ギター用ケーブルとヴァイオリン業界の古い体質 | ヴァイオリン技術者の弦楽器研究ノート

ヴァイオリン技術者の弦楽器研究ノート

クラシックの本場ヨーロッパで職人として働いている技術者の視点で弦楽器をこっそり解明していきます。

こんにちはガリッポです。

ヨーロッパはイースターの休暇です。
クリスマスと並ぶ重要な祝日ですが日本ではなじみがありません。

コロナで復活した趣味が音楽鑑賞です。それでオーディオを何とかしようとしてクリスマスの時期にもやっていましたが、続いています。
https://ameblo.jp/idealtone/entry-12650883401.html

オーディオの話は弦楽器とは関係が無いので避けるべきだと考えていましたが、音響工学的なことを面白いと思う人もいるようです。
趣味としてのオーディオはともかく、原理としての音の仕組みは面白いでしょう。

年末年始は音が細かくミニチュアのオーケストラを聞いているような音で、何とかスケールの大きな音にしたいと取り組んだのでした。
そうしているうちに音の鋭さ、硬い耳障りな金属的な音が気になるようになりました。何とかならないかというのが課題です。

インシュレーター

オーディオではインシュレーターというものがあります。オーディオの世界の不思議の一つは機器が接している物体の特性が音に現れるというものです。
スピーカーやオーディオ機器を設置するとき、棚などに直接置くのではなく何か間に物を挟むのです。それがインシュレーターというものでヨーロッパでは金属の先のとがったものを逆さにすることが多いです。これはチェロのエンドピンとも似ていて、受け皿の方もあります。商品の開発もそっくりです。スパイクと呼ばれるもので金属でできていることが多いです。また別の考えではゴムもあります。スピーカーの場合、ゴムは振動を床に伝えないことでアパートなどの騒音対策になるばかりでなく、音を変える効果もあるはずです。

この分野は世界的に有名なメーカーは無く、それぞれの国でローカルな企業の製品が出回っています。このため日本で有名なものをこちらでは入手できません。

この時昔から言われてきたのは「振動対策」というものです。振動が音に悪影響を与えるため振動を抑えることが必要だというのです。アナログレコードの時代なら針がレコードの溝のわずかな凹凸を読み取って音にするので振動が悪影響を及ぼすと考えられたのでしょう。しかしこれがデジタルになっても同じというのが理由が分かりません。
私は単に素材の物理的な音響特性がなぜかわからないけども音になって現れると考えています。
ゴムならゴムっぽい音になり、金属なら金属的な音になるというわけです。
どちらに変化させたいかによって選べばよいはずです。また複合素材も考えられます。金属とゴムを重ねたものもあります。

私が昔から好きなものは木材で作ったものです。
木材のような音になれば弦楽器などのアコースティックの楽器はそれらしく聞こえるからです。

以前、黒檀、メイプル、スプルースの素材でスピーカーのインシュレーター作って試したことがあります。一番柔らかい音だったのがスプルースです。この三つの素材はヴァイオリンに使われるもので身近にいくらでもあるのでタダで実験できたのです。
今回は音が鋭いことが問題なので一番柔らかい音のスプルースを使います。以前試した職場のシステムでは柔らかすぎて眠くなるような音だったので採用しませんでした。今は部屋の響きが多すぎるのでゴムを使って響きを抑えています。

はじめにCDプレーヤーで試してみました。レコードプレーヤーならわかりますがCDプレーヤーでもちゃんと違いが出るのが不思議です。スプルースで作ればスプルースっぽい音になります。ヴァイオリンの表板やピアノの響板に使われる素材ですからそれらの楽器がそれっぽく聞こえるようになります。

最初にやった実験は厚みを変えた事です。ヴァイオリン職人でなければ思いつかない発想でしょう。5mmと2.5mmで試すと5mmのほうが明るい響きが多くなり、2.5mmのほうが明るい響きが抑えられ澄んだ音がします。これは予想通りで5mmではインシュレーターの効果が強すぎるので薄い方が良いです。このようなものは振動説では説明ができません。板の厚みによって物理的な特性が変化することは弦楽器で知っています。


さらに、問題になるのが4点で支えるとどうしてもぐらつきが起きてしまう事です。スピーカーやオーディオ機器の足の下に4点で挟むとどうしても対角線でぐらつきが出てしまうのです。

そこではじめ少し厚めにしておいてカンナで削って高い方の対角線の二つを薄くしていきぐらつきが無くなるようにしました。この効果はインシュレーターの素材自体よりも大きいのかもしれません。音が安定しました。オーディオではわずかな環境の変化で音がすべて変わります。ぐらつきを無くすと音の変化が少なくなりました。

これは弦楽器の魂柱でも似ています。魂柱をちょっと動かすだけで目まぐるしく音が変わる場合は魂柱が不安定になっています。音が変わったことに一喜一憂するのではなく魂柱を交換したほうが良いでしょう。表板と裏板の面に魂柱の面が合っていません。

オーディオマニアがちょっとしたことが音が変わると言うのなら何か不安定な要素があるのかもしません。

次に試したのは目止めです。ヴァイオリンの製造では色のついたニスが木の中に染み込んで染みを作らないようにするために何かを木に塗りこみます。これは無色のアルコールニスです。これを染み込ませてみます。両面に施し、固まるとアルコールを付けた布でふき取って表面についている分はすべて取り除きます。

目止めを施すと、フワッとした明るい響きが抑えられ楽器の音がむき出しになるようです。音はクリアーになる反面鋭さも露呈します。
とはいえ、CDプレーヤー、アンプ、DAコンバーター、スピーカーとスタンドの間、スタンドと床の間のすべての個所にスプルースのインシュレーターを入れると効果が強すぎるので、すべてに目止めを施すことにしました。

これによってやや音は柔らかくなり、ヴァイオリンの音はヴァイオリンらしくなりました。しかしまだ鋭いのです。

パンドラの箱

オーディオの世界が理解しがたいのは電源です。
電源ケーブルやノイズフィルターなどよくわからないグッズが発売されていて最低何万円もするものがゴロゴロあります。オーディオの世界の異常さを揶揄するときにやり玉にあげられるものです。

私はひとまず別の壁のコンセントからオーディオのためだけに電源を取ることにしました。これはとても大きな変化がありました。これまで音を柔らかくするのにしてきた苦労がバカバカしくなるくらい大きな変化でした。一気に進みました。

電源が音に変化があることは分かりました。問題はどのグッズを買ったらいいのかわからないことです。電源関係のパーツはとても高価なのですが、どのメーカーのものを買ったら音が柔らかくなるのかわかりません。もしかしたら鋭くなるかもしれません。
まずアンプの着脱可能な電源ケーブルを変えてみました。定価が2000円位のものが1000円ほどで売っていたので変えてみました。これは音は変わったけども柔らかくはなりませんでした。低音がはっきりして、空間の音の広がりも増えてクリアーになりました。ただし、音を柔らかくする効果は無くそのまま音が良くなっただけです。

テーブルタップ(延長コード)を変えてみることにしました。電源にお金をかけるのはハイエンドのマニアなので何万円もするのが当たり前です。
この分野も世界的に有名な大手メーカーはあまりなく、安い価格のものはありません。

ローカルでは初心者が最初に買うべきという定番のものがあります。

見た目は普通の「ホームセンターで売っているような」ものですが、中身が違うようです。外から見ても違いは分かりません。値段は6000円くらいで、ホームセンターのものは1000円くらいですからとても高いです。しかしハイエンド用のものは1万円以下では無いのでそれに比べたら安いものです。

これを実際に試してみると高音は柔らかくなり思った通りの効果がありました。低音も音域が広がり空間もリアルになりました。もしかしたら製造コストは1000円のものと変わらないのかもしれませんが実際に望んだとおりの音に変わったのでその価値があります。もし何万円もするもので「音が良くなった」としても自分の望む音にならなければそれは失敗です。それが事前にわからないのがオーディオアクセサリーの難しい所です。

電源関係について言えば音が変わるのは間違いありません。しかし自宅のコンセントがどうで、事前にはグッズによってどう変化するかが分からないので何を買っていいのかわからないというのが問題です。
定番の安価なもので良い結果が得られました。これ以上を求めると泥沼にはまるでしょう。開けてはいけないパンドラの箱です。

ギターケーブルで作られたRCAケーブル

これらのことで一番最初に比べれば劇的に音が柔らかくなっています。年末年始の休暇のあとで職場のステレオと聞き比べたらまだまだ硬い音だったのが、今ではほとんど変わらないくらいになっています。
音の鋭さに対して敏感になりすぎているのかもしれませんが、それでもまだ鋭さを感じます。

そこで購入したのがこれ

これはゾマーケーブルというドイツの業務用・楽器用ケーブルメーカーの作っているギター用のケーブルを使って作られたRCAケーブルです。
ギターケーブルはギターシールドとも言うようですが、エレキギターとアンプをつなぐものです。
ゾマーケーブルには様々な音色の製品があり、中に「Classique」という電線があります。プラグを両端に取り付けるとケーブルが完成するわけです。自分で作ろうかと考えましたが、はんだ付けの経験もそんなにないのでどこかの業者が完成させたものを買うことにしました。この辺は前回の話と同じで、はんだ付けくらいできるだろうと思いますが、回数を重ねていくほどに上達するのは間違いありませんし、プロが使うような道具や材料を揃えたら完成品を買った方が安いです。ケーブルを何十本も作るならやるべきでしょうがそんな気はありません。

はんだ付けは電気製品の工場でもパートタイムの主婦が担当していたりします。すごい回数をこなしているので、正社員のエンジニアよりもうまかったりします。回路の設計などは全くできなくてもはんだ付けだけはたくさんこなしているほうが上手いのです。これが職人の世界では当たり前です。

値段は材料だけを買えば2000円位で完成品はその倍くらいです。電線自体は安いものでコネクタープラグが高いのです。これはノイトリックというメーカーのものでひとつ350円位のものですから4つで1400円になります。この世界では安いものですが常識からするとかなり高いです。オーディオマニア用にはチープですが業務用として信頼のあるものです。

このケーブルが面白いのは「60年代のギターの音がする」という製品です。普通オーディオ用のケーブルは信号をできるだけそのまま伝えることが求められます。音声信号に欠損が無く余計なものを足したりしないのがケーブルでは理想です。そのための技術を謳って何万円や何十万円もするオーディオケーブルがあります。

それに対して楽器用のケーブルは音を変えてしまって良いのです。ベース用のケーブルなら低音だけが出れば良いとも言えます。オーディオケーブルはギターだけでなくあらゆる音声信号を忠実に伝えなくてはいけません。

このためオーディオ用のケーブルには限界があると思います。現実に音響機器や部屋の音響条件に問題があったとき音を変える必要があります。例えばグラフィックイコライザーという機械があり周波数ごとに音量を変えられるのです。このようなものの弱点は余計な回路を通すことで音質が劣化するということです。私の場合にはおおむね音は気に入っているのですが、ちょっとの鋭さをどうにかしたいのです。

高音質が売りの高級オーディオケーブルではこのようなことができません。建前上、コストのかかる技術的な方法で伝送ロスを減らし、電磁波や振動などの影響を受けないというのが高級ケーブルの値段の高さの理由だからです。つまり、安いケーブルでは信号が正しく伝わらないといういわば「脅し」です。このため音を意図的に作るということは悪いことだと考えられます。誰にとっても音が良くなるという建前で売っています。

これだと、高級ケーブルを買っても私が望んだ音に変わるのかわかりません。音の調整用としては使えないのです。それに対してこのギターケーブルははっきりと「60年代の音」と明示しています。ギターアンプもオーディオ機器も基本的には似たような技術で作られていて60年代の音といえばイメージできるものがあります。音域は狭く低い音と高い音が出にくいのです。それを暖かみのあるノスタルジックな音とすれば無限の高音質地獄から逃れてくつろいで音楽が聴けるでしょう。
本格的にやりたいならアナログレコードや真空管アンプ、実際に古いオーディオ機器を使うのも手です。それはお金はかかるし、音質も進歩しているので、音質が悪いと感じるのも事実でしょう。ケーブルくらいなら雰囲気だけですから。

ゾマーケーブル「Classique」の音

DAコンバーターとプリメインアンプにつないで使用すると、ずっと響きが豊かになり空気感が暖かくなりました。低音と高音が弱くなり。中音中低音域が充実します。一方本当の古いオーディオ機器のような音質の劣化はありません。古いラジオの音を再現するようなエフェクターもありますがそのようなものではありません。
音は高音質なままで、低音と高音が弱くなる感じです。高音が弱くなれば音の鋭さも軽減します。中音の響きも豊かで鋭い音が埋もれます。空気全体がのんびりとしたものです。日ごろの疲れもあって眠くなってしまいました。冷たい張り詰めた空気がリラックスしたものに変わりました。
ただし、録音条件によってフォルテシモの時には鋭さが出ます。弱くはなっているけども鋭さは健在です。これ以上はケーブルでは無理でしょう。

普通のミニコンポやワイヤレススピーカーなどでポップミュージックを聞く場合はむしろ低音と高音を増強してズンズンシャカシャカやるわけですが、全く逆の特性です。相当なレベルのオーディオ機器でないと必要な人はいないでしょう。

ただ寝ボケたような音になっただけではありません。そこは楽器用ケーブルです。アタックとレスポンスは手ごたえがあるように作ってあるようです。音楽的な躍動感は十分にあります。むしろ以前より指揮者の動きが伝わって来るようです。ソロヴァイオリンのニュアンスも表現が豊かになったようです。

ギター用ということでオーディオ用には合わないかもしれないと思いましたが、ケーブルによる音の変化は限られているのでこれくらいの「演出」はやっても良いでしょう。HiFiという宗教では禁止されていることですが現実には音を変える必要性があります。ギターケーブルの分野はこんなにユニークな製品があって、それを作れる技術があるのが面白いです。

エレキギター用がクラシック音楽に合っているのも面白いです。
もちろんジャズなんてそれ以上です。

しばらくこれで様子を見ようと思いますが、それでも音が鋭いならウォルナットのインシュレーターを作ろうと思います。スプルースは弦楽器の木材なのでヒステリックな耳障りな音を持っています。これがウォルナットなら高音が弱くなり暖かみのある音になるはずです。材料はすでに注文してあります。

このように素材を変えて音の違いを作るのはギターやドラムなどの楽器では常識です。ヴァイオリン族の弦楽器では材料が決まっていて安価なものにする以外で他のもので作られることはありません。ヴァイオリン族の楽器は考え方が古いのだと思います。

ロートのヴァイオリン

ヴァイオリンの世界は上流階級の文化を良しとする戦前の西洋の考え方でできていると思います。ヨーロッパでクラシックのコンサートに行くなら、男性はスーツにネクタイくらいしていくのは普通です。最近はもう少し砕けてノーネクタイもあるかもしれませんが、ロックのコンサートとは違う格好で行くでしょう。
上流階級の文化では「上等なもの」というのが決まっていてみな同じものを良いと考えなくてはいけません。

これに対して戦後のポップカルチャーでは様々なこだわりを持ったクリエーターたちが文化を作ってきました。楽器も新しい電子楽器が作られたり、音にこだわりを持った製品も作られてきました。メーカーが想定したのとは違う使い方で効果を生み出して人気が出た電子楽器もあります。
大きな楽器メーカーが異なる素材や方法で試作品を作って開発すると設計を定めて工場で同じものを大量に作ったのでした。名器と呼ばれるようなギターもあるでしょう。
これに対してヴァイオリンの世界はハンドメイドのものが上等だとされ、工場で大量生産されたものは安物だとみなされてきました。

しかし実際私が経験したのは、ハンドメイドの職人は音をイメージして作り分けているのではなく、ただ伝統にしたがった方法がでヴァイオリンを作っているだけでした。音がどうなるかは全く分からず定められた寸法にミスや傷をつける事なく作ることが求められているのです。

これに対して西ドイツのロートというメーカーのものを最近続けて見ることになりました。
以前紹介したのは1970年製のものでした。
https://ameblo.jp/idealtone/entry-12657883578.html

今回のものは95年製でドイツは統一されているのでGermanyになっています。

基本的なスタイルは以前のものと同じです。より機械化が進んだと思われます。

縦の木目の年輪の断面が強く出ているのは前回は自然の色だと書きましたが、ニスで色を付けているのではないという事でした。木材自体をどうも薬品で反応させて色を付けているようです。表板は場所によって吸い込む量が違うので染料や薬品を染み込ませるとムラになってしまうのです。このため薬品で染めるのはとても難しいです。何かそのような技術があるのでしょう。非常に自然に染まっているので気付かなかったです。
ハンドメイドの職人はそんな技術もないくせに「薬品で染めるのは邪道!」と偉そうにしているだけです。

材料も安価なものでいかにも量産品という感じがします。しかし量産品としては品質の高いものです。

例によってスクロールは機械で作られたものです。

量産品の教科書みたいなものですが音は悪くありません。1970年のものと同じように低音が豊かでよく鳴る感じがします。70年のものに比べるとちょっと鳴り方がおとなしいようです。それでも音の性格はよく似ています。板の厚みを測ると同じようになっています。20万円くらいの値段なら音は良い方だと思いますし、下手なハンドメイドの楽器よりも良いでしょう。

この楽器を見ているとギターのような新しい時代(といっても20世紀後半)の考え方で楽器が作られているように思います。設計を定めて「メーカーの音」というのがはっきりあって同じものを大量に生産しました。上流階級でなくても買えるリーズナブルな値段で作り、お金持ちの習い事というイメージを打ち破ったのです。
このようなメーカーが世界で有名になり一時代を築いたのには理由があります。私も20年やって来てようやくわかってきました。

一方量産品をバカにして来た職人たちは右肩下がりで苦しくなってきています。
日本の楽器店もイタリアの楽器を高く売るためドイツの量産品を否定するためのよくわからない理屈を作り上げてきました。本当に弾き比べてどちらが音が良いか自分で判断する必要があるでしょう。

私は個人的にこのような量産品に硬さを感じますが、新作のハンドメイドの楽器が柔らかいかといえば必ずしもそうでもないです。同じように硬いなら音量があって低音にボリュームのあるドイツの量産品のほうが良いでしょう。

手作りでも本当に音が良くなければ買う価値は無いと思います。

また勘違いすべきでないのはドイツの量産品が皆このようなものではないということです。世界的に有名になったメーカーですが、こちらではこのようなものは少なく、戦前の量産品や最近の旧共産国の量産品が多いです。私がドイツの量産品について持っている音のイメージが日本の業者のものとは違うことをこのような製品で知ることになりました。

それにしても音が良いということで売っていた西ドイツのものをイタリアの楽器を売らなくてはいけなくなるとそれを否定するのだから商業とは変なものです。技術者の私にはわかりません。

ヨーロッパの音?

コロナの影響で自宅で過ごすことも多くなり、音楽鑑賞を充実させようということで悪戦苦闘してきました。デジタル時代に対応するつもりがCDを買うというスタイルに落ち着きそうです。私の世代ではCDの登場は衝撃的だったし何度も何度も聞いていました。
私は小学生のころからパソコンを持っていてプログラミングなどをして遊んでいたものです。高校生くらいになってくるとアナログの魅力にすっかり取りつかれました。その究極がヴァイオリンなのです。

私のステレオが鋭い音がするのは、老朽化のせいなのか初めからそうだったのかもわかりません。この仕事をしていて耳が良くなってそれが分かるようになったのは間違いありません。オーディオマニアが良い音だと考えるのとは違うということでもあります。

ヨーロッパ製のスピーカーなので、以前は「これこそがヨーロッパの音」と思い込んでいたのでしょう。今では現地の同僚や音楽家と弦楽器の音について意見を交換する日々です。そんなヨーロッパへのあこがれは薄っぺらなものだったようです。

音が鋭い問題もこて先のことでは限界があって、本質的には電子回路に改造をするなり機材を入れ替えたりしなくてはどうにもならないでしょう。そうすると今度は別の問題が出てきて永遠に終わらないでしょう。

それにしてもこの電線が私のヴァイオリン製作の哲学と似ているのが面白いです。電線ひとつでそんな世界があるというのが勉強になります。