詰将棋の初形配置において上手い人の特徴はいろいろあるのだけれど、そのひとつが「ブラ駒」の存在だと思っている。
「ブラ駒」とは、私が勝手に命名した名前だが、「玉に隣接していて、ヒモ付きではない攻め方の駒」という意味である。
つまり、放っておくと玉に取られてしまう条件下にある駒、ってわけ。
実戦だとこんな局面はほぼ100%現れない、詰将棋ならではのものだ。
しかし、このブラ駒を平気で配置できる作家を見るたびに、「上手いな~」と思ってしまう。
なぜなら、この「ブラ駒」が、なんともいえない趣深い役回りをすることが多いのだ。
①は、ブラ駒の角が中心になって最終的に玉を仕留める。
取られそうでいて、玉方は最後までこの角を取ることはできない。
これが七手詰とは、ちょっと信じがたい作である。
半期賞受賞作。
①谷本治男(「詰将棋パラダイス」昭和59年2月号)
②は、柏川芸術の代表作のひとつ。
やはり、1四の角がブラ駒だ。
しかしこの角、動かなくても取られることによって十分すぎるほど働く。
この作品、華麗な捨て駒に目が行くが、渋い脇役としていい味を出したのがこの角である。
②柏川悦夫(「近代将棋」平成6年3月号)修正図
自作でブラ駒があるかどうか調べてみた。
あるにはあったが、前の二作が凄いので、比べると遥かにもう、レベルが劣る。
ここに示すのも躊躇われたが、せっかくだからついでに晒しておこう。
今度は「ブラ銀」だが、こいつもなかなか取られることはない。
③山川 悟(「詰将棋パラダイス」平成25年6月号)
ブラ駒は、言い換えると「王手をかけてない玉との隣接駒」。
これが面白い働きをして、作品の深みを生み出すこともある。
<解答>
①69飛、59馬、28銀、48玉、68飛、同馬、49金、
まで7手詰
②24金、同桂、25桂、同馬、33飛、14玉、23銀、13玉、22銀成、同玉、42飛成、
まで11手詰
③13飛、同玉、35角、24桂、同角、12玉、13角成、21玉、23飛、22飛、32銀成、同玉、44桂、41玉、43飛成、同金、23馬、32銀、52金、31玉、32桂成、同飛、22銀、同飛、41金、21玉、13桂、
まで27手詰