になればどうですか」
「再来年度は業務量が
来年度より大幅に減るので
大丈夫かと思います」
「ではエルサさんは,
来年度は部下無しの
管理職と言う事で」
「そうですか」
わかってはいたが
どこかもどかしかった.
エルサのスペシャリストとしての
能力の高さは疑う余地はない.
自分はどちらかと言うと
ジェネラリストなので,
スケジュールの調整や管理,
プロジェクト目標達成が
主となってくる.
知識も広く浅くのため,
専門家が傍にいてくれると心強い
もちろんエルサも
専門性だけでなく
マネージメント能力も
高いと思われるが,
少し気になることがある.
時より
”こんなこともわからないの?”
というような口調で
見下した言い方をする時がある.
それと人が間違えたりすると
笑うのだ.
頻度は高いわけではないが,
そう言った人間性が
垣間見られる事がある.
それともう1つ気になっている事は
文章力だった.
ワンパラグラフなら
それほどおかしくは無いのだが,
それ以上になってくると,
ロジックの並びがおかしくなる.
そんな時,自分は
「エルサさんの書き方でも
通じないことはないけど,
こんな感じで書くのはどうだろうか」
と言って,
パラグラフライティングに基づいた
書き方に直して提案をする.
本人もおかしいのがわかっているのか,
抵抗せずに言われた通りに
修正してくる.
グループ報告のスライドも
エルサは担当部分を
作ってくるのだが,
発表担当が自分のため
直してしまうことが多い.
その事を本人は
どう思っているかはわからないが,
少なくとも,管理職になると,
報告書や発表スライドなどを
作る機会が多くなってくる.
部下の目標に対する評価論文も
うまく書かないと,
せっかく部下が頑張っても
評価されない事も起きてしまう.
自分は1年経ったら,
アナをエルサに任せる事で
今後の事を考えている.
どうか管理職になっても
慢心せずに,がんばってくれ.