新しい楽器に起きるかもしれないトラブル? | ヴァイオリン技術者の弦楽器研究ノート

ヴァイオリン技術者の弦楽器研究ノート

クラシックの本場ヨーロッパで職人として働いている技術者の視点で弦楽器をこっそり解明していきます。

こんにちはガリッポです。

12月下旬から1月中旬まで日本に滞在しますので御用の方はご連絡ください。
日程は早い者勝ちですので。
これから完成させるヴァイオリンを試奏することができます。
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弦楽器はアナログの製品で弦の力を受けると力が楽器の様々な所にかかります。前回弦の話をしましたが、新しい楽器や修理した後で弦を張ると一日後にはまた音が変わっています。暗く深みが増してくることも少なくありません。

何も起きていないように見えますが、弦の力によって様々な変形が起きます。まず弦を張った瞬間に弦の力で表板の低音側が低くなります。ヴァイオリンでは高音側の弦高(弦と指板下端の隙間)はほとんど変わらず、低音側は弦高が1mmほど下がります。アーチが高かったりバスバーが強かったりすると低音側の沈み込みが0.5mm程度になることも少なくありません。
そうすると駒が少し傾きます。弦が指板の上からずれます。そこで駒を高音側に0.5mmくらいずらします。魂柱との位置関係が変わります。そんな微妙な変化が起きます。

チェロの場合も低音側が高音側よりも1mmほど弦高が下がります。チェロは予測不能の動きをします。ネックが弦によって引っ張られネックと指板の角度が下がります。このままでは弦高が高くなってしまいますが、裏板が魂柱によって押し出され、表板は沈み込みます。それで相殺されますので、弦高が高くなるどころか低くなることも少なくありません。バロックチェロではネックがとても丈夫なのでびくともしません、表板は沈み込むので弦高が2mmほど低くなりました。
表板の沈み込みは季節によっても変わるようです。夏と冬で弦高が変わってしまうことも少なくありません。このため夏用と冬用の駒の二つを用意することができます。そういうことを知っていると詳しいような感じがいますが、こちらでは実際に使っている人はほとんどいません。日本の場合にどうなのかはわかりません。

ヴァイオリンでも同じようなことで、平らなアーチのものでは、ネックが弦に引っ張られてネックと指板の角度が下がると同時に、表板も沈んでいきます。普通はそれらが相殺されます。
アーチが高い楽器で問題になるのは「ネックの下がり」です。アーチが高い楽器では表板があまり沈み込まずネックだけが引っ張られるからでしょう。フラットなアーチのものに比べてもネックが下がるトラブルが起きやすいです。

また不思議なのはオイルニスを塗ったときに、塗る前に比べて表板が沈み込みます。ニスが乾燥するときに縮むのでアーチが低くなるのではないかと思います。それが弦を張ると半年くらいで戻るようです。

ネックの下がりが起きても良いようにネックの角度を高めにしていますが、ニスによっても余計に高くなっていることでしょう。この時点ではビオラ並みです。
高いアーチの楽器の場合にはアーチ全体が沈み込まない代わりに駒の脚のところだけが沈み込みます。古い楽器では確実にそうなっています、修理で裏から押し出して、木材(パッチ)を埋め込むことで直すこともできます。

弦を張ると早ければ一日後にはネックが引っ張られて下がり、弦高が0.5mmくらい高くなることも少なくありません。半年もすれば1mmは下がるのは普通です。高いアーチならそれ以上見ておかないといけません、

魂柱を入れることでも表板や裏板が変形します。
魂柱を入れた時点で、裏板と表板の間のつっかえ棒になるためそれぞれ外側に押し出されます。普通は裏板のほうが硬く厚みがあるので表板の方が多く押し上げられるはずです。
ニスの乾燥によって下がっていた表板を魂柱で押し上げると1mm近く上がったようです。古い楽器ではそんなにすると魂柱はきつすぎるのですが、新しい楽器の場合には弦を張るとその魂柱もすぐに緩くなってしまいます。裏板が押し出されてしまい、表板が下がります。

新作ヴァイオリンでは半年もすると魂柱が緩くなってしまい交換が必要になります。今回は裏板が板目板なのでもっと大きく変形するかもしれません。
ビオラではもっと変形が大きく、数か月で魂柱交換が必要で、チェロなら数週間です。量産楽器では板が厚すぎたり削り残しがあって強度が高いため、そこまで変形はしないことでしょう。

裏板は魂柱のところが押し出されて行きます。裏板が薄すぎると魂柱のところが突き出てきます。裏板全体にも歪みが出てきます。オールド楽器では極端に薄いものがあります。クレモナの流派のものでも裏が薄すぎて変形したり、修理によって厚みを足してあるものがあります。何千万円、1億円を超える楽器の作者でも裏板を厚くするという現代の常識は無くアバウトでそんなものです。

これはオランダのオールド楽器ですが、中央に板を張り付けて厚みを増す修理がしてあります。おそらく3mmにも満たなかったことでしょう。現在では裏板の方を表板よりも厚くするのが常識ですが、表板の中央のほうが厚くなっています。このようなものは修理というよりも「改造」ですね。私はオールドの時代の作風を変えたくないのでやりたくは無いです。
それと、あご当ての来る場所の横板に厚みを増す修理がされています。これは後で説明するので覚えておいてください。

裏板の魂柱のところが外側に押し出されているオールド楽器はよくあります。そのようなものは魂柱を入れる作業がとても難しくなります。ドイツのオールド楽器では理論上魂柱を入れることが不可能なことがよくあります。そこをなんとかしないといけませんが、金銭利益で考えていると仕事はできません。

楽器の変形は永遠に続くのではなく、力のバランスが取れたところで止まるようです。それもまた古い楽器の音が変わる理由かもしれません。ひどく変形した楽器も見た目の無残さとは反対に、暖かみのある心地の良い音がして驚くことがあります。したがって修理するのは見た目の問題ということかもしれません。またどちらかというと柔らかい音になるのかもしれません、修理をして変形を直すと力強さが戻ることもありそうです。

コントラバスで特に5弦のものでは弦の力に表板が耐えられなくなることが起きます。表板も太い大木が必要になりますが樹齢の古いものは希少です。成長が早く密度が低い材質であることも原因の一つでしょう。違う種類の針葉樹を使うこともあります。


さらに細かいことでは、テールガットが伸びます。よく使われるプラスチック製のものは思っているよりも伸びます。カーボンやケブラーのものも張って間もなくから、一晩くらいで伸びます。ちょうどいい長さよりも短くしておかないといけません。
あご当ての金具は楽器と触れる部分にコルクが張ってあり、コルクも圧力で潰れていきます。新品を付けた後で緩くなってしまうと、落下してしまう危険があります。またテールピースと接触するようになることがあります。あご当てがテールピースに触れるとビリつきが発生することがあります。

ペグの材質

私はこれまでも自作の楽器を日本の方にいくつも使ってもらっています。一般にペグやテールピースなどの付属部品には真っ黒な黒檀を使うことが多いです。見慣れてしまい黒檀のものをつけると「退屈」と感じるので、自作の楽器では何かそれらよりも良く見えるようにしたいものです。新作楽器では黒檀以外のものをつけている人が多いでしょうね。
黒檀に次いで多いのは、ツゲです。これは白っぽい木なのですが、硝酸で反応させると茶色になります。紳士靴などと同じで、黒いものはフォーマルすぎて茶色いほうが遊び心があって気楽に過ごせる感じがします。
オールドの時代には黒檀が貴重品で、白や茶色い木を使ったり、それらを黒く染めて使ったようですが、ほとんど残っていないので分かりません。
19世紀にヴィヨームのころになると、彫刻がほどこされたツゲのテールピースなどが目につきます。今でも売ってはいますが、使っている人を見ることはないですね。
その後はイギリスの楽器商が力を持ってきてツゲに黒檀の飾りがついたものがストラディバリ等についているのをよく見ます。

ストラディバリのコピーを作るとツゲにするとイメージと一致するので、私はストラディバリのモデルで作ったときにはツゲのものを使ってきました。しかし次に帰国するとペグの軸が曲がってしまい、うまく回転しなくなっていました。このような問題はペグではよくあることです、しかし普通は何十年も手入れせずに使い続けている古いペグに起きています。それで、まだ木も新しいので初期不良のようなものだと思ってペグを削り直しましたが、また次に帰国したら曲がっていました。
同じようなことはローズウッドのペグを入れたビオラでも起きました。それは一度直したらそれで大丈夫でした。黒檀のものでは問題が起きていません。

新作楽器にツゲのものをつけると似合わないのではないかという感じもします。いかにも高い楽器に見せかけようとしてるあざとさも感じます。中国製の安価な量産品にツゲのペグがついていることも多くなりました。

画像では上から、黒檀、ローズウッド、ツゲです。

そこで中間としてローズウッドを新作楽器につける人も多かったです。
しかしローズウッドは森林保護のために取引が制限されるようになりました。今でも別の産地のものや近い種類の木材でローズウッドと称されて売られているものはあります。しかし全くカタログから消滅してしまったメーカーもあります。
今はそれに代わる代替の木材が検討されていて、メーカーごとにバラバラです。私はタマリンドというものは良いと思いますが、あご当てまで好きなものを選べるほど充実していません。

このようなペグやテールピース、あご当てなどの付属部品は、中国やインドでとても安価なものが作られています。ネットなどを見ればそんなものが溢れかえっています。一方高級メーカーになるとめちゃくちゃ高いです。その中間的なものが欲しいのですが、難しいです。他の職人も同様なのかすぐに売り切れてしまいます。

安いツゲのペグなどは黒い飾りの部分がプラスチックで作られていたりしますし、密度が低くE線が食い込んでしまいます。硬く動きがきつくなって無理に動かすと折れてしまう事さえあります。
写真のものはオットー・テンペルという高級なメーカーですが、生産量が多くいつでも入手できます。職人はさほど腕が良い人が集まっているわけでも無いようで、仕事は甘いです。それとて手に持った時には角が無いので馴染みやすく実用的には優れていると言えるかもしれません。材質は上等なものです。
テンペルのツゲのペグでよく起きるのは軸の根元についている飾りの輪っかが取れてしまうことです。軸の外径に対してわっかの内径が緩いので木材が乾燥してくるとはずれてしまうことがあります。接着剤で私は補強しています。取れてしまっても接着しなおせますし、部品が取り寄せられるので紛失しても大丈夫です。
そういうわけでテンペルのものは使っています。しかし高級品として高すぎる期待をしていると失望するものです。そういう故障はつきものだと思っておけば問題ありません。
ヒルのハートモデルという形のツゲのもので、黒檀の飾りがついているものです。軸の太さには3段階くらいあって、新作楽器や穴を埋め直した楽器には細いもの、交換するにしたがって太いものを使います。細いものの方が弦を巻き取るスピードがゆっくりになるので微妙な調弦がしやすくなります。なのであまり太くなってくると穴を埋め直すほうが良いということになります。そうでしたが、細いペグは軸が曲がってくる危険も高いのではないかとも考えています。

一番上の黒檀のものはスイスモデルという形です。手に持ちやすいように作られていてシンプルなものです。真ん中のローズウッドのものはそれに金色のボールが飾りとしてついています。本当の金ではなく金メッキか合金であることが多いと思います。ボールではなく金の飾りがついているものもあります。

付属部品を作る新興メーカーが次々と出てきます、だいたい一番下のツゲに飾りがついたようなものをアピールしてきます。ところが一番上のスイスモデルのようなものを作っていません。スイスモデルの高級品が手に入らなくなってきています。この在庫が切れたら終わりかもしれません。一見地味なこういう物の良さが分かる人が少ないのです。
うちでは、20年前には安価な量産楽器にもつけていましたが、もう手に入りません。このようなシンプルな高級品がついているのを見ると私などは「おお」と思います。昔はまだ手に入ったのでしょう。

値段はツゲのものが高いですが、それは飾りがついているからです。黒檀のものと同じように飾りが無ければ値段は変わりません。


ペグの軸は専用の道具で削ります。工場で出荷されたものは正確に加工されていませんし、保管している間に曲がっていくこともあるからです。このような道具も何万円もします。アマチュアで楽器を作ると元が取れないというのはこういうことです。

ペグの穴の方はリーマーというもので開けます。これはテーパーが決まっていてヴァイオリンなら1:30になっています。上のペグシェーパーを調整してテーパーを合わせます。これは本当に微妙なものです。テーパーが合っていないとペグボックスの左右の壁のどちらかしか接地しませ。これも1万円はするでしょう。太さの違うものも必要です。

修理ではなるべく元の穴を大きくせず、ペグの方を細くして長さを合わせていきます。新作の場合には初めにペグの太さを決めて穴を大きくしていきます。
これはビオラですが、スイスモデルの高級なものです。これを入れるのにふさわしいビオラはそんなに多くはありません。


今回の私の楽器にはヒル・ハートモデルの黒檀のものをつけました。見た目だけならツゲのほうが良いのかもしれませんが、実用性を考えて黒檀のバージョンにしました。軸もあまり細くし過ぎないように気をつけました。

材質の特徴は職人ならだれでも説明していると思いますが、黒檀は密度が高くて重く硬いものです。ツゲは軽く密度が低いもので、それにしては硬いものです。ローズウッドも比重は重いもので木材の中では硬木ですが、黒檀よりは柔らかいです。
ローズウッドは現在では使われなくなってきていて、あご当てなどの選択肢が少ないので避けます。
ツゲは日本ではトラブルが起きたこと、音が明るく軽い感じの音になってしまうこともオールド風の音という意味では好ましくありません。もちろん本当のオールド楽器なら楽器自体が音を持っていますので問題ありません。付属部品で音が変わるのは期待するほどではなく、楽器自体の音が重要です。うまく作れていたのなら何でも良いはずです。
日本の楽器店の営業努力はすさまじいもので、これらの部品を変えると音が良くなると言って高級ブランドのものやローズウッドのものに変えさせるということをやって来たようです。しかしこのようなものは音をどうにかするために開発されているわけではありません。そのような話を聞くと日本では仕事が少なくそこまでがんばらなくてはいけないのかと思います。


ツゲのもう一つの弱点は、硝酸で染めないといけない所です。硝酸は危険な強い酸で木材を痛めてしまい耐久性が落ちます。ペグが折れることもありますがテールピースなどが古くなると壊れてしまうことがあります。微調整のために削るとそのたびに色をつけなくてはいけないのも劇薬だけに気を使います。また製品によって色味が大きく違います、あご当てだけ違うメーカーにしたらテールピースと色が全然合わなかったり、薄い黄色で色が明るすぎたりします。使っていると汚れて黒ずんでいくので大丈夫ですけども。新作楽器のお披露目にはちょっとがっかりですね。

他のあるのはスネークウッドというものです。これは日本で見たビソロッティにはついていました。流行りの高級ブランドのパーツメーカーにはスネークウッドのセットのものがあって、ブランド好きの日本向けにはピッタリです。しかしあご当てだけのものが無いので実用的には選択肢がありません。顎にうまくフィットしなければ終わりです。ペグが一本問題が生じると交換もできません。
うちでは実用性を考えて、ペグとテールピースとあご当てとエンドピンがセットになっているようなものは使っていません。

いろいろな形のものがあります。
左のものが一般的なガルネリというタイプのものです。もちろんグァルネリ・デルジェスが考案したわけでなく当時はあご当てはありませんでした。それに対して右のものはフレッシュというものです。フレッシュには古いものと新しいものがあり、これは新しいものです。新しいと言っても私が就職したときにはすでにありました。フレッシュは楽器の真ん中にあごが来るので、肩当などを使わない場合にはずれ落ちにくくなります。このように定番のモデルというのがいくつもあって、それを各メーカーが作っていてそれぞれ微妙に違います。人によって骨格や演奏スタイルが違うので実際にあてがってみないとわかりません。
最近はメーカーごとにオリジナルのモデルも出てきました。トレンドとしてはこの両者の中間的なものでしょう。左側の真ん中よりのものです。
左右反対の左利き用というものも実はありますが、使っている人は皆無です。

私がお薦めするのは上の二つのようにテールピースをまたぐものです。テールピースの左側につけるものは横板を破損させる危険があるからです。安いあご当てにしたばかりに高額な修理代になることがあります。先ほどオランダのヴァイオリンで説明しました。
テールピースをまたぐものは高さが高くなりますし、テールピースと接触することがあるとも指摘しました。


ビソロッティなら、日本の業者に売れば終わりで買う人も文句は言わないでしょう。うちで販売してる楽器は、試奏用に仮のあご当てがついているだけで他のものに変えることができます。楽器を選んだあとであご当ても選べるのです。巨匠の選んだパーツだからありがたく使わせていただくというが日本人の態度でしょう。うちでは通用しません。


スチール弦ではペグの動きに対して音の高さの変化が速すぎるので微調整が難しくアジャスターをつけるのが必須です。このためE線にはアジャスターがつけられてきました。チェロでは4弦ともスチール弦を使っているので4つアジャスターが内蔵されています。それと同じようなヴァイオリンやビオラのものも作られるようになっています。

木製のテールピースに4つアジャスターを取り付けると、ごちゃごちゃしてすっきりしません。重さが増えるので良くないという人がいますが、理屈が本当なのかはわかりません。少なくとも機構として気持ちよくないですね。
アジャスターが四つ内蔵されているものはドイツのウィットナーのものが機能性に優れています。かつては金属で作られていて、今はプラスチックのものが主流になっています。初心者用の楽器にはそれをつけています。
上級者になるとヴァイオリンではアジャスターはE線のみのものを使うのが普通です。

アジャスターの種類は一番右のものはヒルというタイプです。これは可動範囲が狭く、場合によってテールピースとうまく合わずに取り付けるのに改造が必要になることもあります。見た目はすっきりします。日本でこだわりの強い人や保守的な人は使っている人が多いです。弦の方も「ループエンド」になっているE線を使います。
うちでは真ん中のものを標準と考えています。可動範囲が大きく使いやすいからです。これは「ボールエンド」の弦が適合します。E線を買う時は気を付けてください。
一番左のものはチタンで作られているものです。これも軽いと音が良いという理屈で売られているもので値段がけた違いに高いです。


最近はアジャスターが内蔵されたテールピースも木製のものが改良されてきました。昔からありますが昔のものは金属部分と木材の部分の接合に問題があり異音などが発生することが多くありました。それでいて値段が1万円くらいして高いです。
今はチェロで新しいタイプのものが主流になって来たのでヴァイオリンやビオラにもラインナップされるようになってきて、値段も安くなってきました。
しかしとても安いものは弦を張った瞬間にプラスチック製の部品が破損してお釈迦になってしまうことがありました。
今でもそういうリスクはあります。うちは専門店なのでスペアパーツが入手できます。

このようなタイプのテールピースではネジの位置に注意が必要です。弦のボールをひっかける所とネジが近すぎると指が入らなくなります。したがって機能的には木製の高級品よりもプラスチック製のウィットナーのほうが未だに優れています。このため高価なチェロにウィットナーがつけれられていることがよくあります。不具合が発生して応急処置としてウィットナーに交換しそのままというわけです。

ウィットナーも金属製の時代には木製のものに変えると音が良くなった経験をしました。しかし今はプラスチックなので音が悪くはないと思います。素材としての安っぽさは増したので見た目の問題ですね。

テールガットはかつては文字通りガットが使われていました。今はプラスチックのものが主流でカーボンやケブラーもあります。正確にはテールガットではありません。
プラスチックのほうが音がマイルドで穏やかな音になります。プラスチックという素材はそんな音です。カーボン系のほうがダイレクトで強い音になります。楽器によってどちらに持って行きたいか選ぶことができます。金属のものは細いのでサドルという黒檀の部品に食い込みます。あまりおすすめできません。



付属部品などは自分で作ったこともありますが、耐用年数を考えると経済的ではありません。
のん気に仕事ができる環境があれば自分で作ったらいいかもしれません。しかし機械で同じものをきっちり作るのが良いと思います。中国やインドの製品にもよくできているものがあります。テンペルのコピー商品として造形のの甘さを真似ているものさえあります。それなのに材質まで安いものではガッカリです。インド製のものではその点、材質も加工も良いものがあります。そういうものはすぐに売り切れて手に入らなくなってしまうかもしれません。それでもスイスモデルはもう良いものが出てきません。

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