PCやスマホでクラシック音楽鑑賞?② 〈実践編〉 | ヴァイオリン技術者の弦楽器研究ノート

ヴァイオリン技術者の弦楽器研究ノート

クラシックの本場ヨーロッパで職人として働いている技術者の視点で弦楽器をこっそり解明していきます。

(2021年現在の記事です)


こんにちはガリッポです。

音楽の聴き方が多様化している中、ネットを調べてもクラシック音楽ファンには見当はずれの記事ばかりなのでまとめてみましょう。新しい時代のツールが流行しても世間はクラシックファンのことなんて考えていませんから。

どんどん音楽を聴く選択肢が多くなっていくのに、過去の方法も無くなったわけではありません。私も調べていたらこのことだけで頭がいっぱいになり楽器のことも考える余裕もありません。

音楽鑑賞自体が楽しみでもありますし、音楽を勉強する人にとっては資料的な目的もあります。現在ではたくさんの音源が聞けるようになっていることに時流には疎い私も驚きました。


YouTube Musicについて

現在では音楽の入手法の一番ポピュラーなものがYouTubeだそうです。広告収入でやっているサービスなのでちょうど昔のラジオやテレビの代わりでしょう。知らない曲があったときとりあえず調べてみると参考になります。

YouTubeには姉妹サイト(?)に「YouTube Music」というのがあります。
YouTubeのページの右上に並んだアイコンのうち「YouTubeアプリ」という9つの点のマークの所から進めます。検索しても良いでしょう。
https://music.youtube.com/

これはYouTubeのうち音楽を専門に扱うもので余計なものが表示されず音楽に集中できます。著作権が公認されたジャケットが表示されて曲を選んで聞くことができます。クラシックの場合にはアルバムだけを検索すれば良いでしょう。
かつて発売された大半のCDが出ていると思います。クラシックはとても充実しています。逆に多すぎて検索結果が際限なく出てしまい困るほどです。たとえばMozartでは検索結果が多すぎるので曲名や演奏者名なども入れて検索しないといけません。聞ききれないほどの音源がありクラシックファンなら物足りないことはないでしょう。

選んだものをライブラリに記憶させることができます。またGoogleアカウントを持っていると「チャンネル」を作ることができるので、チャンネルごとにジャンルや作曲家を分けてライブラリを作ることもできます。最大で100チャンネル作れるそうなのでモーツァルトやハイドンなど作曲家ごとにチャンネルに分けてアルバムを集めることもできます。

同じアカウントを使えば画面の大きなパソコンで曲を探したりライブラリを編集したりできます。インターネットに接続するとスマホやタブレットでも反映されています。

YouTubeは基本無料ですが、広告が入ります。特にひどいのは楽章の間にCMが入ってしまうことです。CMを入れない方法はいくつかあります。パソコンやスマホで違うので調べてみてください。

ともかく普通のYouTubeにも音楽はアップロードされていますが、はるかに充実しているのがYouTube Musicです。

ハイレゾについて

「ハイレゾ」という言葉も耳にするかもしれません。これは簡単に言うのが難しいですが、CDが16ビット、サンプリング周波数が44.1kHz なのに対してそれ以上の24ビット192kHzなどそれより高精細なデジタル音声のことです。

よけいわかりにくいですが、テレビがハイビジョンになったり、ゲームがファミコンから進化したときに粗いガクガクした画素が細かくなって高画質になったように音質でもきめ細かい空気振動の波形になるということです。
よく言われるのは人間の可聴範囲よりも高い音が出るということですが、聞こえないのなら意味が無いと思うかもしれません。デジタル音声は波長の短く波が細かい高音ほど荒くなってしまうので、聞こえる範囲よりもはるかに高い音が出せるということは聞こえる範囲の音は自然の音に限りなく近くなるということでしょう。CDができてから何十年もするわけですから音質も向上すべきだと思います。

SACDという音楽ディスクがあります。SACDプレイヤーで再生するとハイレゾの音声を再生できます。SACDはCDと互換性があるのでCDプレイヤーで再生するとCDの音になります。クラシックファンならコレクションの中にSACDもあるかもしれません。

ネットの音楽ストリーミング配信でも「ハイレゾ」対応のものがあります。スマートフォンでもハイレゾに対応した機種があります。


音楽ファンならぜひハイレゾといいたいところですが、自分が聞きたい曲がハイレゾに対応しているか調べてみる必要があります。私の場合バロックの作曲家二コラ・ポルポラについてporpraで検索してみます。YouTube Musicではいくつも聞きたいCDアルバムが出てきましたが、ハイレゾ配信サービスでは一つのSACDから一曲ごとバラバラにして出ているだけです。私がよく聞くようなレコード会社はほとんど対応していません。
ハイレゾに対応していない音源が圧倒的に多いので音楽ファンなら忘れた方が良いと思います。YouTubeの音を聞くくらいなら対応する機器をそろえる必要はありません。

タブレットをBluetoothでオーディオに接続



パイオニア製の2012年に発売されたシステムオーディオ(ミニコンポ)で使用するためにタブレットを購入しました。SamsungのGlaxy A7 Liteという8インチのもので99ユーロになっていました。日本円にすれば1万2千円台です。驚くほど安いです。OSはAndorid11を搭載したものです。ちなみに日本では売っていません。
このタブレットはインターネットとの接続はWiFi(ワイヤレスLAN)専用です。SIMカードを入れて使えるバージョンもあります。

YouTube MusicではこのようにCDのジャケットと曲のリスト、現在再生中の曲名が表示されています。これはアレサンドロ・ロッラのヴァイオリン協奏曲が3曲入ったものです。ロッラなんてとても珍しい作曲家でパガニーニの師匠としても知られています。若いパガニーニに「教えることは何もない」と言ったエピソードが有名です。まあそれはヴァイオリン演奏に関してで作曲についてはもちろん教えるべきことがあったはずです。こんな珍しいCDが聞けるのですから驚きです。曲自体は古典派でモーツァルトみたいな感じです。珍しいビオラ協奏曲も何曲かあります。
スタンドは自作です。

タブレットのヘッドフォン端子からオーディオに接続するのもやってみましたが、あまりにも音が悪く音量も足りませんでしたので、他の方法が必要でした。

パイオニアのX-HM81は4万円台くらいのものでスピーカーもセットのものでした。インターネットに接続して使えるもので2012年に発売になったそんなに古いものではありませんが、もはや時代にはついて行けません。iPodをドッキングさせる端子が上部についているのも時代を感じます。Bluetoothはオプションでしか対応していません。後付けのBluetooth受信機は製造終了し入手は困難です。

しかし新しいものに買い替えるのはあまりにももったいないです。

そこで別のメーカーのBluetoothの受信機を買い足すことにしました。上に乗っているのがそれです。

Pro-Jectというオーストリアのオーディオメーカーの製品でアナログレコードプレーヤーで有名なメーカーのもので値段は1万円程度です。私は8000円程度で買いました。

背面にはRCAのライン出力がありBluetoothで受信したデジタル音声をアナログに変換してから出力されます。光デジタル出力もあります。

筐体のカバーはプラスチックですが底と後ろの面は金属でできていてしっかり感があります。

タブレットの方で機器が検出されるのでONにするだけで接続ができます。

アナログレコードプレーヤーのメーカーなのでデジタル音声でもアナログのような音になるように作っているのではないかと期待して購入しました。結果的には予想以上でした。パソコンからUSBで有線接続したDAコンバーターと比べても音質の差はほとんどありません。またX-HM81でCDを再生したときも音の差はわずかでした。CDとほぼ遜色がありません。

それよりも録音時の音の違いの方が大きく、YouTubeが音源だということを考えるとこのBluetooth受信機では無線による音質の劣化は無視できるレベルだと思います。

むしろ内蔵されているDAコンバーターはパイオニアのものよりも良いのかもしれません。


このような音響機器には大きく分けると3つあります。

①パソコン・スマホ周辺機器
②オーディオ製品
➂楽器用品

一般的に売られているのは①のパソコンやスマホの周辺機器として売られているもので値段は中国メーカーのもので3000円位です。先進国の企業名が付くと倍になります。それでも中身は中国メーカーのものと変わらないのではと疑念があります。

このPro-Jectのものはオーディオ製品です。見分け方は端子を見たときにパソコン周辺機器として作られているものは3.5mmジャックというヘッドフォン用のミニプラグが使えるようになっています。オーディオ機器に出力するのはRCAが正式なものです。オーディオメーカーならそれが常識です。1万円くらい出さないとはっきり違いが無いというわけです。一番安いモデルなので生産国はチェコ共和国です。ドイツ製品でも端子などが中国製品と同じなら中身は中国製かもしれません。

このPro-JectのBluetooth Box Eはハイレゾに対応しておらずCDとおなじ16ビット44.1kHzのフォーマットになっています。これで今回の使用では十分な音質が得られました。予想以上で驚きました。

この製品ではBluetoothのバージョンが2.1とカタログには書いてあります。最新のバージョンは5.0でタブレットもバージョン5.0です。Bluetoothのバージョンについて検索してみると何かをコピーしただけのようなブログがたくさんヒットしてどれにも3.0以前と4.0以降には互換性が無いと書かれています。
実際に2.1のこの製品が5.0のタブレットで使用可能でした。どこの世界でも同じですね。

本当に詳しいプロの人の情報が一軒だけあってそこにはちゃんと書かれています。CD並の音声出力の規格は2.0と最新のものでは変わっていません。2.1ではパスワードが不要になり接続が簡単になりました。

Bluetooth受信機でバージョン5.0でハイレゾ対応などとなると中国メーカー以外では2万円以上します。Peo-Jectでもハイレゾ対応の上級機種はそれくらいします。

しかしCD並のフォーマットで十分に満足のいく音が得られました。これはなぜかと言うとオーディオ製品は規格だけで音が決まるのではなくて、他にいろいろ音に影響する要素があるのです。当然デジタル音源をアナログに変換して出力するわけなのでその回路も重要です。オーディオメーカーは試作品を作っては音を測定器や担当者の耳で聞いて、設計を変更したりして音を作っていきます。この作業が音の違いを生むのです。

最新の中国製品ならバージョン5.0、24ビット192kHzと書かれています。でもだから音が良いとは限りません。普通はそれくらいの規格を採用するなら他の部分でも音が良くなるように練って設計されているはずです。しかし「24ビット192kHZ」と書くだけで音が良いと考えて売れるでしょう。商売に徹するなら試聴を繰り返して製品を作り上げていく必要がありません。これがオーディオ機器とパソコン・スマホ周辺機器の違いです。

よくできた製品というのは派手なスペックを誇るとは限らないのです。今回の目的ではベストな選択だったと思います。同じCDプレーヤーでも音を良くするために努力されてきました。フォーマットのスペックで音が決まるわけではありません。

日本で買えるものは?


残念ながら日本ではこの製品は売っていません。
日本でもスマホやパソコンと接続できるBluetooth受信機は中国メーカーの安いものばかりです。日本の大手メーカーで作っているところはないようです。これだけスマホやパソコンを持っている人がいるのに作っていないのは不思議です。どの有名メーカーも作っていて選び放題だと思っていました。

手持ちのステレオで音楽が聴けるチャンスを逃しています。

調べてみると日本メーカーのフォステクスにPC1-BTというものがあります。
https://www.fostex.jp/products/pc1bt/
実売価格は8000円位でCD並の16ビット44.1kHz対応です。
フォステクスは海外では業務用のオーディオ機器、つまり楽器店で販売する楽器用品として売られています。さっきの分類では➂の楽器用品です。日本ではスピーカーのパーツが有名でマニア向きのメーカーです。

この製品はボリュームがついています、Pro-Jectの方は余計なものは一切ついていません。音が出るだけです。コンピュータや家電製品では機能が多くついているほど上級機種だと考えられますが、オーディオ製品では機能が少ないほど贅沢になります。ヴァイオリンも楽器の演奏以外の機能はありません。メトロノームなどを内蔵させることもできるでしょうがその方が安物に思えます。

高級品というのは用途がそれしかないほど贅沢品なのです。

使ったことはありませんが、おそらくこのPC1-BTで私と同様のことができると思います。スマホにもWindowsにも対応しています。ロースペックでも音が良いと評判です。


パソコンから有線でUSB接続がしたい場合には別の製品があります。
https://www.fostex.jp/products/pc100usb-hr2/
これはハイレゾ対応のもので、ハイレゾ非対応の旧機種は廃盤になったようです。在庫はどこかにあるかもしれません。

ボリュームのほかにヘッドフォンの出力もあります。値段はハイレゾの分お高く12000円ほどでしょうか。


これらの製品はボリュームを利用して他の使い方もできます。

アクティブスピーカー

古いオーディオ機器を持っている人にはこの方法でスマホ・タブレット、パソコンから音声を出力することができます。この使用法なら有線でUSB接続しなくてもBluetoothで全く問題が無いと思います。
私が買ったようなものなら数十万円のオーディオセットでも使えるでしょう。スペックに溺れてもっと高いものを買う必要はないと思います。
それならSACDプレーヤーを買った方が良いと思います。


アンプやスピーカーなどを持っていないか古すぎてどうしようもないなら新しいものを買う必要があります。

この時コストパフォーマンスが良いのが「アクティブスピーカー」です。

スピーカーにはパッシブとアクティブの2種類があります。スピーカーは電磁石に電流を流すとそばにある永久磁石と引き寄せあったり反発しあったりすることで振動を生み出し音に変えます。スピーカーに電力を送るのが「アンプ」です。アンプがスピーカーの動力源とイメージしてください。

パッシブスピーカーはアンプとスピーカーを接続することで機能するものですが、アクティブスピーカーはスピーカーの箱にアンプが内蔵されていて別にアンプがいりません。

よく業務用と言われますが、楽器店で売っている音楽家が使うための「モニタースピーカー」ではアクティブ型が主流になっています。スピーカーの特性に合わせてアンプを設計することができるので小型でも低音が強力でビックリするものです。

これがコストパフォーマンスがとても良いようです。
ペアで2~3万円でも家電店で売っているようなBluetoothポータブルスピーカーとは次元が違うでしょう。
Bluetoothスピーカーは電池が内蔵されたり他の機能があり1万円以下くらいですからたかが知れています。特にポップミュージックにあわせて音が作ってありズンズンと高めの周波数の低音が強調されています。ドラムの低音とシンバルが強調されて俗に「ドンシャリ」と言われ「素人好みの音」の典型です。世界で若者に人気のディスコ音楽には良いでしょう。持ち運べるのでラジオ体操にも良いでしょう。

それに対してモニタースピーカーはできるだけ録音内容を正確に再現することが求められます。


そのモニタースピーカーはボリューム調整が裏面にあったり左右別々だったりして使いにくいものです。それで先ほどのフォステクスの製品を使えば接続してボリュームが使えるわけです。合計3~5万円くらいで買えるものでは音質のコストパフォーマンスが最も良いものでしょう。
https://clevergizmos.com/pages/connect-speakers-to-laptop-for-studio/
英語ですがノートパソコンに有線タイプの旧製品とモニタースピーカーを付けた例です。

モニタースピーカーは電気店やオーディオ店ではなく、楽器店で販売されているものです。楽器を演奏している皆さんにはむしろなじみがあるのではないでしょうか?

例えばヤマハのHS5なら二つで3万円くらいでしょうか?楽器をやっている人が自宅に持っているとプロっぽいですね。ヤマハの音は無味無臭で主張がありません。音楽に徹するには最適です。
https://jp.yamaha.com/products/proaudio/speakers/hs_series/index.html

個人的にお薦めなのはタンノイというメーカーです。イギリスの老舗中の老舗メーカーで特にクラシック音楽の分野では定評があります。オーディオ用の現代のシリーズではオーディオっぽい音ではなくコンサートホールの音を見事に表現し、音楽のニュアンスも感じやすいです。モニターはもっと純粋な音でしょうがReveal 402なら日本でもペアで2万円台で買えるのではないでしょうか?
日本では品薄のような感じもしますがヨーロッパでは今でも売っています。


このような楽器用品として売られているモニタースピーカーは使い勝手が家庭用とは違います。普通はオーディオインターフェイスというもので接続しますが余計な機能が付いていないフォステクスの上記の製品で使えると思います。ケーブルなどはスピーカーによって違い電気屋では売っておらず楽器店で売っているものが必要になるかもしれません。

電源のスイッチもスピーカーの背面にあったり使いにく所もあるので工夫が必要です。スイッチ付きのコンセントやワイヤレスのコンセントなど工夫ができます。

私が使っているわけではないので動作は保証できません。ヒントにしてください。

音楽の洪水


使うようになって驚くのは音楽への好奇心がどんどんわいてくることです。CDを買うのが理想ですが、買う時はリスクがあります。作曲家、曲、演奏家の3拍子が揃ったなじみのものだけを買うことになってしまいますが、このようなものでは今まで知らなかった音楽に興味がわいてきます。
聞けるアルバムは渋谷タワーレコードの在庫よりも多いでしょう。聞き尽くすということは無いと思います。

それでも世間はクラシックは念頭に置いていません。YouTube Musicの画面でも曲名が長すぎてクラシックの場合には全部表示しきれません。

肝心の最後が切れていると何楽章なのかわからなかったりします。Androidタブレットの場合には開発者向けオプションで画面の領域を調整して表示文字数を増やせます。


タブレットではYouTube Musicのアプリではなく、Braveというブラウザ(インターネット閲覧アプリ)を使っています。広告ブロック機能があり、実際一度もCMが流れたことはありません。パソコンではブラウザの拡張機能でできるのでもっと確実です。

YouTube無料版では長時間何も操作をしないと30分ほどで勝手に停止して「続きを視聴しますか?」と確認が出ます。途切れるのが気になるようなら月額料金を払って会員になっても良いでしょう。1180円ですからCDを買うよりもずっと安いです。

スマホ・タブレットやパソコンなどは新たに買う必要はありませんが、タブレットを合わせても2万円ほどの出費で聞ききれないほどの音楽が聴けるようになりました。他にもインターネットラジオなども使えます。
古いスマホなどを音楽再生専用機にするのも良いでしょう。

時代の変化が信じられません。

パソコンでもYouTube Musicなど同じように使えます。しかし移動がしにくく別のステレオにはもう一台パソコンが必要になるので、タブレットならもっと安いということで導入しました。




いずれにしても音源のほうがどんどん変化していきます。それに対してスピーカーやアンプのような基本的なものは変化のスピードがゆっくりです。あまり安いものを買うと入力端子もなく丸ごと買い替えるためにゴミになります。音楽体験もひどいものです。

私は弦楽器職人ですから、10年前の製品なんて新品と同じような感覚で、100年前のものでも新しい20世紀のヴァイオリンと考えます。オールド(古い)というのは200年は経ってるものですから。

アンプやスピーカーで良いものを買っておけば20~30年は使えます。デジタル部分だけを交換すれば良いのです。


またパソコン周辺機器とオーディオ製品では違いがあります。パソコン周辺機器では機能が動けば良いと考え理論で設計すれば終わりでしょう。メーカーは出来上がった基盤を買ってきて外側を作ってブランドのロゴを付ければ製品の完成です。中国の業者にロゴマークの印刷まで丸投げしているのかもしれません。

それに対して試聴や測定を繰り返してパーツを変更したり構造を変えたりしながら音を練り上げていくのがオーディオ製品です。オーディオ製品というのはメーカーが良いものを作ろうと最善を尽くしそれを分かるマニアだけが買うという珍しい業界です。値段も常識を超えますが耐久性がありすぎて何十年も使えてしまいます。さらに部品交換などの修理を受け付けていたりします。その結果衰退産業になっています。

楽器用品として作られているものはさらに耐久性も考慮されているはずです。家庭よりも過酷な使用環境に耐えるためです。想定される音量や専門的すぎる用途、使い方の不親切さなど家庭用のものとは違います。スピーカー1本の値段が1~2万円と考えると多くは期待できませんが、音を出すという機能だけにコストがかけられています。もう1サイズ大きなものでもそれほど高くはありません、コントラバスの音を出すなら少しでも大きい方が有利なのは確かです。



ヴァイオリン製作がどちらかと言うと、偉い師匠やヴァイオリン製作学校で教わった理論に従って作って終わりですからパソコン周辺機器と同じです。オーディオから学ばないと思いつかない発想があります。オーディオ製品のカタログを見るといろいろと説明やスペックが書かれています。しかし音を実際に聞いてみないと好みのものかはわかりません。

同様に私が「ヴァイオリンは弾いてみないとわからない」と言うのは弦楽器業界では画期的な考え方だと思いますが確実に事実です。専門家として楽器商や職人たちは作者が有名だとか加工が正確だとかそんな話ばかりしてきたのです。