アルコールニスとオイルニス、フルバーニッシュとアンティーク塗装 | ヴァイオリン技術者の弦楽器研究ノート

ヴァイオリン技術者の弦楽器研究ノート

クラシックの本場ヨーロッパで職人として働いている技術者の視点で弦楽器をこっそり解明していきます。

こんにちはガリッポです。

ニスを塗る仕事をしているのでニスの話をしましょう。
今回は一年以上前に当時見習だった後輩が作ったヴァイオリンのニスを私が塗ることになりました。
本人が塗れば良いのですが、楽器の本体が結構綺麗にできてしまったので、ニスが未熟だと台無しになってしまいます。それくらいニスが与える楽器の高級感は大きいです。
私は自分で塗るべきだと思いますが、「会社の商品」として完成度を確保するために私が塗ることになったのです。ほかにも後輩が作った楽器があるのでそれは自分で塗ってもらいたいです。
練習だけなら工場で作られた未塗装の楽器を買ってもできますのでしっかり練習してもらいたいものです。

したがって次に後輩が自分の楽器のニスを塗る方法を教えることを考えながらやっています。作業手順を確立したいです。
まずこれを何回やって、次にこれをやって、最後にこれをやったら完成・・・と行くと良いのですが、状況を見ながらやり方を変えて軌道修正をして行かないといけません。
大量生産のようにたくさん作っていれば、やり方も確立してマニュアル通りにやれば良いでしょう。そこまでの数がありません。塗装だけを担当して仕事をすることもできません。いかにはじめは美しいと思っても、同じものばかり作っているとそのうち飽きられてしまいます。

一方技術は常に一長一短でより良い結果を得ようとすると、相反する問題が出てきます。このため綱渡りのような微妙なバランスで毎回危なっかしい作業になるわけです。
軌道修正ができるように使えるカードを揃えておくことも重要です。
具体的には色や濃さの違うニスを用意しておくことです。
柔軟なものを混ぜて柔らかくすることもできます。逆は難しいです。


アルコールニスとオイルニス


その後輩はすでにアルコールニスでヴァイオリンを塗る方法は学んだ経験があります。しかしアルコールニスでも1回くらいでマスターしたとは言えないでしょう。自分でニスを作ったわけではないので、与えられたニスがたまたま塗りやすいものだったかもしれません。

2本のヴァイオリンでアルコールニスと、オイルニスの両方を教えたいと思っています。とはいえ私はアルコールニスは長らく使っていないので忘れてしまっています。見本が見せられるか心配です。
たまたま私が20年近く前に中国製の白木のヴァイオリンに塗ったものがメンテナンスに来ていました。うちでは中国製のものを使ったのはその時くらいでした。
アルコールニスの塗り方を研究していた時期のもので悪くないですね。
中国産の木材は少し灰色っぽくて色に深みが出ていつもよりも雰囲気が良かったです。裏板は一枚で雰囲気の良いものでした。横板はいかにも中国産の木材という雰囲気のものです。
中国産の木材は見た感じがヨーロッパのものとちょっと違うので見るとわかります。でも何がどう違うと説明するのは難しいです。特にチェロの量産品ではネックの部品だけ中国で機械で作られたものを使っている場合もあってわかります。

2000年代に比べると今のほうが量産楽器の質は高くなっているようです。その頃は中国製はとても物が悪くてどうしようもないと思われていましたが、値段の安さも驚きでした。弦楽器に限らず中国の経済水準向上に伴って今では中国製品の値段は当時の倍くらいになっています。今でも安いのは安いのですが、かつてのような驚くほどではありません。高級品すらあります。

うちでは中国製品は扱わないという方針があって安価なものはルーマニアから買っていますし、ヨーロッパのメーカーが中国で作っているものはメーカーが何処製とは言わないので楽器を見て品質だけで評価しないといけません。

他に安いものは古い大量生産品、つまり中古楽器も多いです。ヨーロッパには不要になっているヴァイオリンがいくらでもありますから、簡単な修理で売りに出せるものなら直して売る方を優先します。


アルコールニスとオイルニスについてどっちが音が良いかという話は、技術者なら誰に聞いてもどっちでもいいとしか言われないでしょう。
アルコールニスにもいろいろな質のものがあるし、オイルニスにもいろいろな質のものがあるからです。また楽器本体との相性もあるでしょう。
多くの楽器で共通するはっきりとした音の違いを聞き分けることはできません。

ニスを塗る作業で言うと、均等に塗るのが難しいのがオイルニスです。さらに難しいのがアルコールニスです。どちらも難しいです。

「ムラなくニスを綺麗に塗る」というのが職人にとっては困難な課題で多くの職人が到達できません。それで「アンティーク塗装に逃げる」わけです。下手な職人はズルい所があるので、ズルい人はアンティーク塗装ならニスが均一に塗れていなくても良いと安易に考えます。簡単に思いつくズルの仕方は同じなので似たようなものになります。単に汚らしいだけのものだったり、全く古く見えなかったりします。

ところが私はニスを均等に塗るのはアンティーク塗装の完成度を高めるために基本的な能力だと考えています。例えば色味を全体的に落ち着かせたいとなったときに緑っぽい茶色や黒の色が入ったニスを均等に塗れば、ケバケバしい黄色だったのが黄金色になっていきます。そのような微調整がアルコールニスでは不可能に近いです。
そもそもアルコールニスではアルコールに溶かせる天然染料が鮮やかな色ばかりで、赤、オレンジ、黄色のような色ばかりしか使えません。そうするとアンティーク塗装ではニスが剥げている部分の色がなかなか出せないです。私もかつてはアルコールニスでアンティーク塗装をやっていたので、塗っては溶かして剥がしてを繰り返して人工染料が一番良いという結論に達しました。
ただし、すべてを人工染料にすると量産楽器のように見えます。量産楽器は人工染料だけを使っているからです。

オイルニスでは落ち着いた色合いを出すのは簡単です。琥珀色が樹脂自体の基本の色ですから。松脂のような樹脂の場合加熱して処理すると真っ黒になります。それをニスにするとその時点で琥珀色なのです。その琥珀色をアルコールニスで作るのは至難の業です。だいたい松脂が化石になったものが琥珀ですから。

当然琥珀からニスを作ることもできますが、不思議とそれほど琥珀色ではありませんでした。色はもう少し薄かったです。コパールのほうが濃い色が出ました。

逆にオレンジのような鮮やかな色を出すにはこの琥珀色が邪魔をします。サンダラックを使えばずっと無色のものができます。サンダラックもある種の木の松脂みたいなものです。

こういう違う色味のニスを用意して使い分けることで、アンティーク塗装ならオリジナルのニスの部分と、はげ落ちた部分の色を作ります。これがアルコールニスだと鮮やかな黄色~オレンジ~赤しかできないので、ニスが剥げたところが黄金色ではなくて黄色になってしまいます。白木の上に黄色を塗ればレモンイエローです。私の目にはそれが痛く感じられます。
それが苦労の始まりでした。

しかし師匠や先輩にはその黄色がおかしいということをいくら説明してもわからないようでした。黄色の色で満足してしまうのです。そんなものです。

見えるか見えないかに能力差が出ます。



アルコールニスを作るには材料の樹脂と染料を高純度のエタノールに漬けてしばらく置いておくと、溶けてニスができます。溶けにくい場合には加熱したり精油(エッセンシャルオイル)などを加えることもあります。

この時、暖めたほうが溶けやすくなりますので、湯せんします。エタノールは自動車などの燃料にもなるものですから、直接火にかけると引火する危険性があります。湯せんでも水よりも沸点が低いので温度が高すぎるとどんどん蒸発してしまいます。湯せんして温めるくらいなので火を使うというほどのものではありません。

それに対してオイルニスを作るには数百度の温度が必要です。
このため難易度が高くなるのです。火加減や時間をミスすると焦げて炭のようになってしまいます。天ぷら油のように脂類も可燃性です。


実際にニスを作ったり塗ったりする作業をするとアルコールニスとオイルニスでは全く違います。
しかし音が良いか悪いかは副産物のようなものです。
作業性が良く、見た目が綺麗で、耐久性があること・・・その結果そのニス固有の音があるというだけです。

ある自動車メーカーはエンジンの音が良いということで評判になりました。「何か音を良くする秘密があるのか?」と聞かれるとエンジニアは単に高性能なエンジンを目指して作っただけだと言います。いくつか試作したエンジンの中で実用化したものがたまたま音が良かっただけです。時代が変わって低燃費が求められエンジンブロックが変わると音も変わってしまいました。今は電気モーターを使った自動車の開発に従事していることでしょう。


ギターのことはちょっと調べただけなので詳しくありません。
60~70年代のエレキギター用のギターアンプでもアメリカのメーカーはアメリカ製の真空管を使い、イギリスのメーカーはヨーロッパの真空管を使いました。今ではどちらも生産されなくなり、技術の進歩が止まっていて工場が残っていた中国やロシア、東欧でのみ製造されています。形式だけが残っていて今でもアメリカの規格のものかヨーロッパの規格のものかどちらを選ぶか論争になっているようです。

それでアメリカのサウンド、イギリスのサウンドというのですが、技術者によると当時手に入りやすい真空管を使っていただけだそうです。真空管は楽器用に作られていたのではなく通信や電気製品、軍事技術に必需なものでそれに合わせて改良されていました。
工業製品を作る場合コストや安定した供給は大事だからですし、部品メーカーも自国では営業力が勝っています。コネができてくると継続して納入するのは普通です。音で選んだわけではなかったようです。

それを伝説的な名プレイヤーが設計者の想定を超えた使い方をして変わった音が出るのを面白がって、後の時代の人が憧れて「独特のサウンドのためにはその真空管じゃないとダメ」となって行った、そんなようなことでしょう。変な使い方が流行した楽器というのはいろいろあるようです。


オイルニスは古代エジプトの時代から西洋ではあります。日本には無かったのでなじみがなくよく知られていません。漆の文化ですから漆塗りの高級品のほうが知られているでしょう。とても優れた塗料があったのです。19世紀には西洋で漆を模した塗料が作られたくらいです。

ストラディバリの昔には純度の高いアルコールを製造するのが困難だったのでアルコールニスがそもそも作れませんでした。19世紀には天然樹脂のオイルニスが工業的に量産されていたようです。その時代まではオイルニスや油性のエナメル塗料が工業用塗料として最も優れたものだったのです。ラッカーが実用化されると一気に廃れてしまいました。

高純度のアルコールが精製されるようになると様々な分野で使われました。
クラシックギターではアルコールニスの一種の「シェラック」が使われています。均一に塗るのか難しいので刷毛で塗るのではなく布に染み込ませて磨くように塗りこんでいきます。アルコールがそれまで作った層を溶かしてしまうので素早く布を動かさないといけません。一回でできる層がとても薄いのでものすごい回数が必要です。私も修理ではやることがあります。

ピアノでも真っ黒な「ピアノ塗装」ではなく、銘木をそのまま使ったものがありました。木自体に色があるのでニスで色を付ける必要が無くシェラックで仕上げたようです。グランドピアノに南洋の高級な天然木、象牙の鍵盤と今から考えるととんでもないものでした。植民地支配の時代だったこともあるでしょう。一方ヴァイオリンは身近な木材で作られています、その代わりニスで色を付けました。

ギターの場合も木自体の色のままでシェラックを使うわけです。ニスは色があると色ムラを生じさせず塗るのがとても難しくなります。アルコールに漬けるだけで製造できるシェラックは作るのも効率が良いです。それでもその後はラッカーやアクリルのものがスプレーで塗られるようになり、それらに比べるとコストがかかるシェラックの塗装は高級品となりました。結果的に極薄のシェラックとスプレーで分厚く塗ってバフの機械で磨くラッカーやアクリルでは音も違うというわけです。つまりギターではシェラックが高級品です。ヴァイオリンではシェラックよりもオイルニスのほうが高級品です。歴史の浅いエレキギターではラッカーが伝統的な高級品だとされています。

つまり新しい時代には生産効率が良いものが次々と考案されていって、相対的にコストがかかる古いものが高級品と信じられるようになっていったようです。

ともかく一言で「アルコールニスはこんな音、オイルニスはこんな音」と説明することはできません。ニスの質も様々なら音への影響はニス以外の要素も大きいからです。結局弾いてみるしかないのです。





フルバーニッシュとアンティーク塗装


もう一つニスに違いがあるとすれば、フルバーニッシュとアンティーク塗装があります。フルバーニッシュは一色のニスですべてを均一に塗ったものです。先ほどのように非常に難しいのでこれが見事にできれば一人前の職人ということになります。量産品と違って高級品ということになります。
それのほかに古い楽器に見えるような塗装を施したアンティーク塗装があります。また古い楽器そっくりでなくても、古い楽器が持っている趣を加えることでピカピカの新品にも隠し味的な効果を与えることもできます。



先ほどは見えるか見えないかに才能が必要だと説明しました。

これが木材を加工するだけなら、まじめに訓練すれば誰でもできるようになります。さらに「音」となると職人の腕前はあまり関係がありません。下手な職人の楽器のほうがうまい職人よりも音が良いと感じる演奏者がいます。そのような演奏者に「あなたは間違っている」と説教する職人は勘違いが甚だしいですね。

もし職人の才能の違いが出るとしたらアンティーク塗装です。
ただ均一に塗るだけならまじめにやればできるようになりますし一人前の職人なら誰がやっても同じように見えます。アンティーク塗装の雰囲気は才能によって大きな差が出ると考えて良いと思います。
もちろん古い楽器なら偶然ということもあります。木材やニスの組み合わせ、汚れや摩耗がたまたまマッチすると急に立派に見えることがあります。新しい楽器でも偶然の要素はあります。

しかし私が納得するまで仕上がれば最終的にはいつも同じような雰囲気になりますし、他に似たようなものを見ることがありません。個性や流派の特徴はアンティーク塗装のほうが出ます。


ただし買う人が見えるかと言えば、プロの職人や楽器店の営業マンでも分からないのに、何の訓練もしていない人が見えるとは思えません。私から見ると汚いだけの楽器でも古く見えるので音が良さそうだと試奏でも有利になるようです。アンティーク塗装のものの方が売れるのは確かです。そのためドイツなどの大量生産でもアンティーク塗装のほうが多いくらいでした。


日本では特殊な事情があってイタリアの新品の楽器を売ってきました。これを絶賛するために他のものを悪く言う理屈を作って営業をやってきました。
アンティーク塗装で作られたドイツの量産楽器は悪いものと決めつけるように仕向ける必要がありました。実際には弾いてみればこのような量産品のほうが格上であることは珍しくありません。
100年くらい前の量産品で比較的品質の良い50万円くらいのヴァイオリンなら、新品のどんなものよりもよく鳴ると感じることは多いです。でもそのようなことがあってはならないのが日本の楽器店の店頭です。

このためアンティーク塗装を悪く言う理屈が考え出されました。
「アンティーク塗装=ニセモノ」、ニセモノを作る職人は志が低いとか「大量生産品は個性がないからダメ」などが言われました。しかし単純に弾き比べてみると没個性の楽器の音が良いことがあります。音が良い楽器が欲しいならこのようなウンチクは必要ありません。一方「個性」というものを客観的に「見事な個性だ」ということはできません。意見がバラバラになります。珍品やお手本通り作る技術が無いのと区別はできなくなります。
「明るい音神話」や「厚い板が本物説」などもそうですね。仕入れができる新しい楽器では板が厚く明るい音がするものが多いからです。古い方が枯れた渋い音がします。それを悪く言うために作り出されたのでしょう。
「薄い板は初めは鳴るけども・・」という説も聞かされます。薄い板の楽器は100年経っても鳴ります。300年経っても名演奏者に使われています。



世界ではアンティーク塗装の方が売れるという現実は受け入れています。現代の職人で楽器製作でやっている人は半分くらいはアンティーク塗装をやっています。ヴィヨームなどモダンの作者でも高く評価されていて、同じ作者ならアンティーク塗装のほうが値段が高いくらいです。

「アンティーク塗装=ニセモノ」ではありません。
アンティーク塗装も職人の個性です。

職人は初めにフルバーニッシュを学びます。そこからアンティーク塗装に挑戦していきます。最初は汚いだけのものができます。ほとんどの人はそれで満足してしまいます。本当の古い楽器のとの違いが見えないからです。

試行錯誤して多くの経験を積んでいくと、古く見える瞬間を経験します。そういうものを積み重ねていくと、完全にリアルでなくても雰囲気を出すことができるようになります。私はそのような職人は「うまいな」と思います。
ヴィヨームなどはまさにそうで、凝りに凝っているのではなく簡単なことしかやっていないのに古い楽器に見えるのです。それがうまいなと思う所です。

もちろん名器そっくりに細部まで凝ったレプリカを作る人もいます。
その手間暇たるやフルバーニッシュの比ではありません。
はじめに皆が習うフルバーニッシュよりもうまく作れる人が少ないです。


最近ではイタリアの人たちもアンティーク塗装をやります。これまで言っていたことと話が違います。商売人の言うことはその場限りの矛盾だらけです。

そのアンティーク塗装にはおかしい所がたくさんあります。これまでの作り方をベースにしてるので、例えば鮮やかなオレンジ色に真っ黒の汚れや傷がついています。新品のようなピカピカの楽器に真っ黒な傷がついていたりします。普通は何百年もする間に汚れがたまって、傷やスクロールの深いところは掃除しても取れずに残るので黒くなるのです。全体的に200年くらい経っている雰囲気が出てないとおかしいです。とってつけたような汚れではなく自然に古びた感じにするのが難しいのです。木工でも雑な仕事をする人はそのあたりの「不自然さ」が気にならないようでいかにも人為的にやったという感じになります。ニス塗では濃くなりすぎたものは薄くできません。つけた汚れが強すぎると戻せません。一方わざとらしさが出ないように控えめにし過ぎると色のコントラストが弱くなって迫力が出ません。手間暇をかけてイミテーションをほどこした意味がないのです。


お化粧に似ています。わざとらしいとケバケバしく見えます。
女性はみな自分でやらないといけないので大変でしょう。レオナルド・ダ・ビンチやボッティチェリのように繊細なタッチで美人画を描ける人がメイクをすればきれいになるのでしょうが皆が皆そんな才能は無いはずです。

アンティーク塗装の方がより才能が出るというわけです。


それを仕入れてしまうのは売っている人が目で見てわからないのでしょうね。
買う側も見えるかどうかの差が出るのがアンティーク塗装です。目が良い人にしかわからないもので、人気や多数決で決まるものではありません。


いつものことですが、アンティーク塗装が下手でも音が悪いという事ではありません。単に美的な才能が無いというだけです。才能が無くても音が良い楽器は作れます。何を持って名工というのでしょうか?
美的な才能は無くても音が良ければ名工でしょうか?

音が良い楽器はどこの誰が作ったものにあるかわからないです。チェコ出身でミッテンバルトに移住した作者のヴァイオリンにものすごくよく鳴るものがありました、でも全く有名ではなく値段も安いものです。何倍も高い楽器よりも音が良いのです。ちゃんと世界中の作者を調べて音の評価をしている人がいるのでしょうか?

それに対して営業マンは安くて音が良い楽器を「鳴れば良いというものではない」と否定します。鳴らなくても良い、美しくなくても良いなら他の安い楽器でももっとたくさんあります。

ヴァイオリンは才能がある人が作ったものである必要はありません。
しかし才能がある職人が作ったものが欲しいならアンティーク塗装には才能が現れると知っておいていいでしょう。


私個人としてはアンティーク塗装は大嫌いです。
わざとらしてくウソっぽいからです。そのような違いに誰よりも気付くからです。その結果完成度が高くなります。

「フルバーニッシュが正しい」と頭では考えています。
しかしフルバーニッシュで完璧に仕上げると出来上がった瞬間にがっかりします。オールド楽器との差があまりにも大きいからです。
色彩が単純すぎるということも目にとって面白みがないでしょう。エッジだけを明るくすることはよくあります。それでも2色の効果で雰囲気が良く見えますが、それもアンティーク塗装の軽い手法です。エッジは擦れてニスが剥げるのでその様子を取り入れたものです。
指板やペグも全部同じ色ならプラスチックのおもちゃみたいです。


量産品に比べれば高級感のあるのが天然ニスのフルバーニッシュです。
しかし目が肥えるとフルバーニッシュの新品では満足できなくなってしまうのです。それが200年以上経ったものが最高だというのが究極の答えでしょう。そりゃお値段もしますよ。