【初心者の疑問】 子供用の弦楽器について | ヴァイオリン技術者の弦楽器研究ノート

ヴァイオリン技術者の弦楽器研究ノート

クラシックの本場ヨーロッパで職人として働いている技術者の視点で弦楽器をこっそり解明していきます。

こんにちはガリッポです。

時々質問がありますが、子供用の楽器についても、誰も教える人がいなければ情報が無いです。

うちの店では子供用の楽器はレンタルで貸し出しています。9割以上はこれを使っています。何故かというと成長するごとにサイズが変わるので自分で買ってもいずれ要らなくなるからです。合理的というか実用的な考え方です。東アジアと違ってヨーロッパでは教育にお金をかけるという慣習が無いというのもあります。

サイズはとても細かく分かれています。
大人用を4/4と言います。
3/4、1/2、1/4、1/8、1/16とだんだん小さくなっていきます。
このため子供用の楽器のことを分数楽器と言います。
実際には数センチずつ小さいだけで数字ほど小さくありません。

理論上はいくらでも小さくできますが、どこまで低い年齢で弦楽器を弾けるかという問題にもなってきます。

それともう一つの問題は弦が短くなると、大人用と同じ音程の音を出すのが難しくなります。ピアノでもハープでも低い音の弦が長くて、高い音の弦が短くなっているのが分かると思います。弦の長さが音程に関係するからです。ギターやヴァイオリンの場合には指で押さえて振動する範囲を短くすると音が高くなるのはご存知でしょう。
音の高さを調節するもう一つの方法は弦の張りの強さです。ギターやヴァイオリンでも調弦するときに弦を緩めたりきつく張ったりすることで音の高さが変わります。ピアノでは専門の調律師がいます。
このため小さな楽器では弦が短いので張りを緩くしないといけません。余りにも弦が短くなってくると張りが弱くてプランプランになってしまいます。

さらにもう一つの要素は弦の重さです。
一般に低い音の弦のほうが太く、高い音の方が細くなっているのは、重さを変えるためです。短い弦の長さで低い音を出すには太くしないといけません。しかし材質によって重さが違うので、必ずしも太い方が低い弦とは限りません。
大人用の弦でも同じ銘柄のものでもゲージと言って太さが違うものがあります。太いものは重いので同じ音程にするにはより強く張る必要があります。このため張力が強くなります。

難しいのは子供用のチェロです。
1/8までならチェロとして成立するでしょうが、それ以下になると難しいです。大きさはビオラくらいになりますが、1オクターブ違います。1/16は難しいです、うちレンタルしているものでは最小がその間の1/10という変則的なものがありますが、C線はプランプランです。ただ音を出す練習ならビオラ弦を張ることもできないことは無いでしょう。そのあたりは教育法の問題ですね。

チェロ弦は1/8からラインナップされていて、ヴァイオリンは1/16からあります。メーカーによっては最小のものがない場合もあります。

バロック用のガット弦には分数用は無いでしょう。特注で応じてくれることはありますが、メーカーは1セットだけを製造するのは手間となるようです。
変則的なサイズのものは簡単に考えるべきではありません。楽器は作れても弦が無いと音を出すことができません。

1/4くらいからが一般的です。戦前のものでは1/16のような小さいものは見たことが無いです。低年齢化が進んできたという事でしょう。弦楽器じゃなくても音楽自体は習うことができます。


通常はヴァイオリンとチェロに子供用があります。
しかしビオラも無いことは無いです。かつては、ヴァイオリンから初めてビオラに転向するのが一般的でした。今では初めからビオラを習う子供が増えてきました。はじめから子供用のビオラとして作られたものがありますが、ヴァイオリンに分数ビオラの弦を張ることができます。ドミナントが有名な弦メーカー、トマスティクの場合、4/4のヴァイオリンと同じ大きさで1/2のビオラになります。つまり弦が無いと無理ということになります。
ビオラ専用として作られた楽器は横板が高くなっているくらいで、私は音に違いは無いと思います。

コントラバスは大人でも4/4ではなく3/4を使うことが多いです。4/4は巨大すぎるというわけです。このため1/2のものは学校などで使われています。




まずは先生に相談すると、先生からサイズを言われるかもしれません。
年齢によって決まるのではなく、体格によって決まります。身長ではなく腕の長さです。
しかしうちではお子さんと一緒に来て実際に試してサイズを確認することを薦めています。ヴァイオリンの場合には楽器を構えて、左手を伸ばしてスクロールのところを余裕をもって握ることができるくらいが正しいサイズと考えています。
サイズが大きい方が音が良いということで先生などはサイズの大きなものを薦めるかもしれません。しかし今言ったサイズでも大人がビオラを持っているくらいの大きさです。体への負担を考えましょう。

チェロの場合には何となく構えてみて、こんなもんという感じです。

弓も楽器に合わせてサイズが違います。

ケースも違います。
特にチェロの場合には、ハードケースとソフトケースというものがあります。ハードケースはカーボンのような素材があり軽いものほど高価です。大人用のもので10万円位は普通です。チェロはとんでもなくお金がかかります。
それに対して安いのはソフトケースで、これは布のカバンのようなもので多少のクッション性はあるものの、強い衝撃から楽器を守ることができません。ネックが折れたりすると修理代はとても高く、量産楽器の場合には楽器の値段を超えることもしばしばです。

分数楽器の値段


うちではレンタルを使っているお客さんが多いですが、実際に買うこともできます。分数楽器は殆どが大量生産品です。何故かというと使用期間が限られているのに値段が大人用と変わらないからです。

メーカーや商社のカタログを見ると、同じ商品名のものにサイズがあります。ちょうど服のように同じデザインでサイズが違うのです。値段はすべて同じです。
私の服のサイズは日本ではMサイズですがこちらではSかXSです。XL,XXLよりも材料が少ないので安くしてもらい所ですが値段は同じです。それどころか店にはMからしか置いていないことがほとんどです。

弦楽器の場合には材料代は全体の製造コストのうちわずかでしかありません。作業に手間がかかるので、そちらのコストがほとんどです。機械で作る場合にはさほど変わらないという事と、さらに細かいものを作る方が難しいということもあるでしょう。これもイメージとは違うでしょう。材料なんてのは楽器の値段に占める割合は微々たるものです。量産楽器というのはそのわずかな材料費さえケチって作られています。このため通常、量産楽器は材料を見れば楽器のランクが分かります。

つまり楽器を作るのは労働としてとても大変なのです。
楽器を作るだけでも大変ですから、手抜きが横行するわけです。全力を尽くして楽器を作るのが当たり前ではありません。まじめに作られている事さえ少なく、楽器を完成させるだけで精一杯で、さらに「音を作る」なんてレベルではないです。
研究開発したところで、正確に同じものを作らないと意味がありません。そんな精密に楽器を作ることさえできません。

弦楽器とはそういうもので全く同じに作っても音は微妙に違います。このため試奏して選ばないといけません。ヴァイオリンよりもはるかに精密に作られてきたのが弓です。それでも同じメーカーでも一本一本違うので試してしっくりくるものを選ばないといけません。良い弓の理論や計算式があって欲しいと思う人がいても、そういう物なので仕方ないです。カーボンの弓でも完全に同じではありません。私が変わっているのではなく、経験豊富な職人に聞けば同じように言う人が多いでしょう。
これは弦楽器に限らず昔はそういうものだったようです。アンプに使う真空管も同じ生産ロットでさえ特性にばらつきがあります。専門店では測定してペアやカルテットを選んでくれます。しかしユーザーが「音が良い真空管はどれですか?」という質問をすると答えてくれません。電気的な特性は言えても、音は客観的に評価できないからです。そして有名ブランドのビンテージものに高値がついているのも同じです。しかし真空管の専門店は誠実であるほど音が良いとか悪いとかは決して言いません。



大人用と値段が同じならかわいらしい小さなヴァイオリンでも今の西ヨーロッパの生活水準なら職人が丁寧に作ったら200万円以上になるでしょう。チェロなら400万円くらいになるでしょう。このためハンドメイドの分数楽器は殆どありません。私は一つも作ったことがありません。職人が自分の子供のために作ったという例を知っているくらいです。

小さな楽器ほど精密さが必要なので精巧に作ることが音の良さに直結することでしょう。まじめに作るだけで分数楽器の中では最高ランクのものができるはずです。しかし楽器を作るというのは大変難しい作業なのです。人生をかけてヴァイオリン製作学校に入ってもあまりの難しさに3か月以内に8割ほどが辞めてしまうのは、それくらい大変で難しいのです。才能があるからチャチャっと作れるというものではありません。逆に誰でも訓練が必要なので、訓練さえすれば誰にでも作れるのです。
まじめに作ってあれば既に「良い楽器」であり、音は好き好きと考えています。業者としては手抜きをして安く作られたものを、ウンチクを語って高く売れば成功ということになります。


このため「分数楽器=大量生産品」と考えて良いです。
大人用と同じ値段といっても、量産メーカーでも大人用しかないグレードがほとんどで、子供用のサイズがあるのはその中でも安いものです。値段は大人用と同じでも低ランクの製品にのみ子供用があるというわけです。したがって、子供用の楽器で買えるのは量産品の中でも低ランクのものです。

これも、イメージと実際がかけ離れている例でしょう。それくらいが弦楽器は高いものです。

非常に安いものだと中国製でケースや弓がセットでヴァイオリンなら2万円、チェロでも4万円位でしょうか。しかしそれらは、演奏上問題があります。まず弓がヘナヘナでまともに弾くことは困難です。ペグは動かず調弦ができず、駒のカーブがおかしいので弓がほかの弦を触ってしまいます。テールピースはドイツのウィットナー社のコピー商品ですぐに壊れてしまい、弦もドミナントなどの偽物があります。
それらをやり直すと5万円以上かかります。このためうちではレンタルを薦めています。

弦楽器専門店以外の楽器店やオンラインショップなどで買って、幸運にも不具合が無ければ一度も職人の世話になることが無く、修理もされなければ使い捨てということになります。

これは1/8の新品のチェロで、うちでレンタル用として貸し出すものです。
小さいというだけで大人用のものと同じです。駒も同じように手間暇がかかります。




工具も小さいものを使えば縮尺が違うだけです。

メーカーで取り付けられている駒では演奏上問題があるかもしれません。そこでうちでは駒がついていない状態で仕入れて取り付けます。

弦はダダリオのスチール弦「ヘリコア」を張っています。
チェロ弦はスチールで古い銘柄ほど耳障りで嫌な音がします。安い量産楽器も同様の音がするものです。ヘリコアはピラストロ・クロムコア、トマスティク・スピルコアなどに比べても現代的なものです。新しい製品ではヤーガーのヤングタレントというのが安くて注目です(1/4から)。

電気を使わない製品は昔の方が優れていた?


スマートフォンでも10万円を超えれば高価な部類に入るでしょう。弦楽器は10万円でも最低のランクなのです。アナログ製品というのは、ある程度で完成されてしまい技術革新や改良が起きません。そうなると価格競争になり、どんどんコストが削減されて行きます。今の物価の上がり方を考えても、かつては当たり前に買えていたものさえ今では高価になっています。同じ値段ならはるかにコスト削減がなされた手抜き商品ばかりになっています。生産国も中国に切り替わっています。

改良され続け右肩上がりで性能がよくなるとともに、価格が下がっていくと考えているなら電気製品くらいですよ。その結果、日本の電機メーカーがどうなったかは皆さんも知っているでしょう。自動車などは同じ名前のものが数十年前の倍くらいの値段になっています。改良が進んできたというよりはグレードが上がったと考えたほうがいでしょう。

ヴァイオリンなどはアマティが作った時点ですでに最高水準であり、そこから下がるしかありません。現代の職人にアマティほどのものが作れる人の割合がどれくらいあるでしょうか?

これもハイテク技術に詳しい人ほど理解できないことでしょうね。
電気製品や自動車を職人が手作りで一つ一つ作っているものなんてないですよ。
進歩しているのは量産品だけです。機械の性能が上がっているので安いものは昔のものよりは良くなっています。



私はハンドドリルを購入しました。

これは50年くらい前にイギリスで作られたものです。アメリカのスタンレー社がイギリスのシェフィールドでも量産していました。今、こちらのホームセンターなどで売っているものはひどい粗悪なものです。穴をあけることが困難です。穴をあけるための道具なのに穴をあけることができません。そんなものが売られています。
日本ではまだ日本製のものがあるでしょうが、アマゾンなんかを見れば中国製で、使った人はギアがガチャガチャしてスムーズに回らず穴をあけることができません。ドリル刃も安ものなら、木材も荒いもので、穴はぐちゃぐちゃです。木工品のクオリティも安物です。

美しいのは戦前にアメリカで作られたものです。
https://oldtoolheaven.com/millers-falls/hand_drills/drill2.htm
アールヌーボーのような時代を感じさせるデザインセンスもありますが、機能的によく考えられていて、肉抜きにより重量も軽く持ちやすいことでしょう。今では電動のものが主流ですが、当時はそれくらいの意欲をもって製品を作っていたのです。その後は、多くの工具メーカーが安価なコピー商品を作り、価格競争になるとさらにコスト削減が図られました。日本で作られているものも、デザイン的にはチープなものです。50年前のものでも実用品としてはまだ使えるレベルにありました。それでイギリス製のものを購入したのです。値段はビッグマックくらいでしょうか。送料の方が高いです。今はこんな道具を使う人自体がいないのです。新品の中国製の全く使用できないものが3000円ほどです。

100年前のアメリカ製の美しいものでも1万円くらいで買えます。
しかし実用として摩耗などもあり状態が買ってみないと分かりません。
スタンレー社の手動工具は1920年頃をピークに右肩下がりで品質が落ちています。ネジの一つまで少しずつ安物に変わっています。50年くらい前のものなら、質は落ちていますが修理をせずに実用で使えます、掃除して油を差したらスムーズに動きます。実際に穴をあけてみても問題がありませんでした。まだ手動の工具がプロに使われていた時代だからです。

ドリルの構造は簡単なものですが、スムーズに動いて、安定感があり、効率よく力を伝えられるのは作るのにノウハウと品質の高さがいるはずです。弦楽器も似ています。

このようなことを経験していると、手動のアナログの製品は100年前のものの方が質が良く右肩下がりで品質が下がっていくのは普通です。機械で大量生産ができるようになって、経済は豊かになったようですが、チープなものが普通になっただけで、ハンドメイドのものは相対的にどんどん高価になっていきます。昔は普通の製法だったものが今では高級品となります。コストダウンの製造法が進んだからです。

弦楽器でも100年前にまじめに作られたものなら、今の職人のものと何も変わりません。当時の職人もいろいろな実験や工夫をしていました。100年後の我々の方が自動的に優れたものが作れるようになっているわけではありません。


弦楽器もハンドドリルと同じような運命のものです。
電子楽器やシンセサイザーは進歩していると思いますよ。
進歩したものが欲しいならそちらを買ってください。

量産品は機械の性能が上がり質が上がっていますので、30万円位のルーマニアのヴァイオリンではかなり音は良くなっています。

西ヨーロッパの経済水準なら、ハンドメイドでヴァイオリンを作ると200万円以上、チェロなら400万円以上になります(2023年10月現在)。左翼政党はデモをして労働時間の削減を訴えています。週4日労働を実現すればさらに高くなります。ヴァイオリン製作学校を出たての若い職人は、そのような考え方を持っていて、長時間労働なんてしません。



そこを何とかできないかと皆さんは考えるでしょう。それが「手抜き」です。
新作楽器に200万円も出すなら100年前の無名な職人がまじめに作ったものの方が値段が安く、よく鳴るようになっていて音が良いのです。だから職人が新作楽器を作るのに合理性が無いのです。


現実はそんな状況です。
そこで私は特殊な音の好みに特化しているというわけです。単に音が良いだけなら中古品の方が安く対抗できません。

日本の業者が輸入する場合、末端価格はその何倍かになるわけですからそんな高いものは輸入しません。はるかに安い値段で卸す職人からしか買いません。輸出に特化して安い値段で卸す職人が「国際的な流通ルートに乗る」というわけです。「国際的に評価される職人」というのはこういうことです。
その値段では仕事を受けない職人は、地元でしか楽器を売らないということです。

日本には「普通の音が良い楽器」が無いので新作楽器でも対抗できるというわけです。

上等な分数楽器は?


「分数楽器=量産品」というわけですが、その中で上等なものはどんなものでしょうか?

弦楽器では普通は古いものが音では有利になります。安価な楽器というのは間違いなく粗雑に作られています。しかし値段が高くても粗雑に作られたものがあります。品質ではなく生産地や知名度で楽器を選ぶ人がいるからです。ニセモノもあります。

安価な楽器で品質が高いものはありません

したがって量産楽器は粗雑に作られているので、古いか新しいかよりも、品質が大事になるわけです。分数楽器の場合、どうせ皆雑に作られているのなら古い方が上等と考えられるでしょう。

私が見たことがあるのはミッテンバルトのノイナー&ホルンシュタイナーの3/4のヴァイオリンです。ヴィヨームの弟子のルドビヒ・ノイナーの4/4の作風に近いものでとても美しいものでした。ヴィヨームの分数版という感じでした。しかし、同じメーカー名でもグレードがいろいろあるのでメーカー名で判断はできません。
ドイツで戦前に作られたものにもランクの差があります。マルクノイキルヒェンのものでも3/4になればかなり上等なものがあります。それより古いものとなるとミルクールのものですが、量産品は品質が様々でフランス製にこだわることは意味がありません。

才能があって親が熱心ならマルクノイキルヒェンの戦前の分数楽器を買う人もいます。次のサイズになる時に下取りするのです。また楽器の価値に応じて個別に料金を設定して上等な楽器のレンタルをすることもあります。

ともかくドイツ製かフランス製か、新しいか古いかは関係なく実際に弾いてみて音が良いものを選ばないといけません。才能のある子ならなおさらです。骨董品として選ぶのは親の趣味でしかありません。

最近は買う人が少なくなったので3/4は戦前のものが豊富にあります。売りに来る人がいても買い取ることもできません。こちらでは余っているので日本に輸出したらいいかもしれません。


オールドの時代には子供の教育用として小型のものはあまり作られていなかったでしょう。しかしサイズが定まっていなかったので、今では大人用として使えない小さなものもあります。

うちにはミッテンバルトの3/4のオールドチェロがありますし、クロッツのチェロも7/8くらいしかありません。

ヴァイオリンもアンドレア・アマティのものなら3/4くらいの小さなものがあります。またピッコロ・ヴァイオリンと呼ばれる小さなものがありました。これは規格が定まっておらずなぜ作られたのかもよくわかりません。胴体だけが小さくネックは長かったりします。子供用ではなく高い音を専門に受け持つ楽器として考えられたのかもしれません。ちょうどフルートのピッコロと同じですね。

しかし一般的にはミルクールやマルクノイキルヒェンの上等な量産品が子供用としては上級品となるでしょう。

このような古い楽器の鳴りの良さを知っていると4/4にするときでも新作楽器ではいくらウンチクや理屈を言われても物足りなく感じることでしょう。

分数楽器の現実

楽器を買うなら良いものを買いたいと思うかもしれません。しかし大人用と値段が変わらないのに使用する期間が短いので最善を尽くして作られた分数楽器はビジネスとして成立しません。

小さい楽器なら、精密に作られていることが音の良さに直結することが言えるでしょう。しかし現実にはそのようなものは作られていません。

私は子供用の楽器を作ったことがありません。機械ではなく手作業で作れば、サイズが小さいことで作業量が減ることでしょう。材料も節などを避けた余り物でできるかもしれません。このため量産品とは違い多少安くできるかもしれません。ほとんどのコストは作業によるものです。

工具も合わずに作ることさえできないかもしれません。木枠や型から作らないといけないので手間がかかります。音のためには小さな楽器ほど板は薄く作るべきでしょうが、子供が使って故障が起きるかもわかりません。経験もノウハウもありません。

工具から作り始めたら、完成する頃にはお子さんが大きくなっているかもしれません。

だから量産品を使うのが現実です。
現実を知らずにものを考えると机上の空論になってしまいます。